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ASJ Works Close-up

イメージ「ゼロ」からの家づくり

奈良県橿原市

melodia

設計 阿曽芙実建築設計事務所
施工 ASJ奈良スタジオ[株式会社日本中央住販 ]

スタディースペースには、書籍やCDなどが閲覧できるよう収納スペースも。①
無機質になりがちな壁面が家型の開口部によってやわらかな表情に。②

イメージは白紙の状態

ASJで家をつくった方のなかには、住宅雑誌などを読んで勉強し、自分で理想のカタチを決める人も少なくない。ただ、大半の建て主さんは、自分たちのライフスタイルに合う理想型をしっかりと描いているわけではなかった。
 「建築家と家をつくりたいという思いはしだいに強くなっていきました。だからといって、イメージが浮かんできたわけではありません。実はそのことが不安でした。でも、建築家の阿曽芙実さんと会っているうちに、イメージが固まっていき、不安はすっかり解消されました」
 奥様が当初の心配ごとを打ち明けてくださる。では、阿曽さんとはどのようにして巡り会ったのだろう。
 それは、奈良スタジオマネージャーの妹尾和代さんが、Mさん夫妻が語る家についての理想を、時間をかけ、じっくりと聞いたことによる。「無垢材など自然素材を活かしたい」「子供の存在が常に感じられるような吹き抜けの空間がほしい」「洋服の組み合わせが楽しめるような収納がほしい」「これまで使い込んできたトラック社製の家具を馴染ませたい」……。こうした要望をもとに、奈良スタジオでは、女性であり、年齢や感性が近いことなどから、阿曽さんを紹介したという。「僕は、妻がいいというなら、それでオールOK。どちらかといえば妻主導の家づくりでした」
 Mさんが少し照れながら話される。

開放的な大空間はスキップフロアで区切られている。太い梁は、柔道家のMさんの懸垂に使われることもあるとか。③

実家よりも小さく

「住みこなしが上手な方たちだなと思いました」
 建築家の阿曽さんは、Mさん夫妻のインテリアやオブジェ、雑貨など、モノの選び方や扱い方を聞いて、そんな感想を持ったという。
 そこで、自分が手がけた堺市の家を参考に見てもらった。すると、予想どおり、Mさん夫妻はひと目で気に入られたという。そこで、阿曽さんは、堺市の家を骨組みにして、Mさんの要望や理想を肉付けしていった。そのうち、Mさんからある要望が出された。実は、奥様は家相などを占ってもらっていて、告げられたのが「実家よりも大きくつくらないほうがいい」という指示だった。「この判断は論理的にも正しいと思いました。Mさんご夫婦が歴史ある町にあたたかく迎えられるためには、外観は威圧感のないほうが適していますよね。また、瓦屋根が多い街並みにとけ込むよう、屋根には瓦に似た素材を使っています」
 こう語る阿曽さんは、建築が地域のコミュニティづくりに果たす役割を子供たちに体験させるイベントなどにも積極的に参加している。
 間口を狭くしたM氏邸は、隣のご実家よりもかなり小さく見える。ところが、実際は奥が深くて、その空間は、驚いたことに柱など遮るものがほとんどない。それは、この開放的な大空間を、両サイドの小空間がしっかり支えているから。そんな工夫にも、阿曽さんの建て主に寄り添う姿勢が現れている。

天井の一部を吹き抜けにすることで、屋根までのタテのつながりと開放感を演出。④

細部に光る匠の技

「使い込むうちに味わい深くなるものが好きです。だから、トラック社製の家具にも憧れるんですね」
 奥様のこうした感性に応えるには、経年変化を楽しめる耐久性や美しさを備えていなければならない。M氏邸でも、そこは、ちゃんと匠の技が施されている。例えば、無垢材の反りを充分に考慮し隙間が現れないように調整したり、設計図だけでなく原寸の仮部材で確認するなど、念には念を入れている。「わが家の門を開けると、リビングで遊ぶ子供たちの姿が目に飛び込んできます。一日の疲れも吹き飛びますね」というMさん。奥様は、「私はキッチンからの眺めが好きです。リビングの家族を見ながら、また、好きなオブジェやファブリックを眺めながら料理をつくる――。それはとても幸せな時間です」
 家についての確固たるイメージがなくても、知識がなくても、そして、ゼロからのスタートでも大丈夫。それぞれの専門家が経験を活かし、知恵を結集しながら、さまざまな要望をカタチにつくりあげていく。その過程で、建て主さんは、世界で一つの家づくりの名プロデューサーとなっていくのだから。

(取材/香川泰子)

キッチンスペースの壁には、お祖母様が大事にされていた蛇口のオブジェなど、奥様お気に入りの品々が並ぶ。⑤

主寝室のリネン類は小窓から落として洗面台横の洗濯機へ。⑥
広い土間は子供たちの遊び場に最適。奥様の希望で、帰宅後すぐに手洗いうがいができるように洗面が設けられている。⑦
大空間を両サイドの小空間が支える。⑧
間口の広さを抑えて奥に深く。家づくりは 、家族と建築家との思い出づくりでもある。⑨

■melodia

所在地

奈良県橿原市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供2人

設計

阿曽芙実建築設計事務所
 担当 阿曽芙実、大村廣介
構造
株式会社 エス・キューブ・アソシエイツ
 担当 橋本一郎、田中睦月

施工

ASJ奈良スタジオ[株式会社日本中央住販]
 担当 妹尾和代、木島伸仁
設備 大東設備工業 
電気 南電気商会

構造・構法・規模

在来木造
地上2階  
軒高 7,150mm  最高の高さ 7,250mm
敷地面積 120.93m2
建築面積  60.30m2(建蔽率49.86% 許容 60%)
延床面積 108.18m2(容積率89.46% 許容160%)
 1階 60.30m2
 2階 47.88m2

主な外部仕上げ

屋根 アスファルトシングル葺き
外壁 モルタルノ上リシン吹付け
開口部 アルミサッシュ、木製建具
外構 モルタル金コテ押え、砂利敷き

主な内部仕上げ

リビング、ダイニング、キッチン
 床 ナラフローリングノ上バトン着色
 壁 クロス貼り仕上げ
 天井 構造あらわし
和室
 床 畳
 壁 クロス貼り仕上げ
 天井 構造あらわし
ウォークインクローゼット
 床 ナラフローリングノ上バトン着色
 壁 クロス貼り仕上げ
 天井 クロス貼り仕上げ
2階 スタディースペース、子供部屋、主寝室
 床 ナラフローリングノ上バトン着色
 壁 クロス貼り仕上げ
 天井 クロス貼り仕上げ

工程

設計期間 2012年6月~2013年7月
工事期間 2013年8月~2014年2月

撮影

水野真澄(表紙 ①②③④⑤⑨)
小川重雄(⑥⑦⑧)

断面図
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1階平面 縮尺1/200
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2階平面a
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2階平面b
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阿曽芙実

(兵庫県神戸市)

11977年兵庫県生まれ/2000年金沢工業大学工学部建築学科卒業/2002年金沢工業大学大学院建築学専攻修了後、2002年小山隆治建築研究所に勤務/2006年阿曽芙実建築設計事務所設立/2011年~大阪人間科学大学 非常勤講師

melodia

敷地は奈良県橿原市で、母屋の横にあった離れを解体して建てました。父母の住む母屋よりは小さく控えめに建てたいとの要望と伝統的な瓦屋根の集落の中にあって、一方変わった様相とそれでも、みんなに親しまれる優しい表構えに気をつけました。家全体がワンルーム空間で家族がどこに居ても感じ取れる空間がご希望でした。
1階のリビング、ダイニング、キッチンは大きなワンルームのように見えますが、その上にある床の高さがまちまちで、用途によって高さが違い、また吹き抜けている場所もあります。そのことによって、大きなワンルームでも場所によって、全く違う景色となり、より広がりや奥行きを持ったイメージとなるように心がけました。
2階はリビングからスタディースペースを通り、子供部屋と主寝室に行く階段とリビングから南側のクローゼットの中を通り、洗面室に行く階段があります。洗面室と主寝室は小さな小窓でつながっています。洗面室の洗濯機で洗濯したもので洗面室で使う物はすぐ横の物干出窓で干し、クローゼットにしまう物は1階のテラスで干します。
建物のメインの大きな空間の壁を収納でできた小さな空間が南側と北側から支えることで、メインの空間の短手方向にほとんど壁をつくることなく、また、スキップした床のレベルを支えるためにも小さな空間の屋根が活かされ、一つのことから派生して様々なことが同時に動き、決まって行く。まるで音楽の様に出来上がっていきました。
出来上がった空間は、家族によって奏でられた暮らしがある時には、春の小鳥のさえずりのようであったり、また、ある時には、雷のような激しさであったり、家族に寄り添い、豊かな暮らしの気づきになればという思いを込めました。

ASJ奈良スタジオ

[株式会社日本中央住販]

スタジオマネージャー:妹尾和代

以前から建築家との家づくりには興味を持っておられたが、どうやって建築家を選んだら良いかわからなかったというM様の家づくりの熱意にお応えするべく、ご希望をじっくりと聞かせていただき、いろいろな観点からM様のご希望を実現するには阿曽先生がベストと考えてご推薦をさせていただきました。
M様の熱い思いを汲んで設計された阿曽先生のご提案は、メロディーを奏でるようなリズミカルなステップフロアや、家の中が一つの空間となった一体感のあるプランで、私どもも施工に力が入りました。M様の思いに報いるために精一杯の気持ちを込めて現場の仕事をさせていただきました。完成したお家は、M様ご家族の仲の良さや楽しい雰囲気が表れているような素敵なお家になっています。
M様にとても喜んでいただき、奈良スタジオスタッフ一同もとても嬉しく感謝の気持ちで一杯です。
これからもM様にいただいたご信頼にお応えするべく、アフターサービスを全力で行なっていきたいと思っています。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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