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ASJ Works Close-up

開放感とプライバシーを両立した中庭を囲む気持ちの良い家

静岡県浜松市

二つの中庭のある家

設計 窪江進次/窪江建築設計事務所
施工 ASJ浜松スタジオ[株式会社マブチ工業]

建物の白い壁に、ガレージドアや窓パネルの木材、中庭の壁のコンクリートが外観にリズムを与える。敷地の東側は広大な駐車場だ。①

 住宅は住む人のためのもの。この家は、そんな当たり前のことを改めて実感させてくれる住宅だ。
 建主であるHさんご夫妻が、家作りのパートナーに選んだのは、建築家の窪江進次さん。その理由をHさんに問うと、「イベントでお話させていただいた際に、私たちの生活を深くまで理解しようとしてくださったからです」との答えが返ってきた。実は、奥様の勤め先はASJ浜松スタジオ。窪江さんをはじめ、多くの建築家と仕事を通じて接点があったのだが、奥様はあえてHさんにイベントで複数の建築家と話をしてもらい、フラットな視点で決めたのだそう。奥様の仕事上、さぞかし細かな希望を出されたのだろうと思いきや、意外にもオーダーはとてもシンプル。「バイク用のガレージが欲しい」「キッチンとリビングを分けたい」の二つだけだったという。
 「あとは、ほぼ窪江さんから最初にいただいたプランの通りです。中庭も、窪江さんのアイデアなんですよ。子どもを安心して遊ばせられる芝生の中庭と、北に位置する寝室に光をもたらしてくれるパティオ。二つも中庭があると床面積が減ってしまうのですが、費用を考えると、それも私たちにとっては好都合でした。とはいえ共働きなので、なるべく手のかからない庭である必要がありました。そういった事情も、窪江さんはよく理解してくださっていて、私たちの生活が上手くプランに落とし込まれていたんです。さらには、ガレージを設計するための参考にと、主人の趣味であるバイクのレースにも、わざわざ来てくださったんですよ!」。

二つの中庭に挟まれたリビングは、光がふんだんに降り注ぎ、明るく開放的な雰囲気。窓を開け放てば寛ぎの空間が、さらに広がる。②

ガレージから、突き当たりの寝室までを見通せる西側の廊下。右手には芝生の中庭。左手は子供部屋二つ、ダイニングキッチン、バスルームが並ぶ。③
リビングの隣に位置するダイニングキッチン。リビングとの仕切りとなる壁は収納も兼ねており、冷蔵庫や調理家電などが収まっている。④

Hさんの趣味はエンデューロと呼ばれる、バイクの耐久レース。バイク三台を保管でき、整備が行えるスペースが必要だったのだ。実際にレースを見て、どんなバイクなのか、ガレージには何が求められるのかを掴もうとする姿勢に、窪江さんの、作り手としての熱意が感じられる。
 このガレージと隣り合うエントランスのドアを開けると、リビング、子供部屋、ガレージに囲まれた芝生の中庭が迎えてくれ、壁側のアプローチを進むと玄関へ導かれる。そこから左に進むと二つの中庭に挟まれた広々としたリビング。そのまま進むと、パティオに面した和室があり、その先が寝室。そして、バスルームの向こうはダイニングキッチンである。リビングとは隣り合っているのだが、あえて仕切りを設けて空間を区切ることで、家族の寛ぎの場所を、雑然としてしまいがちなキッチンと切り離している。その先は中庭に面して二つの子供部屋が並び、行き止まりはバイクのガレージ。そう、この家は中庭を囲んで、一周できる間取りになっているのだ。
 リビングと芝生の中庭の間にはウッドデッキがあり、窓を開け放つと中と外がゆるやかにつながる。冷たい〝遠州のからっ風〞が吹く冬も、比較的温かな中庭で、子どもたちは元気に遊んでいるということだ。
 「この家のすべてを気に入っていますが、一番好きなのは、やっぱり中庭の気持ち良さでしょうか。春には親戚を呼んでバーベキューをしたんですよ。敷地の東半分が駐車場なのも、明るくて居心地の良い和室も、私の兄弟が遊びに来たり、遠方に住む主人の両親が泊まったりすることを考えてのことなんです」と奥様。
 どんな人が住むのか、どのような暮らし方をするのか。住む人のことを深く深く理解し、寄り添うように設計された住宅。これこそ、建築家とともに家を作ることの醍醐味ではないだろうか。この家には窪江さんの思いが、そこかしこに溢れていた。
(取材/吉田桂)

リビング、子供部屋、ガレージに囲まれた芝生の中庭。右手のアプローチで玄関とエントランスを行き来するような設計になっている。⑤

リビングと芝生の中庭、その間にあるウッドデッキは、子どもたちの安全な遊び場。⑦
リビングと芝生の中庭、その間にあるウッドデッキは、子どもたちの安全な遊び場。⑦
リビングには、Hさんのミニカーとレースのトロフィーが飾られている。⑧
白を基調とした清潔感あふれるバスルーム。扉の向こうには洗濯物を干せるスペースが用意されている。⑨
休日のHさんは、子どもたちが遊ぶ中庭に面したガレージでバイクをメンテナンスしている。⑩
バイク三台のほか、洗濯機、工具入れなどが置かれている。ロフトにはタイヤなどを収納。⑪
寝室、和室、リビングに光をもたらすパティオ。⑫

■二つの中庭のある家

所在地

静岡県浜松市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供2人

設計

窪江進次/窪江建築設計事務所
 担当 大澤由紀子

施工

ASJ浜松スタジオ[株式会社マブチ工業]
 担当 村松克彦

構造・構法・規模

木造
地上1階 
軒高 3,300mm 最高の高さ 5,240mm
敷地面積 394.74m2
建築面積 168.31m2(建蔽率42.64% 許容 60%)
延床面積 161.88m2(容積率37.53% 許容200%)
 1階  161.88m2

主な外部仕上げ

屋根 シート防水
外壁 サイディングボード下地ジョリパット塗り
開口部 アルミサッシュ、木製建具
外構 芝、コンクリート金コテ、セランガンバツ

主な内部仕上げ

リビング
 床 ホワイトオークt=15貼
 壁 クロス貼り
 天井 杉縁甲板t=12貼
ダイニング、子供室
 床 ホワイトオークt=15貼
 壁・天井 クロス貼り
寝室
 床 キリt=15
 壁・天井 クロス貼り
ガレージ
 床 コンクリート金コテ
 壁 杉縁甲板t=12貼
天井 構造用合板t=12

工程

設計期間 2011年8月~2012年2月
工事期間 2012年3月~2012年9月

撮影

土居麻紀子(表紙 ②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑪)
中村絵(①⑩⑫)

立面図
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断面図
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1階平面 縮尺1/200
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窪江進次

[岐阜県岐阜市]

1951年岐阜県生まれ/1976年建築計画研究所J共同設立/1979年窪江進次建築設計事務所設立/1987年株式会社窪江建築設計事務所に改組/2013年10月永眠

二つの中庭のある家
 
 南北に長い敷地にこの建物は計画されている。交通量の非常に多い東側道路は小さな子供のいる家族にとって非常に危険であったため、6m程建物をセットバックさせて計画した。
 また市街化が予想されるため、将来建つであろう建物に対してプライバシーを確保するため、生活をゆるやかに囲い込む中庭型の建ち方を選択し、安全でゆとりをもって暮らせるよう設計した。
 バイクが趣味のご主人の過ごす「ガレージ棟」と、家族のくつろぎの空間となる「リビング」との間には、芝を張ったコートを配置し、「寝室」や「水回り」といったプライベートな居室はやや硬質なパティオによって向かい合う。二種類の中庭を通し、家族がそれぞれの過ごし方をしながらも互いに気配を感じられる大らかな空間を作った。
 クライアントからの唯一の要望は「リビングとキッチンを分けてほしい」というもので、必然的にごちゃごちゃとしてしまう普段の生活空間と、ゆったりとくつろぐための空間を明確に切り替えられるプランとした。多忙な奥様の生活を考えれば、非常に理にかなったものであったと思う。

ASJ浜松スタジオ

[株式会社マブチ工業]

クライアントパートナー:村松克彦
 窪江進次先生とH様家族とのお付き合いはすでに数年経っていました。
家族のライフスタイル・趣味嗜好・現在未来を見据えた設計をする窪江先生とH様とは、いわゆる“相思相愛”の関係とも言える程でした。
 その両者の間に施工者として立った私たちに課せられたのは『夢のマイホーム』を形にすること。それは難しいようでしたが至ってスムーズに、迷うことなく進んでいったのです。
 そしてこんなにすばらしい家ができたのも設計者の的確な判断力と指導力に依るものが大きかったと思います。加えて、お互いの信頼感から生じた“楽しむ家づくり”が実行されたからなのかもしれません。
 最後に、建築家としての仕事を貫き続けた窪江進次先生に敬意の意を表すると共に心からのご冥福をお祈りいたします。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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