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ASJ Works Close-up

建主と建築家の情熱が生んだ笑顔があふれる家

高知県南国市

なごみのいえ

設計 山下智徳/建築生活空間研究企画室
施工 ASJ高知スタジオ[株式会社響建設]

 「 気が付けば、家族全員がリビングに集まって、笑っています。離れがたい場所です」と話すTさん。

四方を畑に囲まれたTさん邸。視線を遮る物はなく、パノラマに広がる風景が楽しめる。①

 高知龍馬空港で知られる高知県南国市は、土佐の稲作発祥の地とされ、早場米の米どころである。見渡す限りの田畑に囲まれたTさん宅が完成したのは、今年一月。青い空と緑の大地に、和モダンの建物が映える。
 「理想の棲家を得た、という満足感でいっぱいなのですが、実はすんなりとここまできたわけではないのですよ。情熱が不可能を可能にした、と言うべき産物です」と話すTさんが、家さがしを始めたのは、竣工の三年前。家族が増え、賃貸の住まいが手狭になってきたからだ。しかし、Tさんが多忙なこともあり、主に奥様が、幼い二人の子供を連れて住宅展示場やオープンハウスをいくつも巡った。中古物件も見て回ったが、決められないまま、月日が流れた。
 第三子を妊娠し「どうして納得できる家が見つからないのだろう」と焦った奥様が、ちょうど開かれていたASJ高知スタジオ主催の「建築家展」に訪れ、そこで建築家の山下氏に出会った。「『私が設計した家が近くにあり、公開しています。ご覧になりませんか』と誘っていただいたのです。その家がとても開放的で、こんな環境で子供を育てたいな、と思い、話していくうちに実家の土地の話題になって…」。
 その土地こそが、現在、Tさん宅が建っている場所。奥様のご実家が所有する畑だった。ただ、その畑は市街化調整区域で、かつ農業振興地域内にあった。以前、周囲に相談したときは、いずれも「専用住宅の建築は無理」と言われ、半ば諦めていた。しかし、意外にも山下氏からは「いや、可能かもしれません。調べてみます」という言葉が、すぐに返ってきた。山下氏は、市役所の相談窓口に足繁く通うなどして、許可が受けられる方法を探した。

玄関を入ってすぐに広がる吹き抜けの大空間。2 階の部屋は大きな窓によってLDK と
一体化している。②
1 階からも主寝室からも子供たちの気配を感じるように工夫されている。⑥の窓から下をのぞくとこのような感じに。③

南北に延びる玄関アプローチと、車2 台がゆったりと駐車できるガレージ。手前のスペースは子供たちの格好の遊び場に。④

 「あのとき、妻がASJの建築家展に行かなければ、諦めたままだったでしょう。情熱を持ち、親身になってくれる山下さんに巡り会えたからこそ、夢が実現できました」とTさん。傍らで山下氏は「膨大な申請書類を用意せねばならず、双方の両親の承諾や理解も必要でした。情熱を持って頑張ったのは、お二人のほうです。特に奥さんのファイトは凄かった」と笑いながら話す。
 苦労はここまでで、プランニングから竣工までは、とてもスムーズに進んだ。「広く、のびのび、ゆったりと暮らしたい」というTさんの希望は、二五畳分の広さと五mの吹き抜けを持つLDKで実現。「どこに居ても家族の気配を感じていたい」という思いを反映して、吹き抜け部分に張り出す二階の四畳半と六畳の子供部屋には、開放的な大きな窓が付けられた。
 また、玄関を入ってすぐのホールからは、クローゼットを通ってランドリーコーナーへ続く動線が確保され、衣服はクローゼットで着替え、その手で洗濯機に入れることができる。そして、キッチンは、ランドリーコーナーと物干しスペースの近くに配され、子供用のワークスペースを併設。家事と育児が楽しく両立できるような間取りになっている。
 「同じ年頃の子供を持つ山下さんならではの工夫ですね」と奥様。
 新居では、以前は限られていた、親戚や友人と過ごす時間が増えたという。のびやかな住まいでの家族五人の歴史は、始まったばかりだ。(取材/澤 有紗)

リビング横の和室。普段はフルオープンの引き戸を全開にしてリビングの一部として使用している。⑤

主寝室から階段を挟んで向かいの子供部屋を眺める。⑥
キッチンの隅に設けられた子供用のワークスペース。「家事をしながら子供たちと触れ合うことができて、嬉しい」という奥様のお気に入り。奥の扉が物干しスペースに続く。⑦
和室の床下は引き出し式の収納スペースに。小さな子供用のステップが用意されているのは同年代の子供を持つ山下さんならでは。⑧
2 階の天井付近につけられた小窓は電動式。リビングに居ながらにしてリモコンで操作できる。⑨
リビングと和室に挟まれるように配されたデッキは、もうひとつの家族だんらんの場だ。中央の黒いシャツの男性が山下さん。⑩
庭は時間をかけ、子供たちと一緒に、少しずつ整えていくそうだ。⑪
夜の灯りは暗闇に浮き上がり、ひときわ輝いて、あたたかく迎えてくれる。格子からもれる光が美しい。⑫

■なごみのいえ

所在地

高知県南国市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供3人

設計

山下智徳/建築生活空間研究企画室

施工

ASJ高知スタジオ[株式会社響建設]

構造・構法・規模

木造軸組工法
地上2階 
軒高 6,872mm 最高の高さ 7,135mm
敷地面積 373.29m2
建築面積 133.49m2(建蔽率35.77% 許容 70%)
延床面積 164.75m2(容積率35.31% 許容200%)
 1階  120.87m2
 2階   43.88m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板タテハゼ葺き
外壁 窯業系大判サイディングの上吹付け
開口部 アルミサッシュ
外構 コンクリート洗い出し、豆砂利洗い出し、
   杉板型枠コンクリート打放し

主な内部仕上げ

LDK
 床 無垢フローリング(杉上小)
 壁 クロス貼り
 天井 クロス貼り(一部、化粧梁見出し)
和室
 床 縁無しタタミ
 壁 クロス貼り
 天井 クロス貼り(一部、化粧梁見出し)
主寝室、子供室
 床 無垢フローリング(杉上小)
 壁 クロス貼り
 天井 杉板貼り(特一)

工程

設計期間 2011年9月~2012年8月
工事期間 2012年8月~2013年1月

撮影

水野真澄(表紙 ②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪)
野村和慎(①⑫)

2階平面
クリックで拡大
1階平面 縮尺1/200
クリックで拡大

山下智徳

[高知県高知市]

1978 年高知県生まれ/ 1998 年学校法人龍馬
学園国際デザインカレッジ建築デザイン科卒業
後、1998 年地元設計事務所に勤務/ 2002 年
建築生活空間研究企画室設立

なごみのいえ
 
 高知龍馬空港の近く南国市の市街化調整区域内で、且つ農業振興地域という専用住宅が建築困難な場所での設計依頼を2011 年の秋に受け、様々な申請をT さんご家族と共に乗り越えて、ようやく「なごみのいえ」が完成した。
 T さんの〝広く伸び伸びと暮らしたい〟との一言から始まった家づくり。
 周辺環境は田畑があり、周囲に遮るものもなく自然豊かな環境のなかで、東西に安定した落ち着きのある和モダンでぬくもりのある住宅を提案。
 家族がどこに居ても気配を感じ、会話が生まれる空間構成をテーマに、上下階の吹き抜けに面して子供室を設けることでコミュニケーションが図れると共に階段を介し子供達の成長を客観的に見ることができるように主寝室から子供室に向けて開口部を設けた。
 T さんご夫婦と同じ年頃の子供をもつ親として、キッチンを家の中心に設けることで、1 階の回遊性と家事動線に配慮。まだ幼い子供達に目配りができること、リビングダイニングから切り取られた空を望むことができる気持ちのいい開放感のある空間が生まれた。

ASJ 高知スタジオ

[ASJ 高知スタジオ]

スタジオマネージャー:中平博之
 T様には約2 年前の「建築家展」にてアカデミー会員への登録をいただき、土地探しからサポートさせていただきました。
 建築家はイベントや個別相談等を経て、山下先生ですすめることとなり。土地探しの際も一緒に現地で相談したり、色々と協力をいただきました。
 FP(ファイナンシャルプランナー)とのライフプランや、ご予算計画書等で、土地、建物のコストバランスを検討してから土地探しをスタートしたのですが、なかなか想いの場所がみつからず、いろいろ検討された結果、ご実家の田畑で計画を進める方向となりました。
 ただし、こちらの場所は、農振除外、12 条申請など、様々な条件をクリアする必要がありましたが、山下先生のもと申請業務が進み、2013 年1 月に無事に建物も完成、引き渡しすることができました。
 プランづくりにおきましても、T様は専門誌などでよく勉強され、印象も持っていらっしゃいましたのでスムーズに進むことができました。
 「明るく、家族のつながりが感じ取れる、帰って来たくなる家」 そんな印象を受けましたが、T様、ご家族の皆様はどのような印象を持たれたのか?またの機会に聞いてみたいものです。
 本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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