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ASJ Works Close-up

リタイア後の夢を実現自然の中で薪ストーブのある暮らし

山口県下関市

椿原の家

設計 村田雅子/da.planning
施工 ASJ八幡スタジオ[株式会社松尾組]

屋上のバルコニーでビールを片手にくつろぐT さん夫妻。

周囲の環境とも調和する木をふんだんに使った外観。広々とした庭には奥様のオーダーで水場も備えている。①

 以前は福岡県北九州市で先生をしていたTさん夫妻。リタイア後の住まいとして選んだ場所は山口県下関市の静かな山間地だった。遠くに美しい山並みが眺められ、家の表には梅林、裏にはみかん畑が広がっている。コツコツと買い集めた家具やファブリックで室内を飾り、リビングのストーブでは山から集めた薪がパチパチと燃えている。趣味のアトリエも備えたこの家は、多くの人が夢見るリタイア後の暮らしをそのまま実現している。
 Tさん夫妻が土地を購入したのは約九年前。「退職したら緑の多い田舎で暮らしたい」と考えていたので、知人から紹介されたこの場所を一目で気に入ったそうだ。「でも当時は三人の子どもを育て、共働きで教師の仕事をこなす毎日。退職後の暮らしを考える余裕はまったくありませんでした」とお二人。
 そんな時、たまたま目にしたのがASJの広告。「会場も近くだし、ちょっと行ってみようか」と、軽い気持ちで出かけたことから夢の実現へ向けて動き出す。実は、最初から
スムーズに話が進んだわけではなかった。最初の建築家とは話が噛み合わず、建築家の変更を申し出たところ、スタジオから紹介されたのが村田雅子さんだ。
 木をふんだんに使った「和モダン」の家を希望していたTさん夫妻と、木の建築を得意とする村田さん。出会いからフィーリングはぴったりと合ったようだ。奥様は「村田さんのホームページの作品を見て、まさにこういう感じ! と思いました」と興奮気味に話す。
 Tさん夫妻からは「エアコンが好きではないので光と風が通る家に」「買い集めた家具が置けるように」「寝室とは別に夫婦それぞれの趣味の部屋がほしい」「水のある庭にしたい」など、たくさんの要望が出された。それを整理して出来上がったプランは、ほぼパーフェクトの仕上がり。「それまで自分たちの中に具体的なイメージはなかったけど、模型が出てきた時に『これだ!』と思いました」とご夫妻。最初の提案から大きな変更はほとんどなかったという。

ご主人の隠れ家へと続く箱階段。②
障子を閉めると柔らかな光が差し込む。③
古道具店で見つけた蔵の扉を玄関に使用。④
憧れだった薪ストーブの周囲を飾るのは奥様の趣味のファブリック。⑤
リビングの片隅にはプレゼン時の村田さんの模型が今も飾ってある。⑥

 村田さんは建物のプランはもちろん、周囲の環境との調和にも心を配っている。例えばリビングのテーブルに座ると、窓から向かいの山の稜線がきれいに見渡せる。イチョウや梅の木も目の前にあり、ここに座って季節の移ろいを感じることができるのだ。「子どもが独立した後の夫婦二人だけの家。ゆっくり時間を感じてもらえるように配慮しました」と村田さん。
 ご主人のお気に入りは屋根裏の「隠れ家」。まるでジャングルジムのような箱階段を昇ると、子どもの頃に空想した秘密基地のような空間が。ご主人はここでアマチュア無線やパソコンを楽しんでいる。「隠れ家」から出られる屋上のテラスも眺めが素晴らしい。一方、奥様のお気に入りは家の外観。「外出から戻って来て、煙突のある屋根が見えると『我が家に帰って来た』と実感するんです」。
 山に入って薪を集めたり、畑仕事をしたりと忙しいご主人。奥様も毎朝ポケットにハサミを入れて野山を歩き、気に入った野の花を摘んで飾る。鳥や虫の声に耳を傾け、夜には満天の星空を楽しむ。漠然と思い描いていたリタイア後の暮らしを、Tさん夫妻はこの家でしっかりと現実のものとしている。
(取材/湯浅玲子)

ロッジ風の薪ストーブのあるリビング。気候のいい時期は庭に続く大きな窓を開け放して生活する。⑦

玄関をはさんで趣味と住まいのエリアを分離。⑧
リビング脇には畳の和室も備える。⑨
趣味のアトリエには明るい光が降り注ぐ。⑩
箱階段を昇ったご主人の隠れ家。床や壁は白木素材をそのまま貼り合わせている。⑪⑫
奥様のアトリエ。奥に見えるミシンはお母様の形見。⑬
建築家の村田さんを囲んで楽しいひととき。⑭
周囲には豊かな自然環境が残されている。⑮

■椿原の家

所在地

山口県下関市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦

設計

設計者 村田雅子/da.planning
構造  ark 担当 前田均

施工

ASJ八幡スタジオ[株式会社松尾組]

構造・構法・規模

木造在来工法
地上1階 
軒高 6,110mm 最高の高さ 6,450mm
敷地面積 851.57m2
建築面積 133.06m2(建蔽率15.62% 許容70%)
延床面積 111.79m2(容積率13.12% 許容200%)
 1階  111.79m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板 竪ハゼ葺
外壁 ムニンガ縦張 無塗装
開口部 アルミペアガラスサッシュ
外構 山部分:ヒメ龍 数種類のモミジ 敷石周辺 砂利敷

主な内部仕上げ

玄関・LDK
 床 ムニンガフローリング 厚15mm
 壁 土佐漆喰塗 灰桜色
天井 クロス貼り
アトリエ
 床 ムニンガフローリング 厚15mm
 壁 土佐漆喰塗
 天井 クロス貼り
小屋裏
 床・壁・天井 針葉樹合板
畳ルーム
 床 琉球畳
 壁 土佐漆喰塗 ワラ入り
 天井 和紙クロス貼り

工程

設計期間 2010年11月~2011年12月
工事期間 2012年 2月~2012年 7月

撮影

高橋哲也(表紙 ④⑤⑥⑪⑫⑬⑭)
野村和慎(①②③⑦⑧⑨⑩⑮)

断面図
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小屋裏平面
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1階平面 縮尺1/200
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村田雅子

[山口県宇部市]

1967年 新潟県生まれ/1990年東海大学工学部建築学科卒業後、株式会社314設計に勤務/1992年株式会社一色建築設計事務所入社/1997年山口情報ビジネス専門学校建築材料講師/2000年 da.planning設立

椿原の家
 
 かつては学校があったこの土地は360度山の稜線が美しく広がり、自然の豊かさを改めて感じることができる。
 その恵まれた環境の下、退職されるご夫婦が住みなれた街からすべての環境を変え移り住まれる。これまでの忙しい毎日からこの土地での暮らしは全く真逆な変化となる。
 四季折々の木々や花が美しく、表情を変える雲の流れ、遮られない暖かい光を感じ、穏やかな生活を営むことができる住まいを設計したいと思った。
 南からの長いアプローチの先にエントランスがある。そこで住まいエリアと趣味エリアに二分している。趣味エリアの1階は夫人のアトリエ。お母様の形見のミシンや黒電話などを据え、道具収納スペースには数々の品が収納されている。
 その上の小屋裏はご主人の隠れ家と呼び、箱階段で上がって行く。エントランスポーチ上部のバルコニーへ出ることができる。隠れ家ではビールをいただく、とご希望があったため、折角ならば山々を見ながらはいかがであろうかと提案した。
 住まいエリアの中央には石貼りのストーブがあり、冬は火のある生活を楽しむことができる。LDKをワンルームとしその横に畳スペース、ファイアープレイスを配置した。二人の生活を重視し、色々なシーンを持つ空間はある意味とても贅沢なことであると思う。家の中からの視線は様々な緑色が目に入り趣味エリアの角度を振ることで東側のイチョウの木を視線のなか取り込めた。
 まきを割り、畑を耕し、野鳥に餌をそえる。朝からお忙しいようだ。歳を重ねれば便利な方に行く、しかしご夫婦が選んだ生活は手間のかかる日常であり、不便な立地。そこには魅力があり底知れぬ包容力を感じる。住まいは人が住み色づくものであることを実感できた気がする。
12~13ページ「建築家のOff Time」で村田雅子さんをご紹介しています。
あわせてご覧ください。

ASJ八幡スタジオ

[株式会社松尾組]

スタジオマネージャー:吉村栄文
 T様ご夫妻との出会いは八幡スタジオのイベント「第14回建築家展」にご来場ご入会いただいたときです。その時のお二人の印象はすごくまっすぐな方で家に対する思いが強いと感じました。
 数名の建築家の中から村田先生を選択されプランニングコースをスタートし、プランも直ぐ気に入っていただき設計契約…のはずが、土地の件で大問題が発生しました。土地の契約書には接道があるのですが役所に協議に行くと接道していない、との回答でした。それから村田先生を中心にT様ご夫妻、私と三者で市役所と協議し、なんとか建てたいという意思を伝えました。市役所の各担当者の方にも非常に努力していただきなんとかOKを頂き、施工できるようになりました。
 いよいよ設計契約をして実施設計スタート。
 奥様やご主人の思いをプランに入れて利用したい材料の選定、建主様支給材料の確認等スムーズに進んで行きました。T様ご夫妻は玄関扉を古民家の会社から購入して村田先生ご紹介の建具屋さんに持っていき塗装してもらうのですが、なんと塗装前の下地処理を数日間泊まり込み、しかもお二人で作業したようです。その時さらにT様ご夫妻の気合いと思いを感じたような気がします。
 実施設計完了時も気づいてみればプランニングコースで提出したものがそのまま形になる、私にとっては初経験です。工事に入ってもお忙しい中、現場に足を運んでいただき、確認作業、打ち合わせをしていただきました。そのおかげで現場もスムーズに進んでほとんど手戻りがありませんでした。
 建主様による検査の時もスタジオスタッフ、協力業者一人一人に「ありがとうございました」とお言葉を頂きました。本当にT様ご夫妻に喜んでいただいて担当者としては一番うれしいお言葉でした。また今年の正月にも年賀状を頂き、文面には「吉村さん、夢がかたちになりました。ありがとうございました」と書いてありました。工事用シートにも書いております住宅事業部の目標『夢をかたちに』が、建主、建築家、工務店がひとつになり実現できたと思います。
 Tご夫妻様、これからも永いお付き合いになると思いますが今後共末永く宜しくお願い致します。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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