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ASJ Works Close-up

笑顔の物語が生まれる家

愛媛県松山市

nico

設計 石上芳弘/YIAイシウエヨシヒロ建築設計事務所
施工 ASJ松山中央スタジオ[株式会社富士造型]

Kさんの帰りを「まだかまだか」と待つご家族。

ガルバリウム鋼板とは思えないような表情豊かな外壁。「落ち着いた配色はご近所にも好評です」と奥様。①

本棚が広がる家

 愛媛県松山市にあるKさんのお宅。お邪魔してまず驚いたのは、小学生のお嬢さんたちの姿である。寸暇を惜しむように本を読んでおられた。ゲームではなく、漫画でもなく、文字がたくさん並ぶ児童文学。「きょうは、取材って約束したよね。さあ、本を仕舞いましょう」
 そんな奥様の言葉で、姉妹は文庫本を棚に戻し、その後は、カメラマンが驚くほど、撮影にとてもよく協力してくださった。長い廊下で遊ぶシーンを撮るときは、「ボウリングはどうでしょう?」と提案してくださったのもお嬢さんたち。それは、豊かな想像力を働かせ、自分で風景や物語をつくり出しているようにも見えた。Kさん夫妻も、ジャンルを問わず読書が大好きだという。「設計を石上さんにお願いしたのは、手がけられた作品のなかに、本棚に囲まれた構造の家を見たのがきっかけです」と奥様。
 ASJのイベント会場で、石上氏の作品と出会い、また、松山中央スタジオにあった建築誌で、その詳細を知ったという。「それまで住んでいたマンションにも書棚はありました。でもスペースが限られていたので、子供たちの本もしだいに高い位置に移ってしまって…。いまは、自分たちの手が届く棚を占有し、読みたいものをすぐに取り出しています。この家で暮らすようになり、娘たちの読書好きに拍車がかかったようです」(笑)
 本棚に目を向けると、その前では、3歳の坊やが図鑑をひろげていた。

北側の壁一面につくられた本棚。②
家のなかの橋は家族のかけはしでもある。③

建築家と理想の土地を探す

 将来の家づくりのためにと、ASJの会員になられたKさん夫妻は、しばらくの間は小誌などを読み、誌面のなかで自分たちの暮らしをシミュレーションされていたという。その後、3人目のお子さんが誕生してマンションが手狭になり、また、消費税率の引上げが迫ってきたことから、本格的に活動を開始。
 土地探しからのスタートで、最初は松山中央スタジオの担当者と、石上氏に設計を依頼することに決めてからは石上氏と共に、4〜5ヵ所を見て回ったという。「周囲の環境から予算まで、私たちの希望に合う土地を辛抱強く探してくださいました。実は、この土地は南西の角地で日当たりがよく、古家つきでしたが、価格が手ごろでした。しかも、その家の解体にはそれほど費用がかからず、思っていた以上のお得物件になりました」(笑)
 その的確な見立てに、「さすがは専門家ですね」と奥様。でも、石上氏の眼力は、優良物件の見極めにとどまらず、その後の設計に遺憾なく発揮されることになる。

天然プラネタリウムで晩酌

 Kさん夫妻が石上氏に伝えた要望は、「明るい室内」「子供たちがのびのびと過ごせる構造」、そして、「吹き抜けのある空間」「身体の大きなKさんも料理が楽しめるキッチン」という、とてもシンプルなものだった。そのすべてが実現され、なおかつ、「随所に粋なはからいが感じられます」と、奥様。
 例えば、外からの視線を遮りながら、明かりや風を通す中庭は、廊下や和室を通って回遊することができ、子供たちの格好の遊び場に。さらに、廊下が効果的に配されていて、その先の風景や渡っているときの眺め、そして、曲がったときの景色が、不思議な旅情をかきたてる。「和室の角を曲がると、廊下の先に本棚やリビングが目に入ってきます。その瞬間、『ああ、あそこには私を待っていてくれる家族がいる』と、胸があたたかくなります」
 そんな奥様の言葉に、『赤毛のアン』の一節が思い浮かんだ。そのほか、リビングのソファーでは、天井近くの南側の窓から星空が眺められ、ある時間になると、お月さまがひょっこり顔を出すとか。そんな天然のプラネタリウムのもとでグラスを傾ける――。それは、仕事や家事、育児に追われるKさん夫妻の至福のひとときといえよう。
「私の実家は愛媛のミカン農家なのですが、ちょうど裏山が見える位置に窓がつくられていて、その景色を見るたびに、ほっとします」
 そう語る奥様のおだやかな表情が、とても印象的だった。

広い縁側は子供たちの格好の遊び場。木材、鋼板、ガラスなどによる多彩なテクスチャがワクワク空間をつくり出している。④

良質の家ができる予感

 竣工して1年が経ったいまでも、Kさん夫妻の間では、「落ち着けるね」「この景色がいいね」と、家についての感想や発見が話題になるという。また、子供さんたちも、旅行に出かけてもすぐに帰りたがるほど、わが家が大好きだとか。そんな満足度の高い家づくりのコツを奥様に聞いてみた。「建築家の石上さんは、事務所は大阪にあるものの、出身地の愛媛での実績も多く、また、年齢が私たちに近いことから、考えや思いが伝わりやすかったですね。また、『この点だけはゆずれない』という大きな柱をいくつか立てておかれると、いいかもしれませんね。プランニングコースを始めたとき、石上さんは、1回目で私たちの要望を十分に満たすプランを提案してくださいました。その時点で、お任せしても大丈夫だと確信しました」
 さらに、Kさん夫妻を安心させたのが、石上氏と松山中央スタジオの連携だという。お互いの技術を認め合う仲だけに、こだわりのある家づくりが実現されている。例えば、階段一つをとっても、木目を精巧に貼り合わせ、まるで1枚の板のように見せるその技は、妥協を許さない職人芸。「夫は、石上さんと棟梁の楽しそうな会話を聞いて、『これはいい家ができるぞ』って喜んでいました」
 Kさん夫妻はもとより、いろいろな人の思いや技が結集された家は、過ごしやすいのだろう。二人のお嬢さんたちは、取材への対応を終えると、それぞれお気に入りの場所で、読書を再開していた。(取材/香川泰子)

和室への渡り廊下は露地のよう。でも、幼い坊やにはレーシング場。⑤

子供部屋は将来、それぞれの個室に分けることができる。⑥
窓が内側に開いている和室は音漏れも抑えられるので、いまはピアノのレッスン室に。⑦
お姉ちゃんの発案で長い廊下はボウリング場に。白い壁に映し出される光の移ろいはK さんのお気に入り。⑧
この廊下の先に見える本棚やリビングの景色が奥様のお気に入り。⑨

■nico

所在地

愛媛県松山市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供3人

設計

石上芳弘/YIAイシウエヨシヒロ建築設計事務所
構造 片岡構造 担当 片岡慎策

施工

松山中央スタジオ[株式会社富士造型]
 担当 横山宣宏
設備 なかたに水道 担当 中谷卓司
電気 やまだ電気 担当 山田宏介

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階  
軒高 6.068mm 最高の高さ 7.968mm
敷地面積 206.76m2
建築面積 101.02m(2 建蔽率48.86% 許容 70%)
延床面積 151.43m(2 容積率73.24% 許容200%)
 1階 85.29m2
 2階 66.14m2

主な外部仕上げ

屋根  ガルバリウム鋼板
外壁  ガルバリウム鋼板
開口部 アルミサッシ
外構  デッキテラス・ルーバー イペ材

主な内部仕上げ

LDK
 床 無垢フローリング サーモアッシュ
 壁 塗装漆喰 一部、サーモアッシュ
 天井 塗装漆喰
和室
 床 半帖畳
 壁・天井 全桐合板
寝室
 床 無垢フローリング サーモアッシュ
 壁・天井 珪藻土クロス
子供室
 床 無垢フローリング サーモアッシュ
 壁・天井 珪藻土クロス
DEN
 床 無垢フローリング サーモアッシュ
 壁・天井 シナ合板
ロフト
 床 Pタイル
 壁 珪藻土クロス
 天井 梁表し インテリアラーチ合板

工程

設計期間 2012年11月~2013年5月
工事期間 2013年 9月~2014年4月

撮影

水野真澄(表紙 ③④⑤⑥⑦⑧⑨)
YIA(①②)

配置 縮尺1/1000
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ロフト平面
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2階平面
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1階平面 縮尺1/200
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断面図
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石上芳弘

(大阪府岸和田市)

1974 年愛媛県生まれ/ 1998 年近畿大学理工学部建
築学科卒業/ 2000 年近畿大学大学院工学研究科建
築学専攻修了/ 2000 年樫永一男建築研究所入所/
2005 年YIA イシウエヨシヒロ建築設計事務所設立
/ 2006 年日本理工情報専門学校教育課程編成委員/
2015 年近畿大学建築学部非常勤講師

 まず始めに…ジュウタクの設計は「関係と状況」を発見し、整理、再構築する作業なのではないか?
 と振り返ることがあります。関係とは、もちろん住人同士の関係もあるのですが、ウチとソトであったり、周辺環境とであったり、趣味とであったり…クライアントとの打合せを重ねることで、その家族を表現するような関係が見いだされてきます。その様々な関係を整理し、その関係を誘発する状況を具現化するために設計というツールで空間として再構築してジュウタクという形に近づけていくような感覚が芽生えます。
 nico…
 敷地は閑静な昔からある住宅地で、道路が西と南に接している角地になります。できる限り開放的な…窓を開け放しても生活できるような、とにかく明るい住宅という要望に対し、敷地いっぱいに建つことになる住宅の配置構成が大きなポイントになると感じました。そこで、中庭を大小のイエ型のヴォリュームで挟み込む構成を提案しました。外部からの視線を遮りながら開放的な南窓を作ることができます。また、家族が一つ屋根の下で過ごしていることを感じられるように、懐古的なシンボルとなるシンプルなイエ型として、内部を可能な限り一体の空間としました。テクスチャの変化は大きな空間の中で、スペースの領域を穏やかに認識させ、小さな纏まりの継目のない集合体としての一面も同時に感じさせる効果があります。その変化がささやかな状況を生み出し、おのおのの関係の中でリズミカルな潤いを添えることができればと思っています。

ASJ 松山中央スタジオ

[株式会社富士造型 ]

スタジオマネージャー:笠井雄介

 イベント会場がK 様と石上先生の最初の出会いでした。アカデミー会員になられてからしばらくの間はA-Style などの資料からどの建築家に依頼するか考えられていたそうですが、石上先生の設計が一番素敵だなと思われご依頼いただきました。
 土地探しからの計画スタートでしたが、せっかくなのでと先生にもご同行いただき、建築家目線でのアドバイスをもらいながら土地を選びました。
 ご要望は「明るい家」「子供たちがのびのびと楽しく遊べる家」でした。外から眺めると家の中はどうなっているのだろう? 中に入ると大きな吹き抜け、そこにかかる渡り廊下、和室へとつながる通路など子供も大人もわくわくしてしまう、そんなお家に仕上がりました。夜になると吹き抜け上部の窓からきれいな月を眺めることもできるそうです。
 お引渡しをさせていただいて1 年経ち、楽しく快適に生活しておられるとのことでした。石上先生のデザインにK 様の家具や小物などのセンスが加わり、柱にはお子さんが身長を測った書き込み、造作した机への落書きなどところどころに子供たちの成長の跡も見られより一層素敵な住宅に仕上がっておりました。
 これからもご家族の成長とともに変化していく住空間を楽しみながら快適にお過ごしいただければと思います。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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