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ASJ Works Close-up

趣味も家事も団らんもすべてに適った二世帯住宅

東京都北区

音楽と共にある家

設計 坪井当貴建築設計事務所
施工 ASJ東京北スタジオ[株式会社オオバ工務店]

公園に面する西側からの外観。無垢材のルーバーが目隠しの役割を担っている。①

 東西両側が道路に面しており、西側に緑豊かな公園がある敷地。ここに約六〇年ものあいだ建っていたCさんのご実家が、新しく生まれ変わった。
 「以前の家は、瓦屋根に土壁の典型的な日本建築でした。南北は隣家に挟まれているので北側には窓がなく、そのため室内は暗く、風通しも良くなかったんです。さらには東日本大震災で土壁が崩れてきてしまって。いよいよ住み続けるのは難しいということで、僕の結婚を機に建て替えを決意したんです」とCさん。
 ハウスメーカーではなく、建築家と相談しながらじっくりと家づくりを進めたいと考えていたところ、奥様が通勤途中にASJのイベント告知広告を発見。情報収集を兼ねてと、ご夫妻で参加することになった。その結果、計三回のイベントで多くの建築家と話したなかでも、坪井当貴さんの家づくりの考えに共感し、依頼を決めたのだそうだ。坪井さんは、北欧建築に造詣が深く、自然と調和する家を目指す建築家である。
 そして誕生した二世帯住宅は、一階は東側に玄関を設けたご両親の生活スペース、二階は西側に玄関のあるCさんご夫妻のスペースに分けた完全分離型。一階の西側玄関の横には、オーケストラに所属するご夫妻のための防音室が設けられた。Cさんはパーカッション、奥様はフルートを担当されているそうで、土日に行われる演奏会や合同練習に向けて、仕事から帰宅したら、ここに籠って練習しているとのことだ。

大きな窓を介して中庭とつながる1階のリビング。無垢材のフローリングはバリアフリーと床暖房で住み心地も上々。②

車庫を兼ねた中庭には、乗用車2台分のスペースを確保。③
オーケストラに所属するご夫妻のための1階の防音室。棚にはCDや機材がギッシリ。④
東側の階段を上がってすぐにある家事室。お母様の趣味のための部屋でもある。⑤
東側の玄関はご両親専用。ベンチはご近所の方にも好評。⑥
階段には、肌当たりも優しい無垢材の手すりを設置。⑦
C さんご夫妻の生活スペースである2 階のリビング。明るく、開放感あふれる空間。⑧

 そんなご夫妻のスペースである二階は南側の窓から陽光が差し込む明るく開放的なつくり。見上げると、現しになった梁が、淡いトーンでまとめられた空間の程よいアクセントとなっている。
 「ドアを開け放てば、東から西までがひとつながりになるうえ、どの空間も開口部が二つ以上あるので、風が気持ち良く抜けるんです。西側には寝室があるんですが、ルーバーのおかげで、以前は暑くて辛かった西日も気になりません」とCさん。
 また、一階はバリアフリーにし、全面に床暖房を導入するなど、将来を見越して住み心地の良さを追求したつくりになっている。
 「蓄熱式床暖房のおかげで、底冷えを感じずに過ごせています。外から帰ってきて、家の中がほんのり温かいのは良いですね。私が気に入っているのは、玄関のベンチ。靴の脱ぎ履きのときだけでなく、回覧板を持って来たくださった方と、座っておしゃべりできるのが便利で。ご近所さんにも好評ですよ」とお母様。 さらには、東側の玄関すぐの階段を上がったところには家事室があり、お母様は洗濯物を干したり、趣味のろうけつ染めを楽しんだりしている。ここも、お気に入りの場所だ。
 生活スペースは一階と二階で分かれているとはいえ、一階の音楽室と二階の家事室のように程よく接する部分があったり、中庭を共有していたりと、家族の気配を感じることができる。また実際に、お互いの生活を完全に分断させず、ときには一階のリビングに集って家族団らんの時間を過ごすこともあるそうだ。この程よい距離感が、Cさんご家族にはちょうど良いのかもしれない。
 「新しい家なのに、何の違和感もなく住み始めることができました」とCさんが語るのは、家が家族にしっくり馴染んでいる証拠。家のデザインと周囲の景観、住まい手である家族と近隣住民、そして最も肝心な、家族と家。この二世帯住宅は、それらが見事なまでに調和し、まるで心地よい和音を奏でているようだ。(取材/吉田桂)

2階の梁は落ち着いたブラウンとし、空間に心地よいリズムを生み出している。⑨
ご両親の寝室。天井には温かみのあるアイボリーを採用。⑩
ご夫妻の寝室は和室。バルコニー越しに公園の緑が見える、清々しい空間。⑪
1階の洗面所は将来を見越して広めに設定。北側に位置するが、十分明るい。⑫
すべての部屋が中庭に面し、光と風を共有している。⑬
中庭を介して、家族がお互いの気配を感じられる。⑭

■音楽と共にある家

所在地

東京都北区

主要用途

二世帯住宅

家族構成

両親+夫婦

設計

坪井当貴建築設計事務所

施工

ASJ東京北スタジオ[株式会社オオバ工務店]

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階 
軒高 5,983mm 最高の高さ 7,350mm
敷地面積 211.29m2
建築面積 127.72m2(建蔽率59.97% 許容60%)
延床面積 218.38m2(容積率103.35% 許容150%)
 1階   123.08m2
 2階   112.82m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板たてひら葺き
外壁 ガルバリウム鋼板サイディング
開口部 アルミ樹脂複合サッシ 防音室2重サッシ
外構 外部格子・高耐久乾燥処理木材(エステックウッド)

主な内部仕上げ

1階LDK(親世帯)
 床 ナラフローリング自然塗装仕上げ
 壁 珪藻土塗り
 天井 AEP仕上げ
音楽室(1階)
 床 DAIKENプレミアム防音仕様+タイルカーペット
 壁 DAIKENプレミアム防音仕様+布クロス
 天井 DAIKENプレミアム防音仕様+布クロス
2階LDK(子世帯)
 床 カバフローリング自然塗装仕上げ
 壁 珪藻土塗り
 天井 構造材現し+垂木間ロックウール吸音板張り
和室(2階)
 床 畳敷き
 壁 珪藻土塗り
 天井 杉板張り

工程

設計期間 2012年 2月~2012年9月
工事期間 2012年10月~2013年4月

撮影

土居麻紀子(②④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫)
伊藤秀樹(表紙 ①③⑬⑭)

2階平面
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1階平面 縮尺1/200
クリックで拡大

坪井当貴

[東京都世田谷区]

1972年神奈川県生まれ/1995年青山製図専門学校建築設計科卒業/1996年青山製図専門学校研究科修了後、株式会社空間工作所に勤務/1999年大江建築アトリエ入所/2002年アーキショップ一級建築士事務所入所/2005年北欧諸国を中心にヨーロッパ8カ国を旅する/2006年坪井当貴建築設計事務所設立/2011年北欧建築・デザイン協会理事就任/2011年日本耐震防災事業団 耐震プランナー

音楽と共にある家
 
 東京北の緑豊かな公園に面する敷地、築50年を超える旧家を二世帯住宅に建て替えるご計画に関わらせていただくことになりました。建て主のご家族は長年教職に就かれていたご両親と、共にアマチュアオーケストラの団員である息子さんと奥様。お二人が所属する楽団の演奏会に伺ったこともありました。音楽を心から愉しまれるお二人を拝見しながら、これからお住まいになる家に流れる空気感のようなものを、あれこれ想像してみたものです。
 設計の初期段階で、ご両親の世帯の生活は1階に、子世帯の生活は2階に設けることが決まり、完全分離の二世帯住宅として設計をすすめることになりました。生活空間は上下で別れつつも、光や風を共有し、お互いの気配が自然と感じられることを願い、敷地の中心に中庭を設けるプランをご提案しました。
 1階はご両親の身体的な負担をできるだけ少ないものとするため、決して大げさにならないバリアフリーの備えをするとともに、長年この場所で生活されてきた「生活感」を失わないようなプランにすることを心がけました。若いご夫婦の休日は、定期演奏会に向けての練習などでお忙しく、自宅でも練習が行えるよう特殊防音を施した「音楽室」をつくりました。
 主な生活空間となる2階は、勾配天井の開放的な空間とし、屋根の構造材を室内に現しにすることで、空間に一定のリズム感を与え、「音楽のような空間」を表現したいと思いました。現しになった構造材の間には吸音板を張り、音の響きが心地よいものとなることにも注意を払っています。
 外観には、西日が室内に入ることを避け、隣地からの視線も遮るという機能面と、目の前の公園の緑に呼応する心理的な表現を両立するために、木製格子を主役にした外観としています。その家に暮らす建て主の個性が地域の「街並や景観」に寄与できるものになってくれたらとても嬉しく思います。

ASJ東京北スタジオ

[株式会社オオバ工務店]

スタジオマネージャー:山内耕
 C様との出会いは、2011年6月の当スタジオのオープニングイベントでした。ご夫婦で来場されアカデミー会員に入会して戴きました。そこから毎回のイベントにご来場いただき、その度に全ての建築家と熱心にお話をしておられました。
 3回目のイベントで「そろそろ始めましょうか」とお尋ねしたら、「そうですね、前回のイベントにいらした坪井先生でお願いします」との答えでした。当初よりハウスメーカーには頼む気持ちは無いとのことでしたので、ご両親を含め自分達にあった先生を選ばれたのかと思いました。
 2012年1月より行なった月1回程度の打ち合わせには、ご両親とご夫婦の4人でいつも一緒に出席されました。C様の要望は「二世帯住宅でお願いします」とのことだけだったと思います。
 坪井先生のヒアリングと提案で、回を重ねる度にどんどん具体的な要望が見えてきました。この家のコンセプトでもあるご夫婦の趣味のための音楽室やお母様の趣味のためのサンルーム、都内の厳しい条件の中でも日当たりの良くプライバシーに考慮されたリビングが生まれました。
 深夜に音楽室を利用することが多いそうですが、ご両親の部屋では音がまったく聞こえないそうです。
 また、当スタジオの本社が福島県にありますので、弊社の持つ寒冷地での断熱・暖房仕様の実績を生かし、深夜電力による土間蓄熱暖房を採用していただきました。先日、訪問させていただいた時は暖房を付け始めたところで、「快適に過ごしております」との言葉をいただきました。
 C様の家づくりを通して改めて建築家との家づくりの素晴らしさを実感させていただき感謝しております。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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