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ASJ Works Close-up

静謐なホテルとワイルドなアメリカンスタイルが共存する丘の家

長崎県佐世保市

水平線の家

設計 佐藤正彦/アーキテクト憧
施工 ASJ佐世保スタジオ [白石建設株式会社]

室内に収まる850cc の大型バイクとI さん。結婚直前に大型二輪免許を取得して購入、以来メンテナンスをしながら7 年乗りつづけているという。バイクは右奥の扉からそのまま搬入することができる。

入居から8 ヶ月。あまりに美しさを保って暮らしているせいか、「住んでいないなら貸してほしい」と頼まれたことがあるという。①

 坂の町で知られる長崎・佐世保。カーブを登ると、造形芸術のようなI邸が現れた。青空へ向かって斜めに突き出された壁と屋根。漁師町の喧騒からしばし逃れ、ここだけ清浄なオーラに包まれているようだ。「建ち上がった時、自分たちも息をのんだ。この状態をずっと保っていくのが目標です」。出迎えたI夫妻が話す。
 夫妻が新婚当初に借りたのは、昼夜問わず漁船のエンジン音が届く、古く使い勝手の悪い中古家だった。
「静穏に暮らしたい!」。妻Mさんの思いが頂点に達した二〇一〇年、ASJの福岡イベントで佐藤さんと会遇。まだ建築の決意も土地もないころだったが、二人が「八五〇㏄バイクを部屋の中に置きたい(夫)」「静謐なホテルや美術館のような家に住みたい(妻)」と伝えると、佐藤さんはさらさらとラフ図を描きイメージを形にしたのだという。「それまでどちらかの希望は理解してもらえても、同時に両方が叶うことはなかった。漠然とした言葉をきっちり汲み取ってもらい感激した」とIさん。だから高低差のあるこの土地を見つけた時も真っ先に「ここに自分達の望む家は建ちますか?」と尋ね、建築を決めた。いま佐藤さんは「この地でなければ、決してこの形の家は建たなかった」と明かす。『水平線の家』は、夫妻の願いと建築家、そして、この敷地との巡り合いによって完成したのである。

青空へ向かって斜めに伸びた白壁が美しいI邸。海側からと丘側から見た表情が全く異なるのも、この家の特長だ。②

設計は、共働きのため生活時間帯の異なる二人がそれぞれ、目覚めてから家を出るまでの動線が一本となるようシミュレーションして進めた。将来開設する事務所へ続く通路とプライベート空間を完全に分離し、寝室の隣にウォークインクローゼットを設置。家の中心に物をまとめたことで、部屋の出入りが激減した。妻Mさんは「身支度や片付けの効率がぐっとあがって、面倒くさがりが治りました」と笑う。
 工事期間中は「すごか家の建ちようね」と町の話題をさらったI邸。上棟式には大勢の人が訪れ、一五〇個用意していた餅はあっと言う間になくなったのだという。
 入居して八カ月。新居での暮らしを、夫妻は「快適以外の言葉がない」と口をそろえる。日によって海の表情が違うこと、同じ時間に鳥が隊列を組んで飛んで行くこと…。自然に眼を向ける時間が格段に増えたのだという。また海側からと丘側から見る〝顔〞が全く異なるのもこの家の特長の一つ。「いつか船を入手して、海の上からの景観も楽しみたい」。建築でそれぞれの望みを実現させた夫妻には、こんな夢も膨らみ始めている。
(取材/坂口紀美子)

ホビールームでくつろぐIさん。大きな窓から 眺める月と輝く波の美しさはまた格別なのだそうだ。③

佐世保湾を一望できるダイニングで、夫妻の会話が弾む。「とりあえずTV を付けるという習慣が無くなって、気付くとのんびり海を見ています」とI さん。④

リゾートホテルを思わせる駐車スペース。佐世保湾から吹き上がってくる風が心地よい。⑤
広々としたキッチン・ダイニング。海と空から光が降り注ぎ、取材中も電灯不要の明るさだった。⑥
まるで仏プチホテルのようなパウダー室。ソファはなんと、竣工直前にI さんが妻のために見つけたものなのだそう。⑦
I 邸の寝室には敢えて扉がついていない。起床時間が異なるお互いを、扉の音で起こさないようにとの配慮だ。⑧
和室の大きな姿見は、和装着付けをする妻Mさんのリクエスト。⑨
和室。斜めにくりぬかれ、まるで彫刻のような天井が印象的だ。収納スペースには取っ手一つ見えない。⑪
目前の漁港から見上げたI 邸。眩く美しい建ち姿に眼を奪われる。⑪
製本された厚い図面を開いて建築当時の思い出話に花が咲く。⑫
I 夫妻と建築家の佐藤さん、佐世保スタジオの松﨑さんと一緒に、玄関前でパチリ。⑬

■I-house「水平線の家」

所在地

長崎県佐世保市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦

設計

設計 佐藤正彦/アーキテクト憧
構造 鏡山建築構造設計事務所

施工

ASJ佐世保スタジオ[白石建設株式会社]
担当 松﨑章

構造・構法・規模

鉄筋コンクリート壁式+在来木造軸組面剛性工法
地上3階 
軒高 8.707mm 最高の高さ 9.397mm
敷地面積 326.92m2
建築面積 129.18m2(建蔽率39.55% 許容60%)
延床面積 173.54m2(容積率47.93% 許容100%)
 1階 40.78m2
 2階 79.57m2
 3階 53.19m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板 パイアーチ仕様
外壁 コンクリート打放しウレタン保護塗装
防火サイディング土壁調セラミック系アクリルシリコン仕上げ塗装
開口部 トステム アルミサッシュ
外構 コンクリート打放し ソイルレンガ

主な内部仕上げ

ホビールーム
 床 サーモウッド(カバ)自然オイル塗装
 壁 環境クロス 一部リアルウォール憩
 天井 環境クロス
玄関ホール
 床 磁器質タイル
 壁・天井 環境クロス
パウダー室
 床 タモ(ユニ)着色ウレタン塗装
 壁 環境クロス
 天井 リアルウォール憩 杉羽目板とぎだし 
キッチン・ダイニング
 床 タモ(ユニ)着色ウレタン塗装
 壁 環境クロス インテリアモザイク窯変ボーダー
 天井 環境クロス

工程

設計期間 2010年5月~2011年 5月
工事期間 2011年6月~2011年12月

撮影

石井紀久(表紙 ①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪)
坂口紀美子(⑫⑬)

A-A'断面図
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B-B'断面図
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C-C'断面図
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3階平面
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2階平面
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1階平面 縮尺1/300
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佐藤正彦

[福岡市中央区、東京都渋谷区]

1960年福岡県生まれ/1985年株式会社憧設計
事務所設立/2008年株式会社アーキテクト憧に改称

水平線の家
 
 この計画地は長崎佐世保市内の佐世保湾沿いに走る道路に面しており、前面道路と高低差がある海に向かって開かれた傾斜地です。
 今回の計画はこの素晴らしい自然環境を最大限に活用し、環境と建築が調和することがコンセプトとなりました。敷地の形状を生かして建築するため、傾斜地に合わせて建築の計画を進めました。
 敷地の形状を造成工事などで変えずに調和させる為に、1階 部分は壁式鉄筋コンクリート造とし前面道路より低い傾斜地に配置して、その上に2階と3階を在来木造軸組面剛性工法として住宅が海と空に突出すようなフロアー構成としました。
 道路側の2階、3階部分は極力開口部を造らずにデザインし、青い海と青い空を背景に造形的に見えて、自然の背景の中でシンプルかつ大胆なデザインを目指しました。
 また、オートバイと自然の風景を見ながら生活したいというI様の為に、1階のRC造部分にオートバイでそのまま室内に進入できるホビールームを設け、天候に左右されることもなく趣味に没頭できる部屋を計画しました。
 住宅に訪れた人たちの視界は、海側に解放された窓から広がる青い海と青い空に誘導されます。豊かな自然を感じ、開放感のある空間で緩やかなひとときを満喫できる住宅になっています。

ASJ佐世保スタジオ

[白石建設株式会社]

スタジオマネージャー:松﨑章
 I様は土地探しからのスタートでした。色々な土地を検討されましたが、なかなか思うような土地が見つかりませんでした。
 そんななか、I様から「気になる土地があるのだが…」との連絡をいただき現地を初めて見た時、その景色の美しさに驚きました。まさに、この土地とのめぐり合いは感動的でした。
 また建築家をどなたに依頼するかとの段階でも、ご夫婦は各スタジオのイベント会場を精力的に回られました。ある会場での佐藤先生とのひらめき的な出会いがなかったら、今回の建物はなかったでしょう。
 数度にわたるファイナンシャルプランナーとの資金計画や、佐藤先生とのプランの打ち合わせを重ねる毎に、I様ご夫婦の夢は一歩一歩前進しているようでした。佐藤先生に対する信頼が形として図面に表現されてくる様子はまさに素晴らしいの一言でした。I様ご夫婦の家づくりの過程を共有できたことはスタッフにとりましても嬉しいことでした。
 引き渡しの後も、快く他の会員様をご案内して下さったり、当スタジオの業務にご協力いただいたりと本当に感謝しています。
 佐藤先生が「水平線の家」と名付けられた海の青・島々の緑・限りなく広がる空に映える白い建物。その建物の中からはご夫婦の明るい話し声が聞こえてきそうです。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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