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ASJ Works Close-up

三角屋根に抱かれた眺望の良い二人だけの空間

兵庫県西宮市

苦楽園の家

設計 岸本貴信/一級建築士事務所 CONTAINER DESIGN
施工 ASJ神戸スタジオ[株式会社あんじゅホーム]

台形の土地に上げられた特徴的なピラミッド状の三角屋根。壁もかねたユニークな構造は近隣の人々の話題を集めている。玄関へと続くアプローチは2台分の駐車スペースをかねており、実用性も高い。

予備知識もなく土地を購入

 ここ数年、関西圏における「住みたい街ランキング」の上位を占めている西宮市。そのなかでも、市のシンボルである甲山(かぶとやま)や大阪湾を望める苦楽園に新居を構えたF様ご夫婦を訪ねた。
 聞けば、さほど予備知識を入れずごく軽い気持ちで住宅購入を考えていたとのこと。住宅メーカーや工務店などに一切相談しないまま、ご夫婦にとってなにかと馴染みが深かったこの場所に、造成中の土地のみを購入したという。「土地を買ったのは5月。9月に造成が完了するという条件でした。まず上物を建てていただく業者を決めて土地を購入する、という基本的な知識もなくて(笑)。とりあえず住宅メーカーや工務店に相談しましたが、提案されるのは、予算に応じたごくありきたりな間取りと外観の住宅ばかりでピンときませんでした」

階層状のステップフロアを設けることで明るく広々した空間に。玄関からリビングにかけて拡がる土間が、空間をゆるやかに区切っている。②

〝私たちだけの家〞に住みたい

 F様ご夫婦は以前からお宅拝見番組やリフォーム番組が大好きで、いずれはオンリーワンのお洒落な注文住宅に住みたいと語り合っていたとか。造成地の完成が近づくなか、当時住んでいた神戸市東灘区の自宅に投函されたチラシ夫婦とASJの出会いとなった。「一生に一度の買い物なので、せっかくならオリジナリティと個性にあふれた、私たちだけの家が欲しかった。そこで6月に開催されたASJの建築家展にダメもとで出掛けることにしたんです。〝建築家〞にはどこかハードルが高い印象を抱いていたし、予算もかぎられていましたので」
 会場で、とにかく豪邸ばかりを手掛けているという建築家ではなく、コストパフォーマンスを重視できる方をスタッフにたずねたところ、岸本貴信さんを紹介されたという。「岸本先生に私たちの生活スタイルや家族構成、希望などを伝えたところ、後日、今まで見たこともないような斬新かつ夢のある家の模型を製作してくださって。その場でハートは鷲掴み( 笑) 。その後、内庭やインナーバルコニー、自動車2台分の駐車スペースといった追加希望を盛り込んだ改良案をご提案いただきました。さらには眺望の良さを活かせるように工夫していただき、現在のカタチへと落ち着いたのです」

和室の床窓から見えるのは、ご主人が植えた松の木。訪ねて来たお客様にも楽しんでもらえるよう配慮。③
大阪湾が一望できる、F様ご夫婦お気に入りの眺望テラス。イスに腰掛けてゆっくり景色や会話を楽しむ、とっておきのスペースなのだ。④
あえて壁を作らずオープンにした2階スペースは寝室に。奥に伸びる階段は眺望テラスへと続き、手前のハシゴは上階にあるロフトに繋がる。⑤
ファーストプレゼン時の模型。岸本氏提供

ワンルームを実現した大屋根

 岸本さんは、敷地面積150平方㍍、外壁後退の規制1㍍、建ぺい率40% という厳しい条件のなか、F様ご夫婦がヒアリング時に何気なく口にされた「ワンルームのような空間」という言葉を手掛かりに、特徴ある素敵なピラミッド状の三角屋根構造を思いついたとか。そのうえでコストにも配慮し、杉板やウォールナット、積層材などを巧みに使いつつ塔内に出現した大きなワンルーム内に階層を配置。ついに、F様ご夫婦理想の住まいが誕生した。
「大きな屋根のもと二人で過ごす空間には大満足しています。初めての冬を過ごしましたが意外なほど暖かく、岸本先生と神戸スタジオさんにお願いできて良かったと本当に感謝しています。また、最後の最後にリクエストした眺望テラスからの景色もとてもきれいで、あべのハルカスが見えたときはちょっと感動しました」
 4 年前に結婚されたF 様ご夫婦。人生のパートナーに続き、家づくりのパートナーたちと出会ったことで、自らも学びながら「三位一体」の家づくりに参加。憧れだった住まいを生み出した。この三角屋根は、気持ちのよい眺めとともに、いつの日も和みを与えてくれることだろう。
(取材/堀口訓)

階段スペースの壁面にはめこまれた大きなガラス。プライバシーを守りつつ、明るい光をとり入れる。⑥
各フロアを結ぶ階段は必要最小限のサイズ。土間のある大きな吹き抜けが、中庭のように空間を繋ぐ。⑦ 

■苦楽園の家

所在地

兵庫県西宮市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦

設計

岸本貴信/一級建築士事務所 CONTAINER DESIGN

施工

ASJ神戸スタジオ[株式会社あんじゅホーム]
担当 深見宗久

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階  
軒高 7,685mm  最高の高さ 7,870mm
敷地面積 159.62㎡
建築面積 67.70㎡(建蔽率39.91% 許容 40.00%)
延床面積 95.97㎡(容積率60.13% 許容100.00%)
 1階 53.81㎡
 2階 42.16㎡

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板
外壁 無塗装サイディングボードの上リシン吹付け(細目吹)
開口部 アルミサッシュ
外構 白モルタル木コテ押え
   砕石敷き・割栗石積・植栽・白玉砂利敷

主な内部仕上げ

玄関
 床 白モルタル金コテ押え
 壁 プラスターボードの上クロス貼り
 天井 ラワン合板の上OS塗装
リビング・ダイニング・キッチン
 床 杉板敷き
 壁 プラスターボードの上クロス貼り
 天井 杉板・化粧梁現し
パントリー、WIC
 床 杉板敷き
 壁 プラスターボードの上クロス貼り
 天井 ラワン合板の上OS塗装
洗面・脱衣室
 床 杉板敷き
 壁 プラスターボードの上クロス貼り
 天井 プラスターボードの上クロス貼り
和室
 床 タタミ敷き
 壁 畳寄せ
 天井 杉格子天井OS塗装
スペース1
 床 杉板敷き
 壁 プラスターボードの上クロス貼り
 天井 杉板・化粧梁現し
スペース2
 床 杉板敷き
 壁 プラスターボードの上クロス貼り
 天井 ラワン合板の上OS塗装

工程

設計期間 2014年8月~2015年2月
工事期間 2015年3月~2015年8月

撮影

白谷賢(表紙 ②③⑤) 

冨田英次(①④⑥⑦)

断面図 縮尺1/200
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ロフト平面
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2階平面
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1階平面 縮尺1/200
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岸本貴信

[神戸市中央区]

1974年兵庫県生まれ/1997年福山大学工学部建築学科卒
業後、株式会社瀬戸本淳建築研究所入社/2007年一級建
築士事務所CONTAINER DESIGN 設立/2015年株式会社一
級建築士事務所CONTAINER DESIGNとして法人化

 F様との出会いはASJ神戸スタジオの第2回目のイベントでのこと。家づくりの話で盛り上がりそのままプランニングコースを開始することになりました。
 ご要望は「明るい中庭のある家、ワンルームのような空間、景色を望める家」でした。区画分譲された敷地はそれぞれに高低差があり、阪神間の眺望を楽しめる立地。敷地面積は150㎡ほど、第一種低層住居専用地域のため外壁後退の規制が1.0m、建ぺい率は40%です。この規制で中庭型の家は居住空間を十分確保するには難しく、どのようにすればF様の望む家になるのか悩みました。それを解く鍵が「ワンルームのような空間」というF様ご夫婦の言葉だったのです。
 境界から1.0m内(うち)に入ったエリアが建築可能範囲となるため、まずその範囲の中心を抓むように持ち上げ大きな屋根を作るイメージをしました。すると、そこには敷地と同じ平面形の屋根に覆われたワンルームの空間が生まれます。その中にLDKと寝室他を階層に配置。また、景色を望むための塔をワンルームの空間と繋げました。その塔の中には将来必要となるであろう予備室を2部屋。大きなワンルームの空間と塔との間に設けた階段が、それぞれのスペースや塔の屋上へと導いてくれます。玄関から繋がる階段スペースは土間で仕上げています。大きな吹き抜けがあることで、明るい外のような、中庭のような空間となりました。
 ヒアリングの際には外構の植栽はそんなにいらないと仰っていましたが、打ち合わせが進むにつれ、また、現場が進むにつれ植栽の話が多くなったり、とても気さくなご夫婦の掛け合いが毎回打ち合わせの場を和ませてくれていたことを、とても感謝しております。

ASJ神戸スタジオ

[株式会社あんじゅホーム ]

スタジオマネージャー:深見宗久
 Y様は2012年の「第18回未来をのぞく住宅展」に来場され、入会されました。他県から金沢に移住して7年。入会当初から、「自然があふれる場所で、終の住処を建てたい」という希望をお持ちでした。
 まず、土地探しからスタジオでサポートさせていただき、Y様の気に入る土地が見つかりました。そこは、河川に面した傾斜の地で、造成・擁壁工事、地盤改良や建築基礎の増強工事が必要ではありましたが、Y様の思い描く雰囲気が得られる最適な土地でした。そこから、県内の建築家 石村聖一郎氏が現地を確認し、プランニング開始となりました。ご夫婦共にお仕事が忙しく、限られた時間の中で、一歩ずつプランは色付いていきました。「川の流れと木立ちを眺める家」は、その名のとおり、リビングに入ったときにまず目に飛び込んでくる風景が何よりの特徴ではないかと思います。春夏秋冬、季節の移り変わりを楽しみながら、日々を過ごせるというのはとても贅沢なことのように思われます。
 LDKの中には、ワイングラスを眺めることのできるガラス棚、室内と屋外とを結ぶバーベキュールームなど、Y様の趣味、生活を楽しむための工夫がたくさん盛り込まれています。また、リビングには2階へ通じる吹き抜けが配置され、夏は川からの風が通り、冬は薪ストーブのあたたかい空気が伝わり、1階と2階の空間を繋げてくれます。その他にも、紺色を基調とした和室や、ショップ顔負けのワインセラーなど。Y様の趣味であるワインと音楽、そして愛犬との生活を楽しめる空間が出来上がりました。
 今回の取材も快諾・ご対応いただきましたこと、改めて心より御礼申し上げます。また、これからも川の流れと木立ちを眺めながら、ゆっくり時間を過ごしていただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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