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ASJ Works Close-up

秘密基地が点在家のなかのツリーハウス

石川県白山市

白山の家

設計 藤原慎太郎・室喜夫/藤原・室建築設計事務所
施工 ASJ金沢スタジオ[株式会社明翫組]

大きな階段はツリーハウスの幹のよう。

階段を囲むように中二階にリビング(左)、二階にワークスペース(中)と子供部屋(右)などが配されている。①

憧れのツリーハウスが現実に

 横長の階段が天井に向かって一直線に伸びている。これを囲むように、リビングやダイニング、子供部屋やワークスペース、ロフトなどが少しずつ段差を設けながら配されている。
 いわゆる中二階などを持つスキップフロア、またの名をステップフロアという構造。「見通しがよく空間が広く感じられる」「収納スペースがとりやすい」といったことから、人気が続くスタイルだ。そんなスキップフロアにこだわったのは、建て主のOさん。とくに奥様だった。
 「フラットなLDKで暮らしていたころは、いろいろな家具や機器、雑貨などが一度に目に入ってきて、圧迫感がありました。だからといって仕切ってしまうと、各部屋が小さくなり、なにより家族との距離が広がってしまいます。そこで、スキップフロアに興味を持つようになったんです。段差があることで、視界に入る部屋は限られますから」。
 奥様は、こうした理由を含めてスキップフロアを希望することを、建築家の藤原慎太郎氏や室喜夫氏に伝えた。それ以外は、当時、二歳、八歳、十二歳の息子達が、楽しく過ごせる空間を、また、夫妻の趣味であるバイクの駐車スペースをといった、日ごろ抱いている思いを雑談のなかで話したくらい。
 「暮らしはじめてみると、藤原さんや室さんが、私達の言葉を、とても丁寧に拾ってくださったことがよくわかります。この家の構造も、私が幼いころに憧れていたツリーハウスにとてもよく似ているんですよ」。
 そんな話をしながら、奥様は一冊の絵本を見せてくださった。『おおきな きがほしい』という本には、木の幹の周りに部屋がつくられている。O様邸の階段は、そんなツリーハウスの大きな幹のよう。そして、それぞれの部屋は樹上につくられた秘密基地なのである。

西日や西風、外からの視線を遮りたいと西側に設けられた開口部は一ヵ所だけ。②

中二階にあるリビング。テレビを見るときはソファだけでなく階段に座ることも。③
このスペースは小学校高学年の次男くんの部屋。手前のハシゴを上ると中学生の長男くんのロフト。④
階段の上り口に面してつくられた開口部。屋内の窓を開けると風が吹き上がってくる。⑤

一つひとつつくりあげていく

 O様夫妻がASJの会員になられたのは、奥様のご実家近くに土地を得られたころで、一度、イベントに参加したASJ金沢スタジオの存在を思い出されてのことだった。その後、建築家のチェンジを経て、藤原&室コンビに夢を託すことになった。
 「最初にお願いした建築家の方は、設計費が少し予算オーバーで、契約を迷っていたところ、ASJ金沢スタジオさんが、『後悔しないように』と、藤原さん達に会わせてくださったのです。先生達の作品は、ASJの冊子などで知ったのですが、どれも発想が面白く、また、白を基調としながらもあたたかみがある雰囲気が印象に残っていました」。
 藤原・室建築設計事務所に設計を依頼してからは、家づくりはスムーズに進行した。Oさん家族の要望を順次反映させながら…。
 例えば、図面段階では、当初、ご主人の希望で書斎が設けられていたが、その後、ご主人のご両親が泊まられるときのためにと和室に変更。また、現地確認の際には、奥様のお母様の意見なども反映させながら、子供部屋の収納スペースを増やすといった対応がなされた。そのほか、開口部なども、少しずつ変更が加えられている。バイクを眺めるための浴室の窓や、階段の上り口前の扉は、視線を遮るために小さくなり、和室の入り口は、縁側のように座るために広くなった。
 「最高の住まいにと、ずいぶん柔軟に対応していただきました。ツリーハウスのように、一つひとつつくりあげていく、そんな手づくり感が味わえたこともいい思い出です」。
 壁についても、当初は、すべてツヤのないナチュラルな白色で検討していたが、ASJ金沢スタジオのアドバイスを参考に、キッチンの周囲だけは、汚れが落ちやすい光沢のあるものを選んだ。
 「デザイン性か機能性か…。そんな視点で部材選びをサポートしてくださった、スタジオさんには感謝しています」。

「冬はあたたかい二階のダイニングが、夏は涼しい階段がお気に入りの場所に」と奥様と実家のお母様。⑥

逆転の発想で短所を長所に

O様邸がある白山市は、北陸・石川県の南部に位置し、全国でも降雪量が多い地域。ところが、取材スタッフが訪ねると、二月だというのに子供達は裸足。奥様も薄着だった。
 「あたたかい空気は上にあがるといいますが、中二階や二階にいるとエアコン一台で十分。わが家の光熱費は多いときでも一万円台で、ご近所に驚かれています」。
 一方、夏のあいだは、階段の上り口の扉を開けると、西側からの海風が入ってきて、冷房がいらない日も多いという。
 「西側は風が強いので玄関はつくらないでくださいとお願いしました。でも、玄関とは別に開口部が設けられたのですが、それが正解。西風がこんなに心地よいとは…。先生達の逆転の発想ですね」。
 家のなかのツリーハウスでは、さわやかな風が通り抜けるなか、家族それぞれが、秘密基地のような部屋で、心地よい時間を過ごしている。
(取材/香川 泰子)

ご主人のご両親など宿泊客のためにと書斎は和室に変
更。⑦
「ワークスペースは子供達だけでなく、主人も『意外に集中できる』と気に入っています」とは奥様。⑧
1 階の階段裏のスペースにはバイクを駐車。O様夫妻はバイクの大型免許を所有。⑨
西側の開口部は冬の間は閉じたままだが夏には開放される。⑩
各部屋へのアクセスを考えて小階段もつくられている。⑪
各部屋の開口部は引き戸を開閉することができる。「戸を閉めることで冷暖房の効率がよくなります」とは奥様。⑫
中二階のリビングはまるで劇場のよう。次男くんが縄跳びを披露してくれることも。⑬

■白山の家

所在地

石川県白山市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供3人

設計

藤原慎太郎・室喜夫/藤原・室建築設計事務所
担当 室喜夫

施工

ASJ金沢スタジオ[株式会社明翫組]
担当 高田亜貴

構造・構法・規模

木造在来工法
地上 2階 
軒高 5,989mm 最高の高さ 7,715mm
敷地面積 198.43m2
建築面積  59.21m2(建蔽率 29.84% 許容 50%)
延床面積 114.28m2(容積率 57.60% 許容200%)
 1階   59.21m2
 2階   55.07m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板 立てはぜ葺き
外壁 無塗装大判サイディング AEP塗装
開口部 アルミサッシュ
外構 モルタル金コテ押仕上げ

主な内部仕上げ

リビング
 床 カバ無垢フローリング バトン塗装
 壁・天井 目地消し処理 AEP塗装
ダイニング・キッチン
 床 カバ無垢フローリング バトン塗装
 壁・天井 目地消し処理 AEP塗装
寝室
 床 ラワン合板 バトンクリア塗装
 壁・天井 クロス貼り
子供室
 床 カバ無垢フローリング バトン塗装
 壁・天井 目地消し処理 AEP塗装

工程

設計期間 2010年8月~2011年 5月
工事期間 2011年5月~2011年12月

撮影

水野真澄(表紙 ①③④⑤⑥⑦⑧⑨⑪⑫⑬)
矢野紀行(②⑩)
新谷篤一(⑭)

Y-Y'断面図
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X-X'断面図
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ロフト
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2階平面
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1階平面 縮尺1/200
クリックで拡大

藤原慎太郎

[大阪市天王寺区]

1974年大阪府生まれ/1996年近畿大学理工学部建築学科環境デザインコース卒業/1998年近畿大学大学院工学科建築科修了/2002年藤原・室建築設計事務所共同設立/2005年有限会社藤原・室建築設計事務所として法人化

室喜夫

1974年愛知県生まれ/1998年近畿大学理工学部建築学科環境デザインコース卒業/2002年藤原・室建築設計事務所共同設立/2005年有限会社藤原・室建築設計事務所として法人化

白山の家
 
 敷地は、同じような大きさに区画された住宅地。Oさんは、その土地にスキップフロアのある家を希望していました。
 スキップフロアの要望をもとに、階段もスキップフロアの一部のように考えて、階段としてだけでない使い方ができるよう大きめに提案しました。よく風の流れる方向に階段が建物を通り抜け、2階のバルコニーと繋がり、開放すると風が気持ちよく流れていきます。階段に座って過ごしていると夏の日でも快適に過ごすことができます。階段を上がっていくと、そのまま階段に紛れるようにテーブルが造り付けられていて、階段の一部に座るような様子となります。
 2階は、階段の周りを囲むように部屋があります。その部屋には、3人の子供のベッドが置いてあり、勉強や読書などをする長いデスクが、スキップフロアと階段越しにキッチンと対面する配置となっています。
 1階は、寝室と畳の部屋、また階段下を利用した土間があり自転車やバイクを置くことができます。そして土間と繋がる浴室があります。
 外観は、西日を遮る為に正面の開口部を制限しています。正面の木製で製作した両開き戸を開けると、階段の下部分に日が反射して内部に拡散して明るくなります。
 家を考えることは様々な可能性があることを知ってほしい。クライアントが素直に日々過ごすことにおいて喜びを感じることなどいろいろな話を聞かせていただくなかで、今までに無い家ができあがっていく楽しさを感じてほしいと思います。
 白山の家の敷地条件や、クライアントの要望それらに対しての提案内容は、これから家を建てたい人の少しは参考になるかも知れない。だけど、条件や人の過ごしかたはそれぞれ違う。本当になにをしたいのか話し合って、家について考えることだと思っています。

ASJ金沢スタジオ

[株式会社明翫組]

スタジオマネージャー:早川治夫
 O様がはじめて弊社のイベントに来られたのは2004年9月のことでした。その後、2009年1月にスタジオへ再び足を運んでいただき、ご入会いただきました。
 建築家選定の際には、O様自身でASJや建築家のサイト等を見て熱心に探しておられました。その中から気になった建築家のいる大阪へ、奥様と奥様のお母様とで出向き、実際にお話をされたり、作品を見た上で、藤原・室建築設計事務所へとお願いすることとなりました。若いご主人・奥様と、両建築家との感性はばっちり合って、プランニングは順調に進んでいきました。
 白山の家は、大きな階段があり、それを囲むように各部屋がスキップ状に繋がっています。その階段は階段としての機能はもちろんのこと、腰掛けたりすることで家族の憩いの空間にもなり、3人のお子様達にとっては、友達を招いて遊べる楽しい空間にもなっています。そして、一見閉鎖的な外観となっていますが、1階から2階まで伸びる階段の上下部に開口部を設けることによって、風通りの良い明るい空間となっています。
 “建築家との家づくり”の要素をたっぷり取り込んだ作品であるため、メディア等でも取り上げられ、その度に快くご対応いただいております。自分達だけの空間が結果として「思わず皆に見せたくなる家」となっていることは、スタジオとしても大変喜ばしく、そんなO様の家づくりに携われたことを嬉しく思っております。
 そして、これからどんどん家がO様に馴染んでいくのを見届けることができるのが楽しみでもあります。今後とも宜しくお願いいたします。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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