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ASJ Works Close-up

完全参加で作り上げた掘割の借景をいかした末広がりの家

福岡県柳川市

白扇の家

設計 三角健晃/田村の小さな設計事務所
施工 佐賀スタジオ [福田建設株式会社]

吹き抜けのリビング。壁やサッシの断熱性能が高く、まるでサンルームのように暖かい。①

 町のあちこちに掘割が巡らされた美しい城下町、柳川。春らんまんの時季にA邸へお邪魔すると、桜のコースターでもてなされた。「大工さんが床材で作ってくれたんですよ」。妻のAさんが弾む声で教えてくれた。
 結婚十二年目のA夫妻。それまで築四〇年超の祖父の家に手を入れ生活していたが、長男の小学校入学を機に新築を決めた。掘割越しに広がる寺庭の緑に惚れこんでこの土地を選んだものの、変形土地ゆえ型どおりに建てては満足できるとは思えない。そんな時出会ったのがASJの建築家、三角さんだった。「数名からプレゼンを受けたのですが、初めて会った時から、何を話しても、何を聞いても受け止めてくれる安心感をかんじました」。自らを「なんでも参加しないとダメなタイプ」と評する夫妻にとって、「お客様完全参加型」を推進する三角さんは、理想的なパートナーだったようだ。
 打ち合わせは二週間に一度、一ヶ月を開けずに実施された。その間、夫妻は子ども達が寝静まった夜更けから熱心に〝勉強〞をし、当時妻Aさんの睡眠は三〜四時間がざらだったという。「全メーカーの全情報に目を通されていたのではないでしょうか。正直、いろいろ教えられました」。三角さんがふり返る。

夫妻の基本カラーは「白」。家族が集まるリビングの壁には漆喰が施されている。②

キッチンと揃いのダイニングテーブル。妻のA さんは、システムキッチンの排水溝の違いまで調べていたそう。「その熱心さには脱帽」と三角さん。③
日々子どもたちが元気に上り下りする、シンプルで美
しい階段。④

 夫妻たっての希望は、室内外いたるところの「枠」を無くすこと。それにはスタジオからの提案で、薄い板を斜めに切って納める「はっかけ」の手法が多用された。たしかに、どこにも枠が見当たらず、清々しい。「小さな譲れない部分がたくさんあって、建築家も大工さんもさぞ困られたと思います。とことん付き合ってくれて、感謝に尽きません」と夫妻は口をそろえる。
 家づくりの中で一番の思い出は? 「工程は悩みづくしだったから、建ち上がった瞬間が一番感動した」とAさん。一方、お茶出しを兼ね現場に毎日通った妻Mさんは、「すべてが思い出深い。だから引き渡しの日、嬉しいはずなのに、いつも皆さんが居た家に誰も居なくなって、さみしい気持ちになったんです」。家づくりの全工程に参加した二人ならではの感想だろう。
 入居から半年が過ぎた。夫妻は「以前は出べそ(外出好き)だったのに、気づくと家にいる時間が増えた」と笑う。「子ども達がこの家を引き継ぎたいと思うような、居心地のいい空間を作っていきたい」。そう言って、傍らで〝仲良くケンカ〞する年子の兄妹に目を細めた。
(取材/坂口紀美子)

庭を見晴らせ、穏やかな陽光が届くダイニングリビング。夫妻・親子の会話が弾む。⑤

2階のスタディスペースで、仲良く笑顔の兄妹。⑥
玄関前の廊下とダイニングをつなぐ引き戸。「この手掛け一つでも、サイズ、形状、素材をどうするか、細かく悩みました」とA さん。⑦
2 階スタディスペースからリビングの窓を望む。借景の緑が美しい。⑧
スタディスペース。お邪魔した時は、2 人の子どもたちの教材がきれいに並べられていた。⑨
2 階の二室は、それぞれの収納スペース間で繋がっており、まるでトンネルをくぐるように行き来できるようになっている。⑩
和室。斜めにくりぬかれ、まるで彫刻のような天井が印象的だ。収納スペースには取っ手一つ見えない。⑪
玄関直通のフィットルームが併設された浴室。四季折々の庭を眺めつつ寛ぐバスタイムは格別だ。⑫
ヒノキ製の玄関とルーバー。室内外すべての扉を引き戸にしたのは、夫妻の当初からの希望だったという。⑬
格子に組まれたヒノキが美しいルーバーの前で。三角さんとASJ 佐賀
スタジオのスタッフと一緒に記念撮影。⑭
A 邸外観。格子に組まれたヒノキ製のルーバーを見て、来客者は一様に感嘆の声をあげるそうだ。⑮

■白扇の家

所在地

福岡県柳川市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供2人

設計

三角健晃/田村の小さな設計事務所

施工

ASJ佐賀スタジオ[福田建設株式会社]
担当 福田泰之 坂田邦雄

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階 
軒高 6,585mm 最高の高さ 7,089mm
敷地面積 259.10m2
建築面積 129.94m2(建蔽率50.15% 許容60%)
延床面積 174.33m2(容積率55.78% 許容180%)
 1階  120.99m2
 2階   53.34m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板
外壁 STO下地工法の上リシン吹付け
開口部 アルミサッシュ
外構 モルタル金ゴテ

主な内部仕上げ

LDK
 床 サクラ無垢床材
 壁・天井 漆喰塗り
和室
 床 畳敷
 壁・天井 クロス貼り
フィットルーム
 床 フロアタイル
 壁・天井 クロス貼り
スタディスペース
 床 サクラ無垢床材
 壁・天井 漆喰塗り
主寝室 ルーム1・2
 床 サクラ無垢床材
 壁・天井 クロス貼り

工程

設計期間 2009年9月~2010年2月
工事期間 2010年3月~2011年9月

撮影

 針金洋介(Techni Staff)(①②③④⑤⑧⑨⑩⑪⑫⑮)
 坂口紀美子(⑥⑦⑬⑭)

断面図
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2階平面
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1階平面 縮尺1/200
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三角健晃

[福岡市早良区]

1975年福岡県生まれ/1998年福岡大学工学部建築学科卒業後、大和ハウス工業株式会社に勤務/2005年株式会社クレディス入社/2009年田村の小さな設計事務所設立

白扇の家
 
 「愛着ある家づくり」、お客様完全参加型のプロジェクトを推進しています。
 ご家族の想いをひとつの物語にし、プロジェクトに生命を吹き込むこと。それが、私が一番最初にお手伝いする仕事になります。
 ご相談頂いた敷地は東西に延びた個性ある変形敷地です。周辺環境を読み解きながらシミュレーションの結果をビジュアルとしてイメージできるようにスケッチをおこし、ご提案させて頂きました。
 「白扇の家」では奥行きある庭園とお堀沿いの借景を活かし、扇状に景色が広がる末広がりのプランになっています。様々な可能性を秘めていましたので、ゆるぎないコンセプトが必要でした。また、限られた条件の中で取りまとめていく手法として、ご家族のライフスタイルを読み解くことも大切なポイントでした。
 特筆すべきは、収納としての性格を持つシューズルームやフィットルームを計画に盛り込めたことです。絶対的な面積に拘らず、空間を有効に活用することができたこと、生活感のないすっきりとした玄関からの動線をプライベートとパブリックに明確に分けることができたこともごく自然な流れであったと思います。
 ご家族には詳細な内容まで、図面が真っ黒になるまでご検討頂いておりましたし、カタログや資料も付箋だらけの打ち合わせでした。ゼロからの素材選定にもとことんお付き合いさせて頂きました。想い出話は尽きません(笑)
 お引き渡しの後、「肩の荷がおりました」とのメールを頂き、目頭が熱くなったことが思い出されます。時が満ちたのだなと思いました。
 ご家族の皆様はじめ、スタジオの皆様、協力業者の皆様、関わったすべての人たちの心がひとつになった結果、「白扇の家」は完成の日を迎えることができました。感謝の気持ちで一杯です。そのことを今静かに嬉しく思います。
 これからはじまるお付き合いとお家の成長がとても楽しみです。

ASJ佐賀スタジオ

[福田建設株式会社]

スタジオマネージャー:福田泰之
 A様は初めてのお家づくりということもあり、非常に熱い気持ちをお持ちでした。
 ご自身のコンセプトも明確にお持ちで、積極的に打ち合せや部材選びにも参加されていました。打ち合わせは非常に濃密な時を重ね、話が盛り上がって、気づけば5時間も打ち合わせしていたこともしばしば。
 三角先生のポリシーでもあります「お客様完全参加型のプロジェクト」がA様にも伝わっており、それに我々施工会社も共鳴し、建主様の意見をしっかり聞いて進めました。そのなかで、間取りはもちろん、バランスの良い構造、仕様などA様に満足して頂けるお家をつくることができたと思います。
 また、引き渡し前に三角先生の提案で、A様、三角先生、我々スタジオスタッフも参加して床の仕上げを行えたことは、非常に楽しい思い出になりました。
 今後、A様ご家族にとっていつまでも住み心地が良いお家であるように、我々スタジオもしっかりとサポートをさせて頂きます。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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