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ASJ Works Close-up

青空と雑木林を取り込む心地よいコートハウス

愛知県名古屋市

竜泉寺の家

設計 六鹿篤/Architect6建築事務所
施工 ASJ名古屋名東第一スタジオ[株式会社ヤマシタ工務店]

吹き抜けの大きな窓からは、壁に切り取られた空と雑木林が眺められる。

「このウッドデッキに寝転がって、空を眺めていると、ほんと気持ちいいんですよ。暗くなったらランタンを持ってきて、星空を眺めるんです。ライトアップされた中庭は、昼間とはまた印象が変わって、すごく好きですね」
住み始めて4年半。建主のTさんがお気に入りの場所を教えてくれた。
Tさんご夫妻が「未来をのぞく住宅展」を訪れたのは2009年のこと。しかし、今回設計を担当した六鹿篤さんのことは、以前より知っていたのだという。
「実は、かなり前から家づくりの参考のために、いろんな建築家のホームページを見ていて、『この方の作品は良いなぁ』と思って保存していたなかに、六鹿さんが入っていたんです」
 そんなとき、六鹿さんが参加するイベントのチラシが投函され、運命を感じたTさんはすぐに参加を決意。会場で、長年膨らませてきた家づくりへの熱い想いを六鹿さんに伝えた。当初は、室内で愛車を眺められるガレージハウスを希望していたのだが、建築予定地があるのは建ぺい率30%と条件の厳しい風致地区だったため、居住スペースの確保を考えると断念せざるを得なかった。そして、六鹿さんから提案されたセカンドプラン。夢にまで登場したという、ガラス壁を備えたコートハウスのCGを見たTさんは、理想通りと納得。そこからトントン拍子で家づくりが進んだ。

外観を見ると大きな窓は見当たらず、閉じた印象の家。しかし、中庭を介して外へと開いており、十分な採光と通風を叶えている。①

開放感あふれる吹き抜けのリビングルーム。右手上方の空間は子ども部屋になっており、開口部でリビングとつながっているが、引き戸を閉めることで完全に個室となる。②
ペンダントライトはダイニングルームのルイスポールセンの照明だけ。視界を遮らないダウンライトを極力使用して空間の広がりを強調している。③

 そして完成したのは、外からは閉じていて、中からは開いている家。壁で囲むことでプライバシーを守りつつ、中庭により採光や通風を確保している。中央に位置するリビングにくつろぐと、吹き抜けの窓からは抜けるような青空と、雑木林が眺められる。そして、同じく中庭に面した和室からは、フロストガラスによって向かいの住宅は見えず、とはいえ外の気配が遮られることなく、やはり青空だけが目の前に広がる。
建ぺい率30%をクリアすべく、単なる通路となるスペースは極力省き、壁面収納を活用し、できるだけ居住空間を広く感じられるように配慮されたプラン。たとえば、お気に入りの食器やオブジェを飾るためのニッチを設けるにも、わずかな無駄もないように緻密な計算がなされている。
 「壁で囲まれた場所で洗濯物を干すことに抵抗があったんですが、設計の段階で六鹿さんが季節ごとの日差しの入り方をCGで示しながら説明してくださったんです。実際に住んでから洗濯物を干しても、確かにちゃんと乾きますね(笑)」と奥様。
家で過ごす時間の多い奥様は生活動線や機能面を、家づくりへのはっきりとした理想をもっていたTさんはデザインを。厳しい条件のなかで六鹿さんは、それぞれの希望を叶えたのだ。
 「打ち合わせのなかで繰り返し言っていたのは〝抜け感〟と〝かっこいい家〟。壁に囲まれていても視界が遮られず抜ける感じがあって、なおかつかっこいいデザインを求めていたんです」とTさん。その価値観を建主と設計者が上手く共有できたからこそ、理想の家が完成したのだろう。
念願の我が家で毎日を心地よく過ごしている。しかし、プランを練ったり、家が完成していく様子を見守ったりするのがなによりも楽しかったと話すTさん。実は、また家づくりに挑戦したいと思っているとのこと。
 「40歳の理想の家は妥協することなく完成したけれど、50歳、60歳にはまた別の理想の家があると思うんです。子どもたちが成長して、ライフスタイルも変わっているだろうし。建てられるのであれば、あと2、3軒は建てたいですね。またお願いします(笑)」とTさんは語る。
 今に満足しているからこそ、未来にまた満足できる家を建てたい。〝建主の夢をかたちにする〟という建築家との家づくりの醍醐味を十分に楽しめて納得しているからこそ、新たな夢が生まれたのに違いない。
(取材/吉田桂)

座ったり、寝転がったり、家族全員でくつろぐリビングルーム。階段はスリムなので、部屋の中央にあっても圧迫感が抑えられている。④

寝室として使われている、中庭に面した和室。フロストガラスの壁は外からの視線を遮断しながらも、外の気配を程よく感じさせてくれる。中庭のウッドデッキはTさんのお気に入りの場所。⑤
浴室の窓の外には、黒竹が植えられたバスコートを用意。風を感じながら、ゆったりと入浴が楽しめる。⑥

■竜泉寺の家

所在地

愛知県名古屋市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供2人

設計

六鹿篤/Architect6建築事務所

施工

ASJ名古屋名東第一スタジオ[株式会社ヤマシタ工務店

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階  
軒高 6,036mm  最高の高さ 6,986mm
敷地面積 289.97m2
建築面積  85.96m2(建蔽率29.66% 許容30%)
延床面積 137.69m2(容積率47.48% 許容50%)
 1階   85.96m2
 2階   51.73m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板 瓦棒葺き
外壁 ジョリパットコテ仕上げ
開口部 アルミサッシ
外構 コンクリート洗い出し仕上げ

主な内部仕上げ

LDK
 床 厚単板フローリング
 壁・天井 石膏ボード下地 クロス張り
和室
 床 畳t=55mm
 壁・天井 石膏ボード下地 クロス張り
主寝室、子供室
 床 厚単板フローリング
 壁・天井 石膏ボード下地 クロス張り
洗面所
 床 コンクリート下地 磁器質タイル張り
 壁 コンクリート下地 磁器質タイル張り
 天井 バスリブ

工程

設計期間 2009年12月~2010年5月
工事期間 2010年10月~2011年4月

撮影

長谷川潤(表紙 ①③④⑤⑥)
アーキフォトKATO(②)

2階平面
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1階平面 縮尺1/200
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東西断面図 縮尺1/200
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南立面図 縮尺1/200
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六鹿篤 

[名古屋市天白区]

1976年愛知県生まれ/1999年名城大学理工学部一部建築学科卒業後、株式会社車戸建築事務所に勤務/2002年株式会社プランテック総合計画事務所入社/2003年建築設計室アーキスタジオ入社/2008年Architect6建築事務所設立

 初めて建主のT様と出会ったイベントのことは今でも覚えています。家づくりに胸躍らせるご主人と、いまいち乗り気でなさそうな奥様。
ご主人は以前から私の事務所のホームページをご覧になっていたそうで、イベント当日にプランニングコースを申し込まれ、後日ご希望通りのガレージ付コートハウスのプランのプレゼンを行いました。
 このプレゼンで奥様の家づくりに対するスイッチが入ったようで、ご家族にとって理想の家とはどういったものか、ご夫婦で真摯な話し合いを持たれたそうです。
敷地面積は90坪弱あったものの、そこは一種風致地区。建ぺい率30%、建築基準法より厳しい北側斜線制限や外壁後退など、特に規制が厳しい地域でした。そのような条件の下、ご家族のご要望を全て叶えるため、1センチも無駄にしない意気込みでセカンドプランを作り上げました。
 今思えばあの時が本当の家づくりのスタートラインでした。「夢の中で見た家と全く同じだ!」とご主人が感動されたこのセカンドプランから細部の修正を重ね、「竜泉寺の家」は完成しました。細かな修正とはいえ厳しい建ぺい率がもたらす影響は思ったより大きく、とても骨の折れるものでした。しかしこの時の経験がとても大きな糧となり、「竜泉寺の家」以降続く風致地区内での仕事に大いに生かされています。
またこの家の特徴であるフロストガラスのスクリーンを支えるステンレスの骨組みは予算超過の元凶となり、木製の枠への設計変更をT様に提言しました。ところが幸いにも以前お仕事で溶接の経験のあったご主人が、ご自身で製作されることとなり、イメージ通りの美しいガラススクリーンが出来上がりました。
 T様の家づくりに対する情熱、厳しい設計条件の下での葛藤、そして私の要求に一生懸命応えてくれた現場監督。「竜泉寺の家」は私の設計のステージを一つ上の段階へと押し上げてくれた、とても思い入れの深い住宅です。この家が今回、素敵な賞を頂けたことはとても喜ばしく、心から感激しています。

ASJ名古屋名東第一スタジオ

[株式会社ヤマシタ工務店]

スタジオマネージャー:山下直樹
 T様は、2009年9月26日に「未来をのぞく住宅展」にご来場くださり、アカデミー会員に入会されました。会場では、とても仲の良いご家族だという印象を受けました。特にご主人が、家づくりに対する夢や希望を熱く語っておられました。かなり理想も高く持っておられ、実現するにはかなり大変と思いました。
 その後、スタジオにある作品集やサイトなどをご覧になって六鹿さんの作品を気に入られ、実際にお会いになったうえで12月にプランニングコースを開始しました。周りの環境や敷地の魅力を最大限に活かした六鹿さんのプランは、とても夢のある素晴らしい提案で、2010年2月には設計契約となりました。
 詳細設計、詳細見積もりへと進めるなかで、越えなければいけないハードルはありましたが、三者で打ち合わせを重ね、実現に向けお互い協力して解決しました。建主のT様はもちろん、設計者の六鹿さんや現場監督の「より良い住まいをつくる」という気持ちの入った、素晴らしい家が完成したと思います。T様ご家族にも非常に満足していただき、感動の引き渡しをすることができたことを今でも感謝しています。
 四季折々、その時々でいろんな表情を見せてくれるこの家に愛着を持っていただき、ご家族と共に家が成長していくことを願います。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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