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ASJ Works Close-up

祖母が植えた思い出深い木蓮が二世帯の暮らしをやさしく見守る

東京都葛飾区

木蓮の家

設計 谷山武志・谷山裕子/谷山建築設計室
施工 ASJ大田スタジオ[醍醐建設株式会社]

中庭を中心に内と外とのつながりを楽しむK 邸。

手前に見えるのが以前からある木蓮の木。駐車スペースの奥にある中庭にはヤマボウシの木が新たに植えられた。①

日本とメキシコを回線で繋いで建築家に伝えた家への思い

 東京・下町の住宅街の一角に、Kさんご家族とご両親のためにつくられた二世帯住宅がある。お子様の小学校入学に合わせて家づくりを考えていたKさん。しかし、都心で土地を探して家を建てることに限界を感じて、ご両親に同居を申し出たという。当初は、築三〇年の家をリフォームしての同居を考えていたそうだが、コストがかかる割に思うような間取りにできないことから、建て替えを決意したそうだ。
 KさんとASJとの出会いは、偶然見掛けた駅のポスターがきっかけ。「湘南でモデルハウスの見学会があって、そのとき、湘南スタジオが開催する建築家展のポスターを見たんです。それで、急遽、行ってみました」。会場で建築家と話したり、作品を見るうちに、建築家との家づくりが現実味を帯びてきたKさんは、その日のうちに入会。当時、Kさんは東京・大田区に住んでいたため、その後、家づくりのパートナーは「湘南スタジオ」から、最寄りの「大田スタジオ」になったそうだ。
 多くの作品が展示される建築家展の中で、とりわけ「印象深かった」という、建築家・谷山武志さん、裕子さんご夫婦に家づくりを依頼したKさん。当時からメキシコに単身赴任しているお父様も参加するため、毎週日曜日の午前中にスカイプ(インターネット電話サービス)を利用して打ち合わせが行われた。「谷山さんも初めての経験と言っていました(笑)」。東京とメキシコを結んでの打ち合わせは何度も行われ、その間にKさんと谷山さん、大田スタジオの信頼関係は築かれていった。「僕たちは言いたいことだけを言っただ
けです。あとは谷山さんが中立の立場で上手にまとめてくれました」とKさん。

親世帯のLDK は、中庭から日差しが降り注ぎ、気持ちのよい空間に。子世帯とは干渉しすぎず、お互いを思いやることが大事とお母様。②

面積以上の広がりを与えるデッキと中庭。植栽はイメージにあう木を家族みんなで選んだ。③
建物をコの字型に配置して中庭を確保したK 邸。敷地全体を有効に活用するとともに、前面道路からの視線も遮り、プライバシーが保たれている。④

2階の子世帯のLDKは、屋根形状に合わせた天井が開放感を与え、北欧家具がしっくりとなじむ落ち着いた空間に仕上がっている。⑤

子世帯には子供部屋兼用の楽器を置くスペースも確保された。⑥
庭に面した5.5m超のカウンターは愛着を持って「みんなの机」と呼ばれている。⑦
建築家展で見た谷山さんの作品の中で「とりわけ印象深かった」という、ブルーの造り付けソファを新居に採用したKさん。窓の向こうには、以前の家 の思い出として残した木蓮の木を愛でることができる。⑧

ひとつのチームが完成へと導く想像以上の出来映えに大満足

 こうして出来上がった新居は、一階は中庭からの採光がたっぷりと降り注ぎ、二階は勾配天井によって開放感のある、気持ちのよい家となった。両世帯の窓からはお祖母様が植えたという木蓮の木を見ることもできる。
 「ここまで気持ちのよい家になるとは考えていませんでした。出来上がって改めて実感しています」とKさん。さらに、この家にあわせて購入した北欧家具が空間になじみ、上質さをより一層高めている。「これまでは家具にこだわるゆとりも無かった」と話すお母様も、谷山さんやKさんたちの勧めで購入した新しい家具によって、「ハイグレードな生活を送ることができた」と喜んでいる。
 新居での生活も三カ月が経過。改めて、家づくりを振り返ると、打ち合わせの段階から建築家だけでなく、施工者でもある大田スタジオの袖山さんが常に同席してくれたことが良かったと話すKさん。「最初の段階から僕らの考えや思いを理解してくれて、皆さんがひとつのチームとして取り組んでくれた。ASJだからできたことだと思う」。
 じっくりと時間をかけて自分たちの理想を手に入れたKさんご一家。「家づくりは人それぞれ。僕らの家づくりは時間がかかったかもしれないけど、それだけの価値は十分にあったと思う。これで完成ではなく、住みながら完成へと近づく、そんな楽しみも残しておきたいですね」。この夏、メキシコから帰国したお父様も完成したばかりの我が家にとて
も満足していたという。「父が一番この場所に愛着があると思うので、新しい家への思いはなおさら強かったと思います。これからは僕たちもその思いを受け継いで守っていきたいと思っています」。
 K邸のシンボルツリーとして存在する木蓮の木が、これからも家族の暮らしをやさしく見守り、新たな思い出を刻んでいくことだろう。

(取材/林ちえみ)

無垢の丸柱が空間のアクセントとなったK 邸。本物の素材が持つ上質さが空間に生かされている。⑨

余分な装飾を施さずに、シンプルにコーディネートされた寝室。左上部に見えるのは風抜きのための障子。⑩
リビングにはCD やレコードが数多く納められた棚が設置された。⑪
階段の窓を通して夕焼けを臨むことも。⑫
キッチンは雑多に見えないように収納など工夫を施す。⑬
まるで壁の一部のような換気扇は奥様のお気に入り。⑭
下町の趣きを残す住宅街。お祖母様が植えた木蓮がシンボルツリーとなって、訪れたゲストを出迎える。⑮

■木蓮の家

所在地

東京都葛飾区

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供1人+両親

設計

設計 谷山武志・谷山裕子/谷山建築設計室 
構造 野村一級建築士事務所
 担当 野村基

施工

 ASJ大田スタジオ[醍醐建設株式会社]
 担当 佐藤良雄
設備 積水工業株式会社
 担当 安井徹
電気 サクラ電気株式会社
 担当 加藤貴弥
造園 有限会社高松造園
 担当 高松幸敏

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階 
軒高 5,585mm 最高の高さ 6,885mm
敷地面積 182.12m2
建築面積  94.46m2(建蔽率51.86% 許容60%)
延床面積 178.27m2(容積率97.88% 許容200%)
 1階   87.96m2
 2階   90.31m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板横葺
外壁 ソフトリシン吹付
開口部 アルミサッシュ
外構 玉砂利洗い出し コンクリート刷毛引き レッドシダーデッキ

主な内部仕上げ

玄関・玄関納戸
 床 玉砂利洗い出し
 壁・天井 クロス貼り
ホール・居間食堂厨房1・寝室1・洗面室1・クローゼット1
 床 ナラ無垢フローリングウレタン塗装t=15
 壁・天井 クロス貼り 一部壁タイル貼り
和室
 床 畳
 壁 聚落塗り
 天井 サツマヨシベニヤ張り
居間食堂厨房2・楽器室・個室・寝室2・洗面室2・物干室・クローゼット2
 床 ナラ無垢フローリングオイル塗りt=15
 壁・天井 タナクリーム塗り 一部壁タイル貼り
便所・脱衣室
 床 ナラ無垢フローリングウレタン塗装t=15
 壁・天井 クロス貼り
階段
 床 ナラ集成材オイル塗り
 壁・天井 クロス貼り

工程

設計期間 2010年3月~2011年1月
工事期間 2011年2月~2011年6月

撮影

小川重雄(表紙 ①②③④⑤⑦⑧⑨⑩⑪⑮)
石河正武(⑥⑫⑬⑭)

断面図
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2階平面
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1階平面 縮尺1/200
クリックで拡大

 

谷山武志

[東京都文京区]

1972年千葉県生まれ/1996年早稲田大学理工学部資源工学科卒業/1999年早稲田大学理工学部建築学科卒業後、株式会社永山建築事務所に勤務/2002年有限会社村田靖夫建築研究室入社/2008年谷山建築設計室設立

 
 
 

谷山裕子

[東京都文京区]

1972年東京都生まれ/1995年日本女子大学人間社会学部現代社会学科卒業/2004年東京ハウジングアカデミーインテリアアーキテクト科卒業後、有限会社村田靖夫建築研究室入社/2008年谷山建築設計室に参加

木蓮の家

 
 敷地は小さな町工場も残る住宅街にあり、歩いてすぐの駅のホームからは近くを流れる荒川とその対岸にスカイツリーが見える。駅への道に面して立つ木蓮は、花の季節に道行く人を楽しませ、はじめて敷地を訪れたときも白い花を咲かせていた。
 計画は音楽好きなご夫婦とお子様、海外生活の長いご両親の5人が集まって住む二世帯住宅で、木蓮を残すこと、中庭のある住まいとすることを希望されていた。
 南北に奥行きのある敷地の手前は、既存の木蓮をたよりに位置を決めた前庭とし、西側にはアプローチを、東側には中庭に光を呼び込む駐車場を取り、その奥に3間角の大きさの中庭とそれを囲む総2階の建物を配置した。
 1階はおもに親世帯で、建物と板塀によって大切に囲まれた中庭を中心に、内と外、部屋と庭とのつながりを楽しむ落ち着いた住まいに。2階は子世帯とし、屋根型にあわせた舟底天井の下で、丸柱と引戸によってゆるやかに区切られた小さな場の集まりが連続してつながる活動的な住まいとなった。
 1つ屋根の下で2つの異なる場を持つ2つのくらしが重なり合いながら時を刻んでゆく。出来上がった建物を眺めながら、多世帯で暮らすことのおもしろさをあらためて感じることができた。
(谷山武志・谷山裕子)

ASJ大田スタジオ

[醍醐建設株式会社]

クライアントパートナー:袖山正則
 K様との出会いは一本の電話からでした。
ASJ本部からの「他のスタジオの会員様を、ご自宅に近い大田スタジオに移籍したい」との連絡でした。スタジオを開設して間もない頃でしたので、私は「そんなこともあるのか?」と思いつつ早速お会いしました。
 お話を伺ってみると「行楽先でASJイベント会場に立ち寄り、ASJのシステムに興味を持って入会した」とのことでした。既に何年も家作りを検討されていて、「こんな家を建てたい」という具体的なイメージをお持ちでした。建築家も、イベント会場でお会いした谷山先生にすっかり決められていました。
 早速、谷山先生との打ち合わせを始めました。谷山先生の最初の提案プランは、とても繊細かつ緻密な計画がされていて完成度が高く、大きなプラン修正もなく打ち合わせは進みました。
 しかし二世帯住宅ですので、親世帯・子世帯を含めた打ち合わせは確認・調整事項が多く、皆様には毎週のようにスタジオに足を運んで頂きました。気づけば6時間を越える打ち合わせもしばしばありました。
 メキシコに赴任中のお父様は、スカイプにて毎回打ち合わせに参加して頂きました。本当に皆様のお気持ちには頭の下がる思いでした。そして、その期待に答えるべく谷山先生には大変な労力を注いで頂きました。
 「会員様の理想の家作りのため」のとてもすばらしいチームであったと思います。そのチームに参加できたことを幸せに思います。
 笑顔の絶えない素敵なK様ご家族に、あらためて感謝を申し上げます。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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