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ASJ Works Close-up

ちょうどいいサイズの終の棲家

神奈川県座間市

座間の住宅

設計 河内真菜/一級建築士事務所アトリエマナ
施工 ASJ町田スタジオ[ヤマゼン建設有限会社]

ダイニングテーブルからのLDK。照明はルイスポールセンの「PH5」。

玄関側から吹き抜けのLDKを望む。

 神奈川県座間市と町田市のほぼ間にある閑静な住宅地。
 訪問したのは夕刻過ぎで、日が落ちた状態であった。似たような住宅が並ぶ中、一見、雰囲気のいい街灯らしきものが見えたので近づくと、そこが今回の住宅。
 玄関をくぐると、高さ4・3㍍の吹き抜け空間が出迎える。吹き抜け空間はLDKになっている。天井のシーリングファンはゆっくり回って、空気を循環しながら、程よい室温にしていた。ダイニングの照明は、世界中で愛用されるデンマークの照明「ルイスポールセン」。フローリングの茶系と白い壁面に実にマッチしている。
 丸いダイニングテーブルに腰掛けると、温かいハーブティーを出していただいた。ふと庭の方を見ると、石畳、畑、立派な柿の木が目に飛び込んできた。思わず「ここはカフェですか?」と尋ねると、「そうしたいです」と奥様がにっこり微笑んだ。
 
 建主のHさんは、2009年4月、北海道で開催されたASJのイベント「未来をのぞく住宅展」でアカデミー会員に入会。ご主人が函館の高校で教鞭をとられており、当時は、函館で土地探しからの計画であった。
 そんな折、神奈川県座間市にあるご主人の実家で、一人暮らしをされていたお母様との同居の話が出る。そこで2013年、夫婦で神奈川に移り住み、お母様と一緒に暮らすことを決意されたのであった。

南西側外観。片流れの屋根が、南側の採光の役割も果たしている。
2階書斎。
1階和室は茶室風のつくり。

 建築家は、東京を拠点に活動している河内真菜さん。ASJでいくつかの住宅の実例写真集を見た中で、河内さんの設計した住宅が気に入り、北海道でご本人と会って、一目ぼれされたとのこと。ここからHさん夫婦と河内さんの、北海道・東京の遠距離恋愛がスタートする。
 やり取りや打ち合わせは、河内さんが北海道を数回訪ねたほか、Hさん夫婦が神奈川に来られた時にお会いしたり、メールを用いたりして行なわれた。そしてプランニング開始から約2年後に完成を迎える。
 当初は、築50年の実家をリノベーションする案も挙がったが、終の棲家としては広すぎるとの結論にいたる。また長年、自然に恵まれた北海道で生活してきたHさんは、室内にも自然を感じるつくりを望んでいた。
 そこで河内さんが提案したのは、手入れの行き届いた庭を借景として、家族が程よい距離感で趣味を楽しむコンパクトサイズの住宅であった。ご夫婦二人の距離感と、庭や周囲との関係性、この両方を叶えるため、河内さんは、住宅の屋根のカタチを片流れにした。
 おなじみの三角屋根である切妻と比べ、片流れは軒が深くとれるため、日差しが強くても部屋の室温を一定に保つ効果がある。また、庭に面したLDKが吹き抜けであることから、2階の書斎や寝室からも、庭にいる人の気配を感じることができる。室外と室内がうまく融合されている光景でもある。
 コンパクトなサイズの住まいでありがちなのは、モノがあふれる、ということだ。しかもHさん夫婦は、ご主人が書道や読書、奥様は陶器や小物の収集、庭いじり、バイオリンなど多趣味。一瞬、モノにあふれた光景が目に浮かぶが、この住宅はそんなことはない。Hさん夫婦は選りすぐりのモノしか集めていないのだ。そのため、室内に並べられているモノたちが自然光を浴びている様は、まるで以前からそこに存在するオブジェのようであった。
 ダイニングテーブルに腰掛けた位置から、ご夫婦が北海道で飼っていた愛犬の写真が目に入った。キッチンの側面をうまく使った小さい棚に、奥様が集めてきた陶器と一緒に並べてあったのだ。
 北海道の思い出も一緒に移ってきたこの住まいは、いずれ古いものと新しい思い出で一杯になるだろうが、それらを十分に包み込む、ちょうどいいサイズであった。
(取材/ASJ千葉基)

50年近い柿の木を残し、石畳と畑で構成した庭。南側なので採光は十分。

2階テラス
2階寝室。
階へ上がる階段前のスペースを活用し、奥様のデスクに。

■座間の住宅

所在地

神奈川県座間市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦

設計

河内真菜/一級建築士事務所アトリエマナ
構造 馬場貴志構造設計事務所

施工

ASJ町田スタジオ[ヤマゼン建設有限会社]

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階  
軒高 6,472mm  最高の高さ 6,715mm
敷地面積 128.05㎡
建築面積 59.76㎡(建蔽率46.66% 許容60%)
延床面積 77.38㎡(容積率60.43% 許容160%)
 1階 52.54㎡
 2階 24.84㎡

主な外部仕上げ

屋根 t0.4ガルバリウム鋼板
外壁 ジョリパットゆず肌仕上げ
開口部 アルミサッシュ(防火戸)
外構 土間コンクリート洗い出し仕上げ、砂利・砕石
庭 建主による施工

主な内部仕上げ

リビング
 床 木製フローリング(カバ材)
 壁・天井 クロス貼り
和室
 床 和紙畳(市松模様)
 壁・天井 クロス貼り
サニタリー
 床 木製フローリング
 壁・天井 クロス貼り
寝室
 床 木製フローリング
 壁・天井 クロス貼り

工程

設計期間 2014年4月〜2014年11月
工事期間 2014年12月〜2015年6月

撮影

鳥村鋼一

2階平面
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1階平面 縮尺1/200
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断面図 縮尺1/200
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河内真菜

[東京都豊島区]

1974年福島県生まれ/1998年日本女子大学家政学部住居学科卒業/2000年日本女子大学家政学研究住居学専攻修士課程小谷部研究室修了後、株式会社陶器二三雄建築研究所に勤務/2004年河内建築設計事務所パートナー/2010年一級建築士事務所アトリエマナ設立/2014年株式会社一級建築士事務所アトリエマナに法人化

 座間の閑静な住宅街に位置する、50代のご夫婦の終の棲家である。親族が暮らしていた、思い出あるこの土地で、あまり大きくなくてよく、二人で趣味とともにゆったりした時間を過ごしたいと言うご要望であった。手入れの行き届いた対の柿の木など、思い出の木々とともに、庭をたのしみながら暮らす家を実現したかった。
 まず、敷地全体に片流れの大屋根を置く。木々を残しつつ庭も内包しながら、お二人の生活を包み込むような、おおらかで木陰のような居場所としたかった。
 1階は、居間や食堂、客間や水回りなどのパブリックスペースからなる。敷地にL型にボリュームを配置することで、プライバシーを守りながら、全ての部屋から庭を楽しめる計画とした。深い庇のある縁側は、庭を眺めながら、ゆっくりとお茶を飲んだり、庭いじりの休憩スペースとしても機能する。独立性のある和室は、一人になることもできる。
 平屋を少し大きくした吹き抜けの2階は、プライベートスペースからなる。障子越しにリビングとつながる寝室は、小屋裏のような居心地のよい寝床としたかった。書斎には、リビングに面して窓があり、声をかけたり気配を感じることができる。
 趣味の陶器や小物、家具などの思い出の品々が置かれ、長年たしなんだバイオリンや書道などの趣味のスペースが配置され、家全体が一体感あるお二人の居場所。焼き菓子の香りや、音楽が聞こえたり、明かりがともっている部屋を感じながら、それぞれ別のことをしてもお互いの気配を感じることができる、お二人だけの家が実現した。

ASJ町田スタジオ

[ヤマゼン建設有限会社]

スタジオマネージャー:山本一之
 先日、H様ご夫妻の新居のお披露目会に呼ばれました。河内先生、スタッフの井上さん、SVの尾見さん、現場監督の高橋さんと私の5人で伺いました。
 工事中、庭はH様が引っ越した後にご自身で造られると話していらっしゃいました。もう引っ越し後しばらく経っており、見事に庭が完成していました。とても綺麗にできていました。野菜や果物のスペースもしっかりありました。自分の庭で採れた野菜や果物って、なんかおいしそうな感じですよね。
 リビングで食事を頂きましたが、どの料理もとてもおいしかったです。とくに最後に食べたそばが最高でした。H様が打ったそばで、キッチンにはそば打ちの大きな板がありました。また、自家製のつゆも最高の味でした。生涯食べた中で、一番おいしいそばでした。何年たっても忘れないでしょう。ごちそうさまでした!
 またの機会を。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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