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ASJ Works Close-up

陽光が舞う明るい空間で末長く心地よく暮らす

埼玉県幸手市

幸手の住宅

設計 加藤雅康/カトウアーキテクトオフィス
施工 ASJ熊谷スタジオ[小沢工業株式会社]

「今年は百日紅が咲くのは遅かったね」。ご夫婦ふたりで庭を眺めていると、自然と会話が弾む。

南側に位置する、広々とした庭から建物を眺める。2階は明るさを確保しながらも、深い庇が直射日光の侵入を防いでいる。①

 窓のない家。エントランスから眺めると、中の様子はうかがい知れない。しかし、アプローチを進み、玄関を抜け、リビングへと続くドアを開けると、突然、パッと視界が開けて息を飲む。吹き抜けの高窓から、柔らかな光が降り注ぎ、一面の窓からは見事な庭が見える。こんな気持ちのよい空間が隠されていたとは。訪れた人へのちょっとしたサプライズのようでもある。
 ご実家の建て替えを考えていたOさんがASJを知るきっかけとなったのは、イベント開催を告知する新聞の折り込みチラシだった。「どういうシステムなんだろう?」とイベントを訪れた際に、何人かの建築家と話してみたなかで、加藤雅康さんと意気投合したのだという。しかし、その場では入会せず、慎重なOさんは何度かスタジオに足を運び、疑問点などがクリアになった時点で、改めて家づくりをスタートさせることになった。もちろん、設計担当は加藤さんだ。
「とにかく、加藤さんにはまず、明るい家に住みたいと希望を伝えました。以前の家が昔ながらの日本家屋だったものですから、夏暑くて、冬寒くて大変だったんです。明るくて、夏涼しくて、冬暖かい家。そして、なるべくエアコンに頼らないで過ごせるようにしたいとお願いしました」とOさん。
「以前の家は欄間も立派で、とても素敵だったんです。でも、残念ながら現代の生活には合わなくなってしまっていたんだと思います」と奥様。
 以前の家が立派だったことは、残された庭からもうかがえる。特に、和室からの眺めは、まるで窓枠に切り取られた一幅の絵のように美しい。これは、Oさんのお母様が生前にご覧になっていた風景を残そうという、加藤さんの提案により、以前の居間とほぼ同じ位置に和室を設けたおかげである。

道路に面する西側には窓を設けていないため、中の様子はうかがい知れない。プライバシーを守りつつ、南北の窓で採光と通風を確保し、開放感ある空間を実現している。②
西側にあるエントランスからアプローチを通り、北側に回ったところに玄関がある。③
南側の天井を低く、北側を高く設定し、熱気を南から北へ逃がしている。天井にも木肌が見えるように木材を配し、空間にぬくもりを演出。④
リビングへの扉を開けた瞬間に目の前が開け、見事な庭の景色が目に飛び込んでくる。リビングダイニングはご夫婦のくつろぎのスペース。⑤

 窓のない西側に位置する廊下やトイレには天窓を設置し、採光を確保。洗面室にも高い位置に窓を設け、灯りをつけずとも朝の支度ができるように配慮した。北側の階段にもスリットのような細い窓を設け、足元を照らすように計算がなされている。このように、〝明るい家〟という希望は、隅々で丁寧に叶えられているのだ。
「廊下も浴室も、本当に明るいんです。びっくりしました。階段の窓なんて、こんなに細いのに、ここまで明るいなんて。無駄な電気を使わずに済んでいます(笑)」と奥様はうれしそう。
 そして、明るさに加えて、断熱や遮音の面でも申し分ない。実は、すぐ近くに線路があり、頻繁に電車が通るのだが、窓を閉め切っていれば、ほとんど音が気にならないくらいだ。さらに、吹き抜けのリビングの天井は南から北に向かって高くなっており、南の窓から北の天井近くの窓へと熱気が逃げるような構造になっている。ここも、「無駄な電気をつかわなくていい」仕組みのひとつ。落ち着いた、モダンなデザインの住まいのなかに、さりげなく様々な工夫が隠されている。
 そして、もうひとつ、「将来のことを考えて」とOさんが希望したのがバリアフリー設計。室内のドアには上吊り引き戸を採用し、和室と洋室の間であっても、一切の段差を排除している。万が一、車椅子で生活することになったとしても、不自由なく暮らせる設計となっているのだ。
 春は梅、夏には百さ るすべり日紅の花が咲き、秋は紅葉が葉を赤く染め、冬は山さざんか茶花が寒空に彩りを添える。「今年の春は、庭で摘んだ蕗ふきの薹とうの天ぷらをつまみに晩酌を楽しみました」とOさん。四季折々の楽しみを授けてくれる庭の樹々たちは、まさにお母様から譲り受けた宝物といえる。訪れる季節を家族とともに慈しみ、穏やかに、そして快適に暮らす毎日が、ここにはある。

(取材/吉田桂)
庭がもっとも美しく眺められる位置に設けられた和室は、客間として利用。部屋に向かって左手には大容量の収納スペースも用意。⑥
和室からの眺め。絵画を楽しむように、思わず庭の景色をじっと見入ってしまう。Oさんのご両親が遺した、この家の宝物のひとつだ。⑦
お酒好きなOさんは、ダイニングのカウンターにお気に入りの焼酎の甕(かめ)を置いている。帰宅してからの晩酌が至福のときとのこと。⑧
玄関枠には台が二つ。左手の台は腰掛けて靴を履くときに、右手は印鑑などを収納しておくのに便利。さりげないが気の利いた設計だ。⑨

■幸手の住宅

所在地

埼玉県幸手市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦

設計

加藤雅康/カトウアーキテクトオフィス
 担当 加藤雅康 横山信介

施工

ASJ熊谷スタジオ[小沢工業株式会社]
 担当 岡田純一 神田伸明

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階  
軒高 5,973mm 最高の高さ 6,450mm
敷地面積 425.51m2
建築面積 119.81m2(建蔽率28.16% 許容 60.00%)
延床面積 141.30m2(容積率33.21% 許容160.00%)
 1階   100.12m2
 2階   41.18m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板 竪ハゼ葺き
外壁 ジョリパット吹付仕上げ
   せっ器質ボーダータイル貼り 
開口部 アルミサッシ
外構 割肌石貼り

主な内部仕上げ

リビングダイニングキッチン
 床 厚突板ウェンジ複合フローリング t=12㎜
 壁 PB t=12.5㎜ AEP塗装
 天井 PB t=12.5㎜ AEP塗装
     一部タモ突板OSUC 
和室
 床 本畳 一部檜フローリング t=15㎜
 壁 珪藻土塗仕上げ
 天井 杉柾化粧合板貼り
洗面室
 床 竹タイル貼り t=6㎜
 壁 PB t=12.5㎜ AEP塗装
 天井 PB t=12.5㎜ AEP塗装
浴室
 床 タイル貼り
 壁 ラスモルタル t=15㎜ VP塗装
 天井 ケイカル板 t=8㎜ 結露防止塗装

工程

設計期間 2012年12月~2013年09月
工事期間 2013年09月~2014年05月

撮影

土居麻紀子(表紙 ⑤⑦⑧⑨)
株式会社イメージグラム 渡辺良太郎(①②③④⑥)

断面図 縮尺1/200
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2階平面
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1階平面 縮尺1/300
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配置図 縮尺1/1000
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加藤雅康

(東京都中野区)

1962年東京都生まれ/1986年関東学院大学工学部建築学科卒業後、株式会社ケン設計工房に勤務/2002年カトウアーキテクトオフィス設立

 ここは静かな住宅街の中のゆとりある敷地環境です。庭の既存の樹木を多く残し、建物の大きな開口部より、庭の豊かな緑とたっぷりな陽光を室内に取り込めるように配慮しました。
 日射のコントロールや風の流れを考え、南側の開口部には大きな庇を設け、吹き抜けのあるリビングルームの高天井の北側の上窓から熱気を排出するなど、住宅には欠かせない自然環境対策の要素を多く取り入れています。前面道路が4mなので、道路への圧迫感を無くすことを意識し、外構の塀を3mセットバックさせて設けました。建物はさらに2m下がり、道路側の部分は平屋建てにして、奥に向かって雛壇状に立ち上がる構成としています。そうすることにより敷地と道路の関係及び建物にもゆとりが生まれ、周辺環境への配慮にもつながると思いデザインしました。
 アプローチは歩く距離を長く取ることを意識しています。敷地南西の門扉から入り、建物にそって割肌石の床を通り、北側へと回り込んだ所に玄関を配置しました。道路からは玄関が見えないように壁を立て、プライバシーも配慮しています。玄関はゆとりある豊かな空間としシューズクロークを併設しました。ベンチを兼ねた収納付の飾り棚も設えています。
建て主は和室に想いがありました。以前の建物の和室から観る庭との繋がりを再現するために、庭の樹木はそのまま残し、同じ場所に新たな和室を配置しています。以前とは一味違った和の空間に設えましたが、昔を懐かしく感じることと共に、その想いを未来に繋げていければと思っています。
 リビングダイニングは南側の庭が一望できるように、窓を連続させています。風の無い夏の蒸した日でも高天井の上昇気流によって、快適に生活できるように風や空気の流れを意識した窓の配置としています。2階には夫婦それぞれの部屋を配置していますが、そちらにも熱気がこもらぬように階段部分を高天井にして、開閉窓を設置することで、空気の流れを造りました。
 モダンな外観を持つこの建物は、快適で住み心地の良い、夫婦二人の住まいとなっています。

ASJ熊谷スタジオ

[小沢工業株式会社]

スタジオマネージャー:岡田純一

 私達は、アカデミー会員様それぞれのご家族と向き合い、信頼関係を築くよう努めています。そしてこれからの住まい方に求めるもの、現在お住まいの住宅に対する不満点およびスケジュール・資金計画などをじっくりと話し合い、最適な建築家を複数候補の中から選んでいきます。「幸手の住宅」の建主・O様との出会いは、約3年の月日が流れた今でも昨日のように思い出されます。
 こちらの家づくりの始まりは、O様からいただいた1本の電話からでした。「ASJ建築家ネットワークに興味があるので詳しく内容を説明して欲しい」とのこと。スタジオにお越しになりとても熱心に話を聞いてくれたご主人の姿がとても記憶に残っています。こちらからのシステム説明に対する質疑応答を含め、話は大変盛り上がりましたが、その日は会員登録をされることなくお帰りになりました。あえて個人情報を伺わなかった私にO様は、「どうしてマネージャーは私の住所・名前・連絡先などを聞こうとしないのか?」とお帰りの際に尋ねられました。私は「もし本当に建築家と家づくりをされるようでしたら、またお会いできると思っています」とお伝えしました。その後システムを十分に把握されたO様は二度・三度とスタジオにお越しになり、2012年11月にスタジオにてASJアカデミー会員にご登録されました。
 それからは奥様も交え、プランニングコースやそれに先立つ打合せを時間をかけて進めた結果、建築家 加藤先生の設計監理により、目指す住宅が見事に完成しました。振り返れば色々な出来事がありました。O様への感謝の気持ちをこれからのメンテナンス等に活かし、末永くお住まいを見守らせていただきたいと思っています。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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