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ASJ Works Close-up

白い箱の中はちょうどいい居心地の良さにあふれている

仙台市青葉区

柏木の家

設計 早川徹建築設計室
施工 ASJ仙台青葉スタジオ

気持ちの良いカウンター席。ここでこれから美味しい料理とたくさんの笑顔があふれるだろう。

大きく切り取られた白い箱と木立をモチーフとした意匠。建設中より通る人たちの感心が集まる。①

一階は将来、飲食店を開きたい。生活空間は二階に集約したい。仙台市中心部の限られた敷地面積の中で、できる限り自分たちの個性が生かせるものを創りたい。「とにかく、気に入ったもの、おもしろいものがつくりたかった」とHさんは話す。
 ASJのイベントに足を運び、建築家のホームページなどをチェックする中で、建築家・早川徹氏には、つくり出す建物と空間のテイスト、ホームページのデザイン性に惹かれたそうだ。
 「ブログからも人柄を感じましたし、とてもマメに更新されているのもいいなと思いました。ぜひ会ってみたいと思いました」。
 そして会ったその日に設計は早川氏に決まる。「とにかく、フィーリングが合った」と話すHさん。
 H邸の設計に早川氏はチーム体制で臨んだ。「店舗がからむ住宅で前々からやりたかったことです」と早川氏。グラフィックデザインで「デザインマトカ」を。照明デザインで「スタジオLUME」に声をかける。
 H邸のためのスペシャルチームだ。Hさんは言う。「打ち合わせで出される資料なども、いつもイメージに合ったものでした。その点でも本当に話が進めやすかったです」。
 工事も進み、外壁が張られ、さぁいよいよ内装工事に入るという時、東日本大震災が起きた。三日後に内装の最終プレゼンの予定だったが、すぐには連絡が取れず、集まること
もできない。建物が大きな被害を受けていないことはすぐに確認され皆安堵したが、建材の倉庫が被災したことにより、材料が入らない日々。
現場は約一ヶ月あまりの間、中断することになる。

1階は近い将来飲食店に。やわらかな日差しがたっぷりと入り、木立をモチーフとした柱の影が床に落ちる。③

日が暮れると、あたたかな光りが通りを照らす。②
仙台市中心部にほど近い閑静な住宅地にたたずむH邸。個性的な佇まいがひときわ目を引く。④
夕暮れの店内。間接照明が木立のモチーフを際立たせる。⑤

2 階の居住空間はコンパクトながら住みやすい工夫がいっぱい。栗の床材には、皆で「キヌカ」という自然塗料を塗った。⑥

奥の壁面は皆で作った左官壁。舞い上がるような葉のタイルが見える。⑦
ワーキングデスク脇の光庭。陽の光や、雨や雪
も降る様子がリビングから見られる。⑧
寝室兼和室。天井面に照明を設けず、建具際な
どに光を配置することで印象的な景色に。⑨
左官材を仕上げる前に下地に皆で落書きをして記念撮影。⑩
黙々と壁を塗っていくHさん一家と設計チーム。⑪
夜になるとやわらかな表情をみせるH邸。⑫
震災後に初めて現場で全員が集まれた日のH さん一家
の差し入れ。石膏ボードの上にたくさん並べられたこ
のたくさんのパンは関係者一同にとって忘れられない
思い出になっている。⑬

■柏木の家

所在地

宮城県仙台市青葉区

主要用途

専用住宅(店舗併用住宅)

家族構成

夫婦+子供1人

設計

設計 早川徹建築設計室
 担当 早川徹、遠藤和紀・高野史保(デザインマトカ)
構造 テラ構造設計 担当 高橋好子
設備 早川徹建築設計室 担当 早川徹
電気 ライティングデザインスタジオ LUME
 担当 梅田かおり

施工

ASJ仙台青葉スタジオ[株式会社丸本組]
 担当 石間義朗
設備 藤倉設備工業株式会社 担当 米田大輝
電気 有限会社国光電気商会 担当 奥山誠

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階  
軒高 7,080mm 最高の高さ 7,640mm
敷地面積 105.00m2
建築面積  62.85m2(建蔽率59.85% 許容60%)
延床面積 103.73m2(容積率98.79% 許容200%)
 1階   45.30m2
 2階   58.43m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板 タテハゼ葺き
外壁 ジョリパット コテ仕上げ
開口部 アルミサッシュ
外構 土間コンクリート 刷毛引き

主な内部仕上げ

店舗
 床 ナラ無垢フローリング 自然塗料 t=15
 壁 クロス貼り 一部左官仕上げ
 天井 クロス貼り
リビング・ダイニング
 床 クリ無垢フローリング(床暖房用) t=15
 壁・天井 クロス貼り
和室
 床 畳敷き
 壁 クロス貼り
 天井 シナベニヤ張り

工程

設計期間 2010年 3月~2010年10月
工事期間 2010年11月~2011年 6月

撮影

遠藤和紀

断面
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小屋裏平面
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1階平面 縮尺1/200
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2階平面
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配置
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早川徹

[仙台市泉区]

1974年新潟県生まれ/1997年日本大学工学部建築学科卒業後、積水ハウス株式会社に勤務/2002年有限会社白鳥・ASSOCIATES 入社/2005年早川徹建築設計室設立

柏木の家
 
 “まちの定食屋さん”を近い将来営むことができるような住まい、というコンセプトのもと、計画がスタートしました。「どうせなら、みんなで楽しい計画を」ということで、デザインマトカ、ライティングスタジオLUMEとチームを組み、それぞれのアイデアを出しあい、イメージを共有しながら計画を進めました。
 約30坪の敷地は、仙台市内、古くからの街並みが連なる一角に位置し、北側道路は比較的交通量の多いバス通りとなっています。
 建物は1階を店舗、2階を居住スペースとし、お店としての利用を考え、2階の生活感を出さないように道路に接する外壁面には、開口部の設置を避けています。1階店舗の開口部については、外部からの開放的・閉鎖的になりすぎないように、木立ちのようなデザインを設けることで、建物内外をあいまいに心地よくつなげる役割をしています。また、お店の壁の一部分を自分たちで施工することにより、空間に柔らかさ、温かさが加わりました。
 工事中震災に見舞われ、工期も2ヶ月ほど遅れましたが、被災されながらも仙台青葉スタジオをはじめとする現場監督、施工業者の皆さんの協力があって、無事完成に至ることができ、いろいろと感慨深い住まいとなりました。


 スタジオマネージャー:酒井武久

クライアントパートナー:阿部政彦

チーフエンジニア:石間義朗

ASJ仙台青葉スタジオ

[株式会社丸本組]

  ちょうど1年前、3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災。H様邸の新築工事現場は、月末の完成お引き渡しを目指し大工職人と外壁のコーキング職人が作業の真っ最中でした。これまで経験したことが無い、強く激しい揺れがとても長く、その後も余震が続く中、現場監督であるチーフエンジニアの石間さんは、停電で信号が消え車が使えないため走って現場に急行し、職人と建物の無事を確認しました。
 H様ご夫妻には、小学生のお子さんがいらっしゃいます。新居の完成にあわせて春休みに引っ越しと転校をする予定でした。しかし大震災の影響で新築工事に回す職人と資材の調達がままならず、工事再開のめどが立たない状況でした。そんな中、H様は「完成が少々遅れても私たちには今住む所があります。子供の転校は、徒歩での通学が困難になり車での送迎が必要ですが、一時的なことですから予定通りします。それよりも甚大な被害を受け困っている方々へ優先的に職人さんと資材を回してあげてください」と言ってくださいました。ご夫妻のお言葉とお人柄に救われました。本当にありがとうございました。
 H様は2008年5月の入会から2年ほどで希望エリアの土地が見つかり、同時に早川徹先生と面談、即意気投合しその日のうちに要望ヒアリングへと進みました。「将来は飲食店舗を開きたい」という想いは、メニュー構成や食材へのこだわりを熱く語られるなど、決して中途半端なものではありませんでした。早川先生はH様の熱意を受け止め、グラフィックデザイナーや照明デザイナーに声をかけ、特別チーム「プロジェクトH」を編成しました。その結果は随所に見事にあらわれています。1階店舗内部の壁塗大会の際に下地に描かれた、H様ご家族、早川先生、デザインマトカさんらによる落書きは「プロジェクトH」の大成功を物語る一つです(内容は早川先生のブログでどうぞ)。
 H様、皆が近い将来の開店をとても楽しみにしています。
2012年3月11日 記 阿部政彦

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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