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ASJ Works Close-up

家族の個性を伸ばす家

岡山県岡山市

POPPO

設計 久成文人/EN.Architecture+Design
施工 ASJ岡山中央スタジオ[株式会社イチエ建匠]

玄関のドアの横には青色ガラス。日が差すと室内がブルーに染まる。

子供部屋からリビングを見下ろす。薪ストーブのやさしい熱がYさん一家を、そして大空間を包む。モルタルの床は思いのほかあたたかく、「掃除がラク」とは奥様。①

女子力がアップ!

三角屋根と突き出た煙突、そして白い壁……。ご近所では道案内の目印にもなっているという外観は、なんともメルヘンチックなカタチ。
家のなかにも絵本の世界が広がっていて、吹き抜けの大空間には薪ストーブのあるリビングや、山小屋のようにランプが下がるダイニング、カーテンだけで仕切られた子供部屋が、機能的に収まっている。さらに、採光にも心憎い演出が施されていて、階段の上や子供部屋のベッドの上に設けられた天窓からは、お日さまやお月さまがのぞき込む。
「トイレの照明も斬新ですよ」
建て主のYさんがおっしゃるとおり、その空間も月明かりが降り注ぐ森のなかのように神秘的だ。そんなトイレから出ると、迎えてくれるのが、ムーミンシリーズに登場するスナフキンの人形。
「アロマポットになっています。夫が買ってきてくれました。この家で暮らすようになり、夫の女子力がずいぶんアップしています(笑)」
奥様の言葉が、室内をいっそう魅力的に感じさせる。Yさんの女子力はいまや室内にとどまらず、庭の植栽にも向けられているそうだ。
そんなご夫妻や二人のお嬢さんが好きだというパノラマ状に広がる窓から田園風景を眺めていると、三角屋根の時計から鳩が飛び出してポッポ、ポッポと時間を知らせてくれた。Y氏邸に、建築家の久成文人氏が「POPPO」の名前をつけたのは、巣箱のなかで、親鳥が雛鳥を大切に育てる様子をイメージしてのことだという。

ワンルームの大空間にキノコが生えたように子供部屋が存在する。②
ダイニングから見たキッチン。モルタルの床では自転車などのメンテナンスも。③

「外との開口部は小さくしてほしいけれど家のなかは明るく」という要望に応えたデザイン。壁から突き出た照明や床から伸びたスイッチボックスも独創的。④

まずはWEB登録から

 それぞれが独身のころから建築やインテリアに興味をもっていたというYさん夫妻。結婚後は「家を建てるなら建築家に設計を依頼したい」と考え、住宅雑誌やWEBで情報を収集していたという。そんななか、目にとまったのがASJのサイトのおためし無料登録だった。メールアドレスなどを記入すれば、小誌が無料で見られるといったサービスは、ファーストステップとしては、とても手軽に感じたという。「多くの建築家の作品に触れることができたのは、自分たちの好みなどを絞っていくうえで、とても役に立ちました」
 こうしたなか、Yさん夫妻が心惹かれたのが、久成氏の作品だった。「箱を積み重ねたような構造が格好いいなと。そう思い始めたとき、ASJのイベントに久成さんが参加されることを知ったのです。建築家の事務所を直接訪ねるのは勇気がいりますが、イベントなら気軽だと、出かけました」
 実際に会って話してみて、久成氏の設計センスは、建築好きのYさん夫妻の期待に充分応えるものだった。イベント会場では他の建築家と会うことなく、アカデミー会員への入会へと話が進んだという。

ロフトタイプの子供部屋。星空を眺めながら眠り、朝日とともに目覚める。⑤

「バトル」の末に

 入会から4ケ月半が過ぎたころ、土地が見つかったのを機に、いよいよプランニングを始めることに。「私たちの希望を聞いて、久成さんが提案してくださったのが、三角屋根の構造でした。『あっ、ひらめいた!』と言ってね(笑)」
 奥様によると、ご夫妻が紙に書いて渡した要望は、「どこにいても家族の存在を感じていたい」「薪ストーブで暖をとりたい」「外との開口部は小さく、それでいて、家のなかは明るく」といったもの。すべてをかなえるためには、また、ご夫妻のインテリアセンスを考えると、三角屋根の大空間が最適だったのだろう。とくにそう感じさせるのが、屋内全体にあふれる安らぎだ。「インフルエンザにかかった娘を、私たちの寝室に隔離しなければならなかったときも、家族の声が聞こえるので、それほど寂しい思いをさせずにすみました」
 奥様のそんな言葉からは、安心感という目に見えないものにも満足しておられることが、よくわかる。すべては久成氏の設計のとおり……。と思ったら、けっこう「バトル」もあったという。「久成さんの提案を全部受け入れるのではなく、僕たちも意見を出して、よりよいものにつくりあげたといった意味での『バトル』です(笑)。岡山中央スタジオの住田さんも加わって、それぞれが最高と思うアイデアを出し合い、また、『それいいね』とお互いの意見を認め合いながら、議論を重ねていきました」
 住む人、設計する人、建てる人の三者三様の思いをダイレクトに主張し合える、そんな家族的な関係も、設計や施工を進めるうちに自然に築かれたという。「部材ひとつにもこだわり、話し合いで決めながらつくる家は、トータルで考えるととてもコストパフォーマンスが高いと思います。みんなでつくったという思い出のプライスも含めて」
 奥様がおっしゃるとおり、建て主さん、建築家、スタジオなどいろいろな個性が交わってこそ、家づくりというドラマは、より味わい深いものになる。
 こうした個性的な家で暮らすようになり、Yさんの趣味が広がっただけでなく、お嬢さんたちについても作文や絵に周囲の自然がよく登場するなど、それまでにない個性が育まれているという。
 「家を建てるなら建築家に設計を」と考えていたYさん夫妻。その夢をかなえたことで、外観や間取りなど理想のカタチだけでなく、家族の個性を伸ばし、家族間の絆を強めるなど、理想の家族が実現している。

(取材/香川泰子)
Yさん邸は田園地帯のランドマークにもなっている。お嬢さんたちの絵や作文には三角屋根の家や水田がよく登場するという。⑥
みんなで組み立てた赤色の倉庫がアクセントに。⑦
森のなかの切り株が月明かりに照らされているようなトイレ。ドアには久成氏デザインのトイレサインのおまけ付き。⑧
「パノラマ状に広がる景色が時間の流れや四季の移り変わりを感じさせてくれる」とYさん。⑨

■POPPO

所在地

岡山市南区

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供2人

設計

久成文人/EN.Architecture+Design

施工

ASJ岡山中央スタジオ[株式会社イチエ建匠]

構造・構法・規模

木造在来工法
地上 2階  
軒高 6.526mm 最高の高さ3.002mm
敷地面積 182.66m2
建築面積  85.29m2(建蔽率46.69% 許容60%)
延床面積 103.92m2(容積率56.89% 許容200%)
 1階   82.81m2
 2階   21.11m2

主な外部仕上げ

屋根  ガルバリウム鋼板
外壁  ガルバリウム鋼板
開口部 アルミサッシュ
外構  モルタル金コテ押さえ+アルミ

主な内部仕上げ

LDK
 床 モルタル金コテ押えの上表面強化材
 壁・天井 クロス貼り
MBR
 床 フローリング(t-27)一部モルタル金コテ押えの上表面強化材
壁・天井 クロス貼り
LOFT(子供スペース)
 床 フローリング(t-27)
 壁・天井 クロス貼り
BTH
 床 モルタル金コテ押えの上ウレタン塗装
 壁 モルタル金コテ押えの上ウレタン塗装一部クロス貼り
 天井 珪酸カルシウム板の上ウレタン塗装

工程

設計期間 2012年12月~2013年2月
工事期間 2013年 2月~2013年6月

撮影

水野真澄(①②③⑤⑦⑧⑨)
冨田英次(表紙 ④⑥)

ロフト平面
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1階平面 縮尺1/200
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配置図 縮尺1/1000
クリックで拡大

久成文人

(岡山市北区)

1963年岡山県生まれ/1986年日本工業大学工学部建築学科卒業/1999年EN.Architecture+Design 設立

POPPO

岡山県南区に建つこの住宅は、のどかな田園風景が広がる一角に計画した夫婦+子供2人のための建築です。
周囲のコンテクストと同時に、この地の環境を大切にしながら計画を進めました。
ご夫妻の趣味でもあり、大切にしている自転車を室内に置くリクエストを頂きましたので床の素材をモルタル仕上げとし内外の境界をなくしてお二人のライフスタイルにお答えしました。自転車のボリューム感に負けないよう室内全体を吹き抜けのある空間として狭さを感じさせないようにすると共に、家族を一つの空間で包み込みそれぞれの居場所を創り出して家族の気配を感じながらの生活スタイルができるよう計画しました。平面計画は決して大きくはありませんが、回遊性を持たせ、又各部屋には吹き抜け空間のトップライトから差し込む光や適材適所に計画した開口部を造ることでダイナミックな空間の演出ができたと思います。
子供たちの居場所のロフトはあえて壁を造らずカーテンにて間仕切ることにより、自分の部屋では無く、自分の家と感じてもらえたならイイなぁ~と想い提案させていただきました。
ご家族が一つの空間で楽しく時間(とき)を過ごしてもらえることを願っています。

ASJ岡山中央スタジオ

[株式会社イチエ建匠]

スタジオマネージャー:岡田和也

Y様は「家を建てるなら、建築家に」と決めておられ、ASJのWEBサイトから「おためし無料登録」をされてからのはじまりでした。
2月6日の寒い日の地鎮祭、少し遅くまでかかった3月21日の上棟(笑)。6月21日の大変暑い日にご夫妻と久成先生との4人で組み立てた、真っ赤なバイクガレージ。4人で四苦八苦して何とか組み上げた時の感動は、今でも忘れることのできない一日です。
建物でも、薪ストーブ、トップライト、化粧の梁、床の仕上げ、アイランドキッチンなど、いろいろな要素があり、それぞれにいろんな思いがある建物になりました。
引き渡し後も、Y様に薪ストーブに火を入れていただき、Y様と一緒に火を眺めたのも思い出の一つです。
三位一体での家づくり、その結果で完成することができました。これからもいろんな思い出を重ねながら、快適にお住まいいただければと思います。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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