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ASJ Works Close-up

The Comfortable House/心地のよい家

鳥取県鳥取市

sei_house/rustic

設計 高橋吉昭/一級建築士事務所ステラジアン
施工 ASJ鳥取スタジオ[株式会社田中建設]

まるでカフェのようなリビングでのお二人。2階の窓下にはメンテナンスのためにキャットウォークを設置。

開放感満点の居心地のよさ

「大きな木のある家(アキニレ希望)」「鉄筋コンクリートづくりで、1階は仕切りのない家」「窓が多くて日当たりのいい家」……。
これは、Sさん夫妻の家づくりの要望。奥様が見せてくださった、驚くほど分厚いファイルに残されていた。「ゆずれない条件」という文字が、ご夫妻の強い意志を伝えている。
「どんな家に住みたいかと、夫と私のそれぞれで考え、調整していきました。二人ともが望んだ構造が、仕切りのない空間でした」
「そうそう。体育館のような開放的なダイニングやリビングがいいなと、常々、思っていました」
このように、Sさんや奥様は、自分達が思い描く家を、時間をかけて言葉に集約。その言葉をもとに、高橋吉昭さんは設計面で、ASJ鳥取スタジオは施工面で、また、Sさん夫妻は建主として、それぞれが話し合い、知恵を出し合った。
それは、ASJが追求する三位一体の家づくりであり、高橋さんが建築のコンセプトにする「トライアド」(三つ組・三幅対・三和音)である。こうした三位一体でつくられたS邸は、心地という個性や感性など感覚的なものまで、美しく共鳴し合っている。

庭を広くとることで、北向きとは思えない明るくて開放的なファサード(正面)に。2階角の全面ガラスの物干室は、「雨や雪のときでも洗濯物が干せるのでとても満足しています」と奥様。①

TRUCK(トラック)の使い心地に共鳴

「TRUCKの家具達が馴染む家」。これもSさん夫妻の要望の一つ。「TRUCK」とは、オリジナル家具を製造販売する「TRUCK FURNITURE」のこと。奥様はこのお店の大ファンで、独身のころから机や椅子などを、一つずつ増やしてきた。
なかでも「FKソファ」は秀逸。一般的なソファに比べて、幅広で奥行きが深く、背もたれの部分には羽毛が使われるなど、座り心地がかなり研究されている。
使い心地へのこだわりは内装にも。二人のお嬢さんの成長を考えて2台設置した洗面台は、苦労の末に探し当てたイタリア製である。
「モダンなデザインのものはたくさんありました。でも、そうではないものを望むと、たちまちクラシックなデザインばかりに。使い心地がよく、デザイン性に優れたものに出会うまで、高橋さんは辛抱強くご提案くださいました」
そんな「トライアド」によって、高橋さんはSさん夫妻の感性を確実につかんでいく。奥様が特に「ビックリしました」と感動したのが、上げ下げ窓についたレトロな留め金。心憎いほどSさん夫妻のセンスにマッチしている。
梁などのないシンプルな空間には、Sさん夫妻が自ら探してきた船舶用や工場用の照明器具がよく映えている。「あえて、主張しない空間をめざしました」とは高橋さんの言葉。

TRUCK社製のダイニングセットだけでなく、照明器具一つひとつにもこだわりが感じられる。リビングまで見通せるキッチンは、家族との一体感を強めてくれそう。②

キッチン奥の壁はレンガの間からセメントをはみ出させるなどワイルドな仕上げになっている。③

雪国で北向きだけど夢見心地

リビングやダイニングは開放的で、しかも明るい。ところが、建物は北向きで、ここは山陰である。
「庭を広くとり、天井にトップライトがあるおかげで、室内へは光がよく届いています。リビングは吹き抜けですが、薪ストーブに火を入れると、外の寒さが嘘のようで、家族みんなが夢見心地で過ごしています」
奥様は、そんな家族の姿をキッチンから眺めるのが最も好きだとか。Sさんはといえば、薪ストーブの前で過ごす時間がお気に入り。その横では、二人のお嬢さんと2匹の愛犬達が寝息をたてることも。
「犬達は、私達が家を留守にするときや来客時にケージへ入れようと考えていました。でも、可能な限り窮屈な思いはさせたくないと、専用のスペースを設けていただくことを要望の一つに加えました」
そんなSさん家族の愛情を受けているのだろう、ワンちゃん達は、見慣れない取材スタッフに吠えることもなく、自分達の部屋でのんびりと、その様子を眺めている。
なんとも羨ましいペットスペースの上は、子ども達のプレイルーム。なかには、女の子らしいままごとの道具などが並んでいる。そんなプレイルームがあるためか、リビングやダイニングは、おもちゃが散乱することもなく、整然とかたづいている。
三位一体、また、トライアドでつくりあげたS邸には、さまざまな心地のよい時間が、常に流れている。 (取材/香川泰子)

Sさん(手前)と奥様(2階)、建築家の高橋さん(右隣)、スタジオマネージャーの細川さん(奥)による三位一体の家づくりは心地のよさを追求。腰かけているのがTRUCKの「FKソファ」。④

留守のときなどに愛犬達に入ってもらうペットスペースは走り回れる広さ。⑤
ペットスペースの上はお嬢さん達のプレイルームに。⑥
玄関の奥にはご家族用の出入口があり、シューズボックスや手洗い場などが設けられている。⑦

■sei_house/rustic

所在地

鳥取県鳥取市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供2人

設計

高橋吉昭/一級建築士事務所ステラジアン
 担当 髙橋吉昭・原田順三

施工

ASJ鳥取スタジオ[株式会社田中建設]
 担当 細川秀一・藤原治

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階  
軒高7,320mm 最高の高さ7,570mm
敷地面積 369.82m2
建築面積 110.53m2(建蔽率29.88% 許容 60%)
延床面積 201.43m2(容積率54.46% 許容200%)
 1階 105.58m2
 2階 95.85m2

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板立てハゼ葺き 雪止め2段
外壁 ジョリパッドローラー仕上げ
開口部 アルミサッシ 木製サッシ(ニヤトー)
外構 磁器質タイル貼り 天然石ピンコロ敷き

主な内部仕上げ

玄関
 床 磁器質タイル貼り
 壁 珪藻土コテ仕上げ
 天井 ビニルクロス仕上げ
リビング
 床 無垢フローリング(ナラ)一部御影石貼り
 壁 珪藻土コテ仕上げ 一部乱尺天然石貼り
 天井 ビニルクロス仕上げ
ダイニングキッチン
 床 無垢フローリング(ナラ)
 壁 珪藻土コテ仕上げ 一部レンガ貼り
 天井 ビニルクロス仕上げ
寝室
 床 無垢フローリング(ナラ)
 壁 ビニルクロス仕上げ
 天井 ビニルクロス仕上げ

工程

設計期間 2013年10月~2014年08月
工事期間 2014年10月~2015年03月

撮影

水野真澄(表紙 ③④⑤⑥⑦)
上田宏(①②)

2階平面
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1階平面 縮尺1/200
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断面図 縮尺1/200
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高橋吉昭

[大阪市中央区]

1968年東京都生まれ/1989年鹿光学園青山製図専門学校建築設計科卒業後、株式会社高松伸建築設計事務所に勤務/2000年一級建築士事務所スタジオイー共宰/2008年アーキデリック・一級建築士事務所 大阪に改称/2009年一級建築士事務所ステラジアンに改称

 ずっと、5枚刃振動カミソリを使ってきたが、最近両刃カミソリに替えてみたところ、なんだか良い。日々使用するものは構造がシンプルで手触りが「しっくり」くる感じが気に入っている。
 もとい、Sさんとは山陰らしい春の日(?!)にお会いしました。とってもチャーミングなご夫婦で、かつ住みたい空間のイメージを明確に持っておられて好感を持ちました。その年の秋に計画は本格的に進むのですが、Sさんから発せられる言葉は特徴的でした。「ワンルームな空間」「ピカピカではないもの」「経年変化する素材」「薪ストーブ」「大きなアキニレの木」そして「家具とマッチする空間」など重要な言葉を頂き、その言葉たちが完成した空間をまさに形作っています。
 リビングとダイニングキッチンを分割する部分に薪ストーブと階段を象徴的に配置して双方の空間を緩やかに繋いでいます。キッチンは特徴的なアイランドキッチンと素材感一杯のレンガ壁、この家の特徴を顕著に表す場でもあります。レンガ壁を施工するにあたり、Sさんと我々(設計・施工チーム)との共通の感覚が生まれました。言葉にするならば「やれてる感」。素材感を生かしつつも綺麗になり過ぎない感じ。ハイテクではなくローテク、平滑よりも手癖感、光沢よりもマット、軽さより重厚感。と、いたる所にやれてる感じが現れます。
 常々、住宅は建主・設計者・施工者の三者の関係が上手に機能した時、良い「住まい」ができると考えており、その関係性を「トライアド」(三つ組・三幅対・三和音)と呼び、自身のコンセプトとしております。Sさんとの関係は正にトライアドな関係で、建主さんの言葉やイメージをカタチにし、つくり上げることができたと思っています。たまたま見学に来た僕の知人に「建主さんとの関係の良さがわかります」と言われました。会話を聞いて感じてくれたようです。最高の賛辞でした。
 道路からアプローチを経て木製の重い扉、そしてもう1枚の重いドアを開いた時の「しっくり感」。冒頭の感覚はこの文章を考えている時、ふっと感じたことです。利便性を追求した空間は数多ありますが、僕たちが創ったこの新しい住まいはシンプルで心地よい空間であり、Sさんの思いの詰まったモノたちで溢れ、時間を重ねていくことで熟成していく「いえ」なのです。

ASJ鳥取スタジオ

[株式会社田中建設]

スタジオマネージャー:細川秀一
 建主のS様は2013年3月の「第23回未来をのぞく住宅展」に来られ、アカデミー会員に入会されました。イベント会場にて高橋吉昭氏との出逢いがありました。
 その後、第2子のご出産や他の建築家との面談などもありましたが、さほど時間をかけず高橋氏へのプランニング依頼が決定しました。同年10月に「広いリビング・ダイニング・キッチン」「無垢ナラフロア」「TRUCK家具の馴染む内装・雰囲気」「薪ストーブ」「ペットスペース」「大きなシンボルツリー」をキーワードにプランニング開始となりました。
 高橋氏がはじめに図面と模型をつかって提案されたプランはS様のご要望にぴったりと当てはまり、建築地のご近所へお住まいの親御様にも好評とのことでした。基本プラン変更のご要望や仕上げ材などの仕様変更が比較的少なかったことを記憶しています。
 数か月後の基本プランニング終了時期には、船舶風の照明器具や黒い鉄骨階段、特注アイランドキッチンの雰囲気など、完成時のイメージもほぼ確定できていました。建主様・建築家・施工者の“三者のイメージ共有”が大切なことを改めて認識させられました。
 現場監督と各職人の多大なご協力のもと、2015年3月に無事お引き渡しが完了しました。お引越し後に伺ったとき、幼いお子様がロフトで遊び、愛犬がペットスペースで寝ころび、ご夫婦が薪ストーブの炎を眺め、それぞれの“縄張り”に馴染んでいる様子が印象的で、満足度の高さが垣間見えました。ご入会から完成までの約2年間に、多少の苦悩と数多くの歓喜で有意義のある時間をいただき感謝しております。
 春間近となりました。あと少しの時間、薪ストーブの“恵み”を充分にお楽しみください。施工者としまして、また薪ストーブ仲間としまして、今後も末永いお付き合いをよろしくお願いいたします。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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