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ASJ Works Close-up

スパニッシュ瓦の大屋根が自慢の明るいバリアフリーの家

神奈川県横浜市

登り屋根の家

設計 河内真菜/一級建築士事務所アトリエマナ
施工 ASJみなとみらいスタジオ[株式会社タツミプランニング]

2 階の東側に位置するアトリエ。いかにも制作意欲が湧きそうな居心地の良い空間である。

3 色使いのスパニッシュ瓦が青空に映える。庭先の樹々も皆、生き生きとして見える。①

吹き抜けのリビングと寝室はとても開放的で、快適です。

 胸のすくような青空に映える三色使いのスパニッシュ瓦と白い外壁。大屋根の真ん中に設けられたバルコニーや軒先には、色鮮やかな花が咲き誇り、まるで南欧の街に迷い込んだかのような錯覚を覚える景色だ。
 〝六三歳の決断〞、建主であるYさんは、今回の家づくりをそのように表現した。実は、この南欧情緒あふれる家はYさんが生まれ育った築五二年の家があった場所に今、建っている。還暦を過ぎたYさんは将来のことを考え、趣味である絵画とガーデニングを存分に楽しめる家をと、建て替えを決断されたのだ。
 「長く住宅に関わるメディアのデザインに携わっていた経験から、自分のなかで家のイメージはほぼ固まっていました。でも、そのイメージを誰に実現してもらうか。建築家はたくさんいるので選べなくて。そこでASJの存在を知り、イベントに参加しました。そこで出席されていた建築家全員と話し、河内真菜さんの感性に惹かれてお願いすることに決めました。何よりも、みなとみらいスタジオの岡野さんの人柄によるところが大きかったと思います」。
 そう語るYさんが、河内さんに出した希望は大きく三つ。寝食のスペースを分けること、バリアフリーであること、外観が欧風であることだ。打ち合わせの際に、手描きの詳細な平面図まで携えるほど、熱のこもったそれらの希望は見事に叶えられた。
 一階は中庭のように光が溜まる明るい玄関を中心に、東側にダイニングキッチンとリビング、そして西側に寝室とバスルームを振り分けた。リビングと寝室はともに吹き抜けとし、広々とした開放的な空間を確保。それぞれ二階とも窓で繋がっており、開けると家のなかにさらなる一体感が生まれる。まるで大屋根がすべての居室を包み込んでいるようだ。

磨りガラスを通して光が注ぎ込む明るい玄関。入って左手の引き戸の向こうは寝室だ。②
木製の収納は靴を脱ぎ履きする時に腰掛けられる。③
玄関を中心にリビングと寝室を左右に振り分けている。こちら側にはリビングがある。④
カウンターを設けたキッチンと一体となったリビングルーム。正方形の大きな窓は通気も採光も申し分ない。⑤

 そしてフルフラットの床にも注目したい。すべての部屋のドアはデッドスペースを生まないように引き戸を採用しているが、その敷居が段差とならないように造作されているのだ。また、ラバトリーを寝室の隣に設置し、スペースを広くとってあるので移動もスムーズである。
 さらに、街行く人の目を引き付ける外観。イタリアやスペインなど、海外旅行がお好きなYさんは、現地の建築に触れ、その美しさに感銘を受け、南欧の空気を宿した家をと希望された。そこで、黄金律を採用したという大屋根一面に、スパニッシュ瓦を採用。濃淡の異なる三色を使い、リズミカルに屋根を彩っている。
 二階には東側にアトリエを、西側にはゲストルームとしても使える和室を用意。一階と繋がる窓は、通気を良くするためでもあるが、コミュニケーションをとりやすいようにとの意図がこめられている。将来、もし家を手放すことになり、次の家族が住むことになっても、子供部屋となるであろう二階の部屋から一階のリビングとで会話ができるようにとの配慮までなされているのだ。
 住み心地について、Yさんはこのように語ってくださった。
 「すべての部屋が明るくて、気に入っています。特に、リビングと主寝室は吹き抜けのおかげで広々として、とても快適です。そして、今の一番の楽しみはガーデニング。春には色とりどりの花を咲かせる予定なんです」。
 子どもの頃から一緒に暮らしてきたという柿の木のある庭で、草木の手入れをするYさんの笑顔は、本当に満ち足りたものだった。
(取材/吉田桂)

白とベージュを基調とした家具で調和のとれた空間をコーディネート。選んだのはすべて、Y さん自身だ。⑥

三角の天井がモダンな印象の和室。来客時にはゲストルームとしても使えるよう、隣にトイレを備えられている。⑦
和室、バルコニー、リビングが大屋根に包まれているようだ。⑧
奥様の記録ファイル。手書きの収納レイアウトなど。⑩
2 階の廊下にはバルコニーからの光が入る。⑨
大屋根の真ん中を四角く切り抜いた、中庭のようなポーチ。⑩
北側に位置するにもかかわらず、明るいラバトリー。広さも充分だ。⑫
Y さんが愛情込めて手入れしている庭。樹齢60 年以上の柿の樹には、大きな実が鈴なりだ。⑬

■登り屋根の家

所在地

神奈川県横浜市

主要用途

専用住宅

設計

設計者 河内真菜/一級建築士事務所アトリエマナ
 担当 河内真菜 小松崎七穂
構造 MID研究所
 担当 加藤政寛 

施工

ASJみなとみらいスタジオ
[株式会社タツミプランニング]
 担当 府川克行

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階 
軒高 5,160mm 最高の高さ 6,700mm
敷地面積 159.63m2
建築面積  59.15m2(建蔽率37.05% 許容50%)
延床面積  90.00m2(容積率56.38% 許容80%)
 1階   58.88m2
 2階   31.12m2

主な外部仕上げ

屋根 瓦屋根
外壁 ジョリパットアルファ
開口部 アルミサッシュ
外構 磁器質タイル貼り

主な内部仕上げ

リビングダイニング・キッチン
 床 アッシュフローリング
 壁・天井 PB寒冷紗パテ処理の上、EP2
寝室
 床 アッシュフローリング
 壁・天井 PB寒冷紗パテ処理の上、EP2
和室
 床 半畳市松敷き
 壁・天井 PB寒冷紗パテ処理の上、クロス貼り
アトリエ
 床 バーチフローリング
 壁・天井 PB寒冷紗パテ処理の上、クロス貼り

工程

設計期間 2011年 6月~2012年11月
工事期間 2011年12月~2012年 5月

撮影

土居麻紀子(表紙 ③④⑥⑦⑨⑩⑪⑫⑬)
細矢仁(②⑧)
建主Yさん(①⑤)

A-A'断面図
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B-B'断面図
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2階平面
クリックで拡大
1階平面 縮尺1/200
クリックで拡大

河内真菜

[東京都豊島区]

1974年福島県生まれ/1998年日本女子大学家政学部住居学科卒業/2000年日本女子大学家政学研究住居学専攻修士課程修了後、株式会社陶器二三雄建築研究所に勤務/2004年河内建築設計事務所 パートナー/2010年一級建築士事務所アトリエマナ設立

登り屋根の家
 
 初めてY様にお会いしたとき、精密な図面とカラー見本帳、そして手書きの美しいスケッチをお持ちになり、これはまた同業者なのかしら? と驚きを持ちながらお話させて頂いたことを覚えている。実はフリーのグラフィックデザイナーをしていらっしゃるとのこと。そんなことから始まった家造りであるが、多趣味でデザインのご理解も深いこころ豊かなお人柄で、とても楽しく住まい造りをさせて頂いた。
 この住宅は、横浜市街の閑静な住宅地に位置する。周りを見渡せば、古くからの住宅や神社などが立ち並ぶ緩やかな起伏状の敷地である。
 Y様は60代を迎え、親の代から暮らすその土地に根ざした生活を大切にされ、思い出深いその場所でご趣味のガーデニングや絵画をたしなみながら、別荘のような暮らしを希望されていた。外観は、洋瓦を用い、落ち着いた雰囲気ある西洋デザインをご希望だった。
 また、既存の柿の木をとても大切にされ、毎年秋に収穫する実りを楽しみにしていらっしゃる。そこで、趣味のガーデニングを楽しめるよう建物は北に寄せ、広い南庭を確保した。
 当初プランは、明確に区分された2階建てを希望されていたが、もともと平屋に慣れ親しまれており、今後を考え大屋根によって住まい全体を包む、一見平屋のような一体感ある2階建てとした。そして、その大屋根が、暮らしも含めて内部と外部の住環境を大きく包み込むような存在として機能させることを試みた。
 1階は、リビングや寝室などの主室をメインに配置し、そこだけで生活が成り立つように配慮した。建物の中央に配置された中庭型のエントランスは、単調になりがちな居室同士の動線に、光や風を取り込みながら多彩なシークエンスをもたらす仕掛けとして機能している。
 2階は、アトリエと和室からなる。勾配形状の吹き抜けの延長線上に2階の居室を設けることで、広がりや奥行きを感じながら、同時に、気配や繋がりなどをもたらし、家全体が自身のテリトリーとして体感できるような安心感のある住まいを実現した。
 この大屋根は、住まいの様々な部分をつなげ、営みを支え、またそこに、大きな洋瓦の彩りを加えることで、生活に明るさと暖かみを生み、暮らしそのものを包み込むような存在となる。

ASJみなとみらいスタジオ

[株式会社タツミプランニング]

スタジオマネージャー:岡野治雄
 Y様は一生のうち最初で最後の家づくりということで、イベントに来られた時から、熱い情熱をお持ちでした。イベント会場では全ての先生の話を聞き、その中でも、河内先生の思想や作風に共感を最も持たれて、プランニングコースへと進まれました。Y様自身でも明快なコンセプトをお持ちで、ヒアリングの時点からその思いが伝わってまいりました。
 こういった思いや理想を受けてのファーストプレゼンでは、シンプルながらも迫力のあるプランを河内先生からご提案いただき、Y様も非常に感銘を受けていらっしゃいました。
 設計中は、常に和やかな雰囲気で進み、ショールームなどにも1日かけてご一緒させていただくこともありました。当スタジオとしてもASJの1号物件でもあったため、工事着工が非常に楽しみでもありました。
 工事着工後は、Y様も近くに仮住まいなさっていたため、現場確認にも迅速に対応していただき、スムーズに工事を進めることができました。河内先生にも、週一回の定例での現場確認では、細部にわたっての適切な指示をいただき、設計コンセプト通りの仕上がりになったのでは思っております。
 また、Y様自身で、今回のお家にマッチする家具探しに多くの時間を費やされたため、引っ越し後、お部屋を拝見した時には、思わず「かっこいー」と叫んでしまう程でした。
 今後も、Y様とは良いお付き合いをさせていただき、いつまでも変わらぬ住み心地が保てるよう、我々スタジオもサポートしていきたいと思います。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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