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ASJ Works Close-up

いのちがつなぐ三世代の家

熊本県上益城郡

和続きの家

設計 福永英司/ag福永建築事務所
施工 ASJ阿蘇・熊本スタジオ[株式会社江藤社]

農家の動線にあわせ、屋外トイレや倉庫、広い軒下には作業スペースが設けられた。 夏は下屋でBBQを楽しめ、冬は床暖房サーマ・スラブのおかげで「冬の部屋着が、ダウンから半袖でもOK!」へ暖かく快適にかわったそう。①

建築と資金
各専門家に相談できる安心感

「九州のグランドキャニオン」と名高い蘇陽峡のそば、雄大な自然のなかにT邸は建つ。「ASJとの初めましてが去年のことだなんて、自分たちも驚きです」。今夏誕生した息子Sくんを腕にT夫妻がほほ笑む。 夫妻が家づくりを始めたのは夫Yさんの両親との同居を決めた昨年初めころ。両親が暮らしていた築百年の母屋が大好きだった妻Sさんの希望もあって、リフォームを検討していた2月、「買い物ついでに」ASJのイベントへ立ち寄り、5人の建築家に相談を持ちかけた。そのなかの1ブース、ag福永建築事務所の代表、福永英司さんと松本栄治さんと話すなかで「急かされた記憶はないのに、スッと話が前に進んでいって心地よかった」という。また福岡・北九州~熊本・阿蘇という遠距離を厭わない快い対応にも惹かれプラン作成を希望。その数日後には福永さんが母屋の検証に訪れ、リフォームよりも新築建て替えを推奨、「旧母屋の面影を残しつつ、阿蘇の風土や文化に合う快適な家を一緒に作ろう」とプランニングがスタートした。 と、同時に、夫妻は建築士の資格を持つ親戚へも図面作りを依頼していた。しかし見比べれば比べるほど、もう少しこだわりたいというところに手が届かないもどかしさを感じたという。「要望、疑問、質問を率直にぶつけるうちに自分たちの建てたい家がはっきりしてきた。病床にあった母の部屋を皆が集まるリビングの隣に設けたり、家事室やシューズクロークを作るという提案には、自分たちのライフスタイルを理解し、より良いものしてくれると感動しました」。

三世代で穏やかな時間が流れるT邸。旧母屋から引き継がれた古時計と太い梁も印象的だ。②

さらに、背中を押されたもう一つの理由がある。リフォームにせよ新築にせよ「自分たちで支払えるのか?」という大きな不安を、ファイナンシャルプランナーの林田倫隆さんにじっくり相談できたことだ。林田さんは、「家を建て、二人の子どもを育てながら三世代で暮らしたい」という夫婦の望み(ライフプラン)に基づく詳しいキャッシュフロー表を作成し、将来に必要なお金の流れを解説。「具体的なシミュレーションをした上でOKをもらった時は、未来の土台ができたようで心強かった。『俺たちでも建てられるんだ!』と、一気にテンションが上がりましたね」と夫妻は口をそろえる。 プラン打ち合わせは週に一度。家業の動線に合うよう、玄関とは別に土間の通路を作る案や、屋外トイレの設置、雨天でも作業ができる下屋の追加など、さまざまなプランが持ち上がっては採用や却下となった。「遠慮なく、そりゃなかばい!(笑)と言ったり、先生のセンスで! とお任せしたり。ある日は話が脱線したままだったことも。打ち合わせ中はずっと笑っていた気がします」とまた笑う。 ところがいざ契約となった直後、Yさんの母が亡くなった。誰もが長期延期もやむなしと思ったとき、父が再開を促してくれたという。「新しい厨房について熱心に考えていたり、皆で囲むこたつは欲しいねと意見をしたり。母親がいちばん楽しみにしとった家ですけんね」父Yさんが目を細める。

ほっと気持ちがやすらぐ畳敷きの客間。襖や壁には黒色の漆喰仕上げが施され、土壁だった旧母屋の面影を残している。③

そうした思いとともに8月に着工。母屋の解体には「とても見ておられず、敢えて現場に行かなかった」(夫Yさん)、「名残を惜しんで何度も何度も現場に来て、目に焼き付けました」(妻Sさん)と、対照的だった二人だが、旧母屋を支えていた太い2本の梁や古時計を新家屋に引き継げるとわかった時は、互いに胸がいっぱいになったそうだ。 半年後に竣工。三度に渡って開かれた新築祝いでは、リビングと客間をつないだ畳の広間に数十台の祝い膳が並び、子どもから大人まで大勢の祝い客で賑わったという。そのまん中でほほ笑んでいた母の写真を傍らに、T家族は日々を紡いでいく。その笑顔は、ここ「和続きの家」はいのちをつなぐ家なのだと教えてくれているようだった。

(取材/坂口紀美子)
2階ホールから顔を覗かせ、リビングとの会話もはずむ。④
建築家のすすめで設置したシューズクローク。外仕事をする機会の多い家にいまや欠かせない場所だ。⑤
家づくりに関わったみんなで記念撮影。「一生もののファミリーのような関係が築けました」とにっこり。⑥
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■和続きの家

所在地

熊本県上益城郡山都町

主要用途

専用住宅

家族構成

お父様+夫婦+子供1人

設計

福永英司/ag福永建築事務所

施工

ASJ阿蘇・熊本スタジオ[株式会社江藤社]

構造・構法・規模

木造在来工法

地上2階   軒高 6,090mm 最高の高さ 6,683mm

建築面積 155.91m2

延床面積 148.64m2

1階   110.55m2

2階   38.09m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板

外壁 サイディング

開口部 アルミサッシ

外構 コンクリート打ち放し

主な内部仕上げ

リビング

床 無垢材(アフゼリア)・和紙畳

壁・天井 クロス貼り

和室

床 和紙畳

壁 ダイアトーマス塗り

 天井 クロス貼り

洋室

床 無垢材(アフゼリア)

壁・天井 クロス貼り

主寝室

床 無垢材(アフゼリア)

壁・天井 クロス貼り

工程

設計期間 2014年3月~2014年8月

工事期間 2014年8月~2015年1月

撮影

TechniStaff 針金洋介

1階平面
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2階平面
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福永英司

[福岡県北九州市]

1971年福岡県生まれ/1995年九州産業大学工学部建築学科卒業後、株式会社高橋建築設計事務所に勤務/1997年株式会社スズキ設計入社/2001年株式会社小野設計入社/2003年ag福永建築事務所設立

こちらのご依頼を受けた際、ご夫婦、ご両親、そしてこれから生まれてくるお子様、皆が一つの家で暮らせる二世帯住宅が大きな要望でした。 「和続きの家」とは間仕切りを解放することで和室の空間をリビングと繋げ、和を続かせるという意味で付けた名前です。計画当初から誰よりもこの新築を楽しみにされ、喜んでくださっていたのがお母様でした。 そんなお母様に、なるべく閉鎖的にならず、いつも家族と近い距離で生活ができるようにと計画したのがこの「和続き」という空間です。計画途中でお母様がお亡くなりになり、一時は計画の延期とのお話もあったのですが、お母様の思いを建主のT様から伺い、設計、スタジオ共に計画を続行させていただきました。 竣工祝いの際、仕切りを解放し和続きとしてテーブルを並べ、多くの人がお母様の写真が飾られている和続きの空間でわいわいとお話をしていました。リビングから吹き抜けとなり、繋がっている2階のホールからは子供たちが顔を出し、下にいるお母さんと会話をしています。 そんな様子を見た親戚の方が、「お母様はこんな風に皆がひとつに集まって賑やかに暮らせる家が建つことを本当に楽しみにして、毎日私たちがお見舞いに行くといつも嬉しそうに話していました」と伝えてくれました。あまりの嬉しさに涙が出ました。 ご夫婦の優しさに溢れ、ご家族の繋がりに寄り添える。そういう幸せに満ちた住宅をご提案できたと思います。

ASJ阿蘇・熊本スタジオ

[株式会社江藤社]

スタジオマネージャー:田中達磨

「和続きの家」の家づくりの始まりは、T様からのお電話でした。 イベント開催中に私に連絡があったのでご来場いただき、複数の建築家の方と面談していただきました。面談された次の日には福永先生に決めるとのご連絡がありました。なぜ福永先生かとお聞きしたところ、なんでも話ができそうとの理由でした。 その後、まずはFP(ファイナンシャルプランナー)による資金相談と総予算の決定をしていただき、それからヒアリング、1stプレゼンと進んでいきました。通常でしたらプレゼン後に、家族やご夫婦でご検討いただき、次回の打ち合わせで再度ヒアリングを行い、次の打ち合わせでヒアリングした内容を反映したプランの提出といった流れですが、今回はご検討いただいたことをメール等で情報共有し、再度ヒアリングすることなく打ち合わせができる環境づくりをして、時間の短縮を行いました。 お引き渡し後にはお子様もお生まれになり、新居でお父様とT様ご夫婦そしてお子様との新生活をスタートされました。今回、家づくりを決めてから、スタジオ開設以来最短でお引き渡しができました。これも福永先生と林田さんや業者の皆様のご協力があったからこそできたことと感謝いたします。きっと天国のお母さまにもいいご報告ができたと思いますし、温かく見守ってくださっていると思います。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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