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ASJ Works Close-up

家族みんなが参加してつくったデザインと機能が調和した家

大分県別府市

VOID CUBE

設計 西村友吾/ニシムラユウゴ建築アトリエ
施工 ASJ大分別府スタジオ[光綜合工業株式会社]

黒い外壁とキューブ型の建物がひときわ目を引くHさん邸。土地などの諸条件を考慮してこうなった。光にあふれた内部とは対照的だが、外観と内部のギャップもまた、この建物の面白さでもある。

①家の中心にあるのは吹き抜けのホールと階段。天窓からは明るい光が各部屋に降り注ぐ。

 温泉地として有名な大分県別府市内の高台。路地が入り組んだ静かな住宅地に建つのがHさん夫妻のご自宅だ。三方を道路に囲まれたキュービック型の建物は、周囲の住宅の中でもひときわデザイン性が光っている。けれども一歩室内に入ると、細かいところまで機能性を考えた造りになっている。
 Hさん夫妻がASJのイベントを初めて訪れたのが約5年前。奥様がスタジオ担当スタッフの同級生だったこともあり、まずは家づくりについて勉強したいと気軽な気持ちで入会した。とはいえ「建てるなら普通の住宅ではなく自由設計がいい」と当初から考えていたという。なんと2日間もイベント会場に通い、朝から夕方まで、すべての建築家にじっくり話を聞いて回った。
 ところが、ここから先は山あり、谷あり。目星をつけていた土地が購入できなかったり、家族の状況が変わったりしたことで家づくりは中断。一時はASJを退会する話も出たという。そんな時、ご主人が実家近くに土地を見つけ、担当スタッフに調査をお願いしたところ運良く購入できることに。ここから具体的な家づくりがスタートした。

②建物の外観には一切窓がなく、どの方角から見ても同じ形に見えるデザイン。

 設計にあたって頭に浮かんだ建築家が西村友吾さん。最初のイベントから数年が経っていたが、近い年頃の子どもを持ち、話がしやすかったことが印象に残っていた。何よりも決め手になったのが、奥様が気に入った西村さんの作品。
「外観に窓がなく、中が見えない構造だったのですが、内部には窓があってとても明るかったんです。西村さんなら生活感のある家を面白くつくってくれる、デザインと使い勝手のバランスをうまくとってくれると感じました」
 購入した土地の周囲は道路が狭く、住宅が建て込んでいるため、建ぺい率などに厳しい制限があった。外から見えない構造はHさん夫妻も望んでいたスタイルだった。
 こうして現在の家の原型となるプランの提案を受ける。けれどもHさん夫妻のこだわりはこれだけで終わらない。ご主人は図面を睨みながら独学で建築を勉強。時には日付が変わるまで打ち合わせを重ね、さまざまな疑問や課題を半年かけてひとつひとつ解決していった。

③中2階リビングから2階ダイニングキッチンを望む。どこにいても人の気配が感じられる。

こだわりのひとつが自然素材を使うこと。奥様には昔からぜん息の持病があり、お子さんやご主人もアレルギー体質の持ち主。無垢材に加え、壁には吸湿性のいい珪藻土が使われている。この珪藻土の内壁は家族全員で塗ったもの。予算削減のための提案だったが、「いい思い出になった」と家族全員が語るほど楽しかったらしい。家のあちこちに自分たちで描いた文字やイラスト、記念の手形が残っている。
 また家全体を断熱し、窓を開けなくていいように全館換気システムを導入している。自然素材と断熱・換気システムで冷暖房も効率的。夏でも冬でもエアコン1台でいいという。冬の結露もなく、室内干しの洗濯物も匂いがしないそうだ。
 間取りは中央に吹き抜けのホールがあり、これを取り巻くように階段が設けられている。この階段に沿ってスキップ状の個室があるが、どの個室にも扉がない。「どこにいても人の気配がわかるように」というHさん夫妻の意向からだ。ホールの天窓からは明るい光が降り注ぎ、晴れの日であれば各部屋の照明もつけなくていいという。
 光あふれる中央の階段は奥様のお気に入りでもある。座って新聞や本を読んでいると、自然と子どもたちが寄ってくるのだとか。
 家は何度か建てて満足のいくものができるといわれるが、デザインと機能を同時に実現したこの家に「後悔はまったくありません」とHさん夫妻。「建築家を選んで本当に良かった。今は関わってもらったすべての人に感謝しています」。

(取材/湯浅玲子)

④収納コーナーの一角には、壁を自分たちで塗った記念に家族全員の手形がある。

⑤写真中央の黒っぽい建物がHさん邸。別府湾を望む高台の住宅地にある。
⑥ほんのり明かりが灯る夜の外観は、昼とは違った表情を見せる。
⑦玄関はシンプルな土間スタイル。壁の向こうに収納コーナーが。
⑧奥様お気に入りの階段にて、とても仲良しなHさん一家。

■VOID CUBE

所在地

大分県別府市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供2人

設計

西村友吾/ニシムラユウゴ建築アトリエ

施工

ASJ別府スタジオ[光綜合工業株式会社]

構造・構法・規模

木造在来工法
地上2階  
軒高 5,700mm  最高の高さ 7,410mm
敷地面積 210.65㎡
建築面積  82.81㎡(建蔽率39.31% 許容40%)
延床面積 132.49㎡(容積率62.89% 許容180.4%)
 1階   82.81㎡
 2階   49.68㎡

主な外部仕上げ

屋根 コロニアル葺き
外壁 コロニアル葺き
開口部 アルミサッシ
外構 コンクリート刷毛引き仕上げ

主な内部仕上げ

ホール、リビング、ダイニング、キッチン、スペース1~3
 床 ナラフローリング オイル塗装
 壁 珪藻土左官仕上げ
 天井 ラワンベニア張り
エントランス
 床 モルタル金ごて仕上げ 表面強化材塗布
 壁 珪藻土左官仕上げ
 天井 ラワンベニア張り
工事費 2300万円

工程

設計期間 2015年1月〜2015年6月
工事期間 2015年7月〜2015年12月

撮影

石井紀久(表紙 ①②⑤⑥⑦)
志賀智(③④⑧)

断面図 縮尺1/200
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2階平面
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1階平面縮尺1/200
クリックで拡大

西村友吾

[福岡市博多区]

1974年大分県生まれ/1999年福岡大学工学部建築学科卒業/2000年石井建築研究所入所/2004年株式会社松山建築設計室入社/2009年ニシムラユウゴ建築アトリエ設立

三方を道路に面しながらも穏やかな佇まいの住宅地に建つ、4人家族のための住宅です。
 風致地区により規定される建築可能範囲最大で25坪の正方形のボリュームを2層に配置し、道路に面する3面の中央を軒のある外部空間として切り欠くことで、街並みと正対せずに緩やかに繋がることを意図しました。
 内部においては天窓から光が注ぐ吹き抜けホールを中心として、用途の異なる四隅の空間が建具を設けずに一体的に繋がり、余白となる外部空間を介して適度な距離感で家族間のコミュニケーションを促す構成となっています。
 リビングは中2階の高天井とすることでより開放感を持たせながら、床下は大容量の収納として活用しました。
 一体空間におけるシームレスな温熱環境をコントロールするため、高性能吹付断熱材及び全熱交換換気システムによる全館空調換気方式を採用しています。
 お子様の体質に配慮した内壁の珪藻土はクライアントと共に自主施工を行い、愛着の持てる味わい深い仕上がりとなりました。
 適度に分節されながらもおおらかに繋がるしつらえすぎない空間は、将来における家族構成の変化や用途の変更などの多様化する住まいのあり方に柔軟に対応し得る持続可能な器となるのではと考えています。

ASJ大分別府スタジオ

[光綜合工業株式会社]

クライアントパートナー:綾部誠
 H様との出会いは、大分別府スタジオの第1回目「未来をのぞく住宅展」でした。奥様とは小・中学校の幼馴染み。実を言うとイベントの前日に飲み会があり、奥様とも一緒に飲んでいたのですが、そこでイベントの話はしませんでした。チラシを見て来場され、「なんで教えてくれなかったの」と怒られましたが、その場でご入会いただきました。後日、イベント中に再度お越しになり、建築家と熱心にお話しされていたことを思い出します。
 H様夫妻は土地探しからのスタートでしたので、最初に掛けた言葉は「家づくりを勉強していきましょう」でした。そして、こだわりを持った家づくりは山あり谷ありの連続ともお話しさせていただきました。
 入会後、最初にご紹介した土地は、一歩遅れで購入できませんでした。その後もいろいろな出来事があり、一時は中止や退会の話も出ましたが、実家のリフォームやお子さんが大きくなった時のこともあるとお話しし、中断というかたちになりました。
 それから1年が過ぎ、H様もいろいろなことが片付き気持ちの整理もできたのでしょう。「実家の近所に土地が有るので調べて貰えないでしょうか」と連絡がありました。H様の“家を建てたい”という思いが奇跡を起こしたのか、その土地を購入することができました。ここからプランニングコーススタートです。西村先生との会話が弾み、夢が叶う喜びもあって、打ち合わせは平均4時間、最長で11時間を記録しました。石橋を叩いて渡る性格だというH様は、たぶん西村先生より図面を見て徹夜で勉強したと聞いています。
 家を建てることは、一生の中で一番高い買い物のひとつです。建主、建築家、スタジオが輪にならないと良い建物はできません。建主の思いを形にするために力をあわせ、オンリーワンの建物をつくることを心がけております。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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