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ASJ Works Close-up

家族が心地よくつながる飲食店併設二世帯住宅

埼玉県深谷市

和めし cafe HISAGO

設計 岡村裕次/TKO-M.architects
施工 ASJ熊谷スタジオ[小沢工業株式会社]

おしゃれな店内で和食が楽しめる「和めし cafe HISAGO」は、女性客にも大人気だ。

店内はシンプルながら天井の高さを変えることで、空間に変化を与えている。

 江戸時代から中山道の宿場町として栄えた埼玉県深谷市。その歴史ある街で、Tさんがお父様とともに営んでいるのが「和めし cafe HISAGO」だ。
 「私で三代目になりますが、東京で修行を終えて帰ってきたのを機に、店のリニューアルを兼ねて建て替えたのが、この家です」とTさん。店名も新たに、黒を基調としたスタイリッシュなたたずまいは、まさにカフェのイメージ。古い建物が建ち並ぶ商店街の中でひと際目を引く存在だ。
 「プランづくりでは、店内に生活感を持ち込みたくなかったので、仕事場である店と生活空間がしっかり分離していること。また、両親との同居が前提だったので、二世帯が一緒に過ごせる空間があること。この二つが大きなテーマでした」と振り返るTさん夫妻。これらお二人の要望をもとに、岡村裕次さんが提案したのが、一階の店スペースと上階の居住スペースが外階段でつながった、三階建て飲食店併設二世帯住宅だった。
 「外階段で店と居室をしっかり分けるとともに、二階に二世帯共有スペースとしてのLDKを設けました。ただし、心配だったのは世帯間の距離。一緒に過ごす時間を大切にしたいとはいえ、あまりべったりすぎると窮屈になりかねません。ほどよい距離感が感じられる空間づくりを心がけました」と語る岡村さん。例えば、いつも互いの気配が感じられる寝室。二階北側に設けられた親世帯の寝室と三階子世帯の寝室は、階も位置も距離が離れているにもかかわらず二階バルコニーを挟んで窓でつながっているので、朝や夜も互いの気配を身近に感じることができる。
 二階リビングと親世帯の寝室へとつながる廊下の間に段差や引き戸を設けているのも、空間を分けつつも互いが心地よくつながるための工夫。「離れすぎず近すぎず」をカタチにしている。

木の温もり漂う店内は、食事を楽しみながらゆったりくつろぐことができる。

 「子供たちもまったく段差を気にせず、空間を行き来しています」と笑顔で語る奥様。新しい家に住むようになってから、お母様と一緒にキッチンに立つ機会も増えたという。
 「店づくりでは家具やメニューなど、建築工事以外のことでも岡村さんやASJ熊谷スタジオの岡田さんにいろいろと相談に乗ってもらい、たいへん感謝しています」と語るTさん。老舗の味を受け継いだおいしい料理はもちろん、おしゃれになった店は女性客にも好評だとか。地元の新しい人気グルメスポットになりつつあるようだ。
 いつかまた「和めし cafe HISAGO」を訪れて、ご主人の料理に舌鼓を打ちながら、Tさん一家の成長した姿に触れたいものである。

(取材/石田義孝)

キッチンからリビングで遊ぶ子どもたちの姿を一望することができる。

■和めし cafe HISAGO
埼玉県深谷市本住町6-33
(JR高崎線 深谷駅から徒歩約7分)
電話 048-571-2192
営業時間 11:30~14:00、17:00~23:00
火曜定休
駐車場あり

店内には落ち着いた雰囲気で料理が楽しめる
和室も設けられている。
リニューアルを機にお店のロゴも一新。
スタイリッシュなたたずまいがひと際目を引く。
二階の親世帯寝室からバルコニーを挟んで、
三階の子世帯寝室を望むことができる。
三階の子世帯スペースには、家族が自然に触れ合える
学習カウンターを設けている。
八歳と五歳の娘さんたちは遊び盛り。
夢いっぱいの三階・子世帯用スペース。
室内に心地よい光と風を導くバルコニー。
草花が好きな両親の趣味スペースでもある。
三階の居住スペースへの階段をあえて外に設け、生活と仕事の距離感を作りだしている。

■和めし cafe HISAGO

所在地

埼玉県深谷市本住町6-33

主要用途

飲食店併設二世帯住居

家族構成

夫婦+子供2人+両親

設計

TKO-M.architects 担当 岡村裕次 井上心
構造 長坂設計工舍 担当 長坂健太郎 
設備 TKO-M.architects 担当 岡村裕次
照明 中島龍興照明デザイン研究所 担当 厚東宏枝

施工

ASJ熊谷スタジオ[小沢工業株式会社] 担当 田口邦夫
設備 小林設備工業株式会社
電気 須永電気有限会社

構造・構法・規模

木造在来工法
地上3階 
軒高 8,910mm 最高の高さ9,190mm
敷地面積 195.85m2
建築面積  78.02m2(建蔽率39.84% 許容80%)
延床面積 171.69m2(容積率87.66% 許容400%)
 1階   75.49m2(自動車車庫11.76m2を含む)
 2階   70.25m2
 3階   37.71m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板横葺き シート防水
外壁 ガルバリウム鋼板目地無しスパンドレル
開口部 アルミサッシュ
外構 洗い出し 除草シート敷きの上砕石

主な内部仕上げ

店舗

床 オーク無垢フローリング 自然塗料 t=18.5
壁・天井 AEP塗装

寝室1(親世帯)

床 オーク無垢フローリング 自然塗料 t=15
壁・天井 クロス貼り

リビングダイニング

床 オーク無垢フローリング 自然塗料 t=15
 壁 クロス貼り 一部シナ合板
 天井 クロス貼り

寝室2(子世帯)

床 ボルドーパイン無垢フローリング
壁・天井 クロス貼り

工程

設計期間 2010年 3月~2010年10月
工事期間 2010年11月~2011年 3月

撮影

柴田篤      

断面 縮尺1/200
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3階平面
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2階平面
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配置図 縮尺1/200
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1階平面 縮尺1/200
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岡村裕次

[東京都中野区]

1973年三重県生まれ/1997年横浜国立大学工学部建設学科卒業/1998年TKO.A.Lab共同設立/2000年横浜国立大学大学院工学研究科計画建設学修了後、多摩美術大学造形表現学部デザイン学科副手/2001年多摩美術大学造形表現学部デザイン学科助手(~2004年)/2003年一級建築士事務所TKO-M.architects に改称

和めし cafe HISAGO
 駅から10分程度の所の商店街にあった既存飲食店舗の代替わりと区画整理に伴う、飲食店併用二世帯住宅の建替え計画です。既存飲食店の業態に新しくカフェ機能を加えた店舗を1階に、外階段を使ってアクセスする住宅を2、3階に配置しました。店舗から住宅に行くには外を通らねばならない形式として、生活と仕事の距離感をあえて作りだしています。2階には親世帯・共用で使用する水廻り設備・リビングを、3階には子世帯の個室を配置しています。
 店舗内客席は、ワンルームでありながらソファー席と大テーブル席に緩やかに分ける為、天井の高さを変えています。それが2階の住居部にも影響をし、「親世帯寝室+共用水廻り設備」と「子世帯の利用が多いリビング」に段差を生じさせています。こうする事で、世帯ごとの視線の高さを変え、緩やかに領域を分けるように考えています。更には、アイランドキッチンをカウンターとして利用できるような段差にもなっています。
子世帯寝室と親世帯寝室は階も位置も変え離れているのですが、窓から見ればお互いの気配がわかるような場所に窓を設置するなどをして、一緒に住みながら「付かず離れず」の関係で生活ができる事を想定しています。
 2階の親世帯寝室は北側に配置されているのですが、ここに採光、通風を実現する為に3階ボリュームを調節しながら専用中庭を設け、勾配屋根を採用しています。こうする事で4周のほとんどの部分が外気に接するようになり、快適な離れ空間を北側居室に実現しています。
 店舗とともに三代目に店主が変わった「和めし cafe HISAGO」の更なる発展をお祈りしています。そして、この家づくりにご協力いただきましたASJスタッフや工事業者の皆様のお力添えのおかげで完成を迎える事が出来ました。ここに感謝の意を表します。

ASJ熊谷スタジオ

[小沢工業株式会社]

スタジオマネージャー:岡田純一

埼玉県深谷市にて2010年2月に計画した「第3回未来をのぞく住宅展」の開催に先立ち、イベントスタッフの昼食を調達するために、会場からほど近い「創作和めし ひさご」を訪れたことがT様との最初の出会いでした。
 和食を中心とした創作料理店「創作和めし ひさご」をお父様と営まれていたT様は、丁度その頃、それまで培ってきた味をそのままに、「和めしcafe HISAGO」としてお店をリニューアルしようと考えられていたそうです。私が昼食の注文を済ませてイベントチラシをお見せしたとき、何か驚かれた様な顔をされたT様を今でもよく覚えています。
 その後すぐに岡村先生とのプランニングコースがスタート。5月には、1階を店舗、2階及び3階部分を2世帯住居とした木造3階建てのプランで設計契約を締結いたしました。
 その後の本設計期間を経て9月には工事着工となりましたが、店舗部分の厨房機器及び家具・インテリア・新メニューなど、建築工事以外のことにおいても検討事項は多く、それら全体を岡村先生がコーディネートしていく形で工事を進めていきました。工期的にも厳しい状況下ではございましたが、無事にお引き渡しすることが出来たことは、工事に対するT様ご家族の多大な協力と理解に支えられた結果だと感謝しております。
 これからもアフターメンテナンス等にて末長くお付き合いをさせていただきたいですし、「和めしcafe HISAGO」でも頻繁に食事をしようと思っております。新店の繁盛ももちろんですが、新しい住まいでご家族皆さんが楽しく過ごされますことを心より祈念いたします。ありがとうございました。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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