施主様のお話

HOME > 建築家との家づくり > ASJ Works Close-up > 庭に咲く四季折々の花とともに暮らす安らぎの家

SHARE

ASJ Works Close-up

庭に咲く四季折々の花とともに暮らす安らぎの家

福島県須賀川市

RIN~凛

設計 上島拡和/イオ・コンダクト一級建築士事務所
施工 ASJ郡山スタジオ[株式会社オオバ工務店]

扉を開け放つと、玄関ホールから和室までがひとつながりの空間に。扉は格納式なので見た目にもすっきり。

①震災の被害を免れた門扉は、そのまま使用。モダンな建物に厳かな雰囲気を添えている。

 東日本大震災により、住めない状態になってしまった我が家。建物をすべて取り壊し、立派な庭も更地にして、売ってしまおうということを考えたこともあった。しかし、仮住まいをしていた息子さんのマンションから戻ってみて、残された庭を改めて見た時、M様はここにもう一度家を建て、住もうという気持ちになったという。
「最初は住宅メーカーに設計をお願いしたんです。『この庭に合うような家を建ててほしい』と。でも、あがってきたプランは私のイメージには合わなくて。その後、たまたま行ってみたASJのイベントで上島先生にお会いしたんです。私の希望を聞いて、提案してくださったのは、洋の要素を採り入れた和風の家。開放感があり、庭の雰囲気にもぴったりでした」
 そして完成したのが230坪の敷地に建つ、墨色のガルバリウム鋼板に包まれたシャープな印象の平屋だ。実はこの建物、平屋ながら鉄筋コンクリート造を採用している。それは、マンション住まいを経て、その快適性と安心感を実感したM様からの希望だった。

②リビングダイニングからは、庭の枝振りの良い樹々や季節の花が眺められる。
③リビングの横にある小上がり風の和室。窓からは絵画のような紅葉が見える。
④和室の窓から見える紅葉の成長を見越して、穴が空けられた屋根。

 間取りもまた、「ふたりで暮らすのに余分な空間はいらない」との希望をもとにしたシンプルなプランだ。玄関を入って、ホールの右手が主寝室やバスルームなどのプライベートゾーン。左手には、リビングダイニングとゲストルームとしても使える和室などが配置されている。そして、こちら側の部屋の窓からは、以前の家から引き継いだ庭が眺められ、季節ごとの花が目を楽しませてくれるのだ。床と天井にヒノキ材を使用した温もりあふれる空間で庭を眺めていると、窓を閉めていたとしても美しい自然が室内へと引き込まれているような安らぎを感じる。
 また、各室を区切る格納式の引き戸は、開け放つとホールから和室までが広々としたひとつながりの空間として使え、冷暖房効率を上げたい時には閉めて、空間を区切ることもできる。さらに、床下には土間暖房を採用しているため、冬には外気温がマイナスにまで下がってしまうこの地域でも、エアコンなしで室内の温度が18度以下になることはなかったそうだ。

⑤屋根の鋭角なフォルムがシャープな印象を与える外観。裏手には来客用の駐車スペースも用意。

 M様ご夫妻に、家のなかのお気に入りの場所は? と問うと、ご主人はリビングダイニング、奥様は寝室と答えてくださった。
「仕事から帰ってきたら、このソファに座ってテレビを見たり、うたた寝したりしています。あとは、キッチンのカウンターで酒を飲むのが好きですね」と、ご主人。
「そんな時、私はキッチンに椅子を用意して、カウンターを挟んで主人につまみを用意したり、一緒にビールを飲んだりしています。寝室には電動シャッターがあるので、真っ暗ななかで安心してぐっすりと眠れるんです」と奥様。そんな会話からも、おふたりがこの家で仲良く、楽しみながら暮らしている様子が窺える。
「家を建てて、本当によかった」と庭を眺めていたご主人が、呟くように言った。すると奥様は「息子夫婦に頼らずに、震災後も自分たちで暮らせたのもよかったよね。そして何より、上島先生も現場監督も大工さんも、みんな良い方でチームワークがばっちりでよかった。だから良い家ができたのかも」と応えてくださった。建主の希望を受けて、建築家と現場がひとつになってのぞむ家づくり。そして出来上がった家の価値は、M様ご夫妻の笑顔に表れていた。

(取材/吉田桂)
⑥雨の日でもテラスに出られるように、庇は広めに設定されている。
⑦濡れ縁は2段設置し、1段手前に腰掛けることも可能。
⑧M様が撮影した、春の庭の様子。ツツジやアジサイが美しく咲いている。
⑨晩酌を楽しむ時は、カウンターを挟んだこのスタイルで。

■RIN~凛

所在地

福島県須賀川市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦

設計

上島拡和/イオ・コンダクト一級建築士事務所
構造 株式会社田中構造設計事務所

施工

ASJ郡山スタジオ[株式会社オオバ工務店]
 現場監督 浦川千恵

構造・構法・規模

鉄筋コンクリート造 平屋  
軒高 2,900mm  最高の高さ 6,500mm
敷地面積 742.36㎡
建築面積 184.96㎡(建蔽率24.92% 許容60%)
延床面積 102.16㎡(容積率13.76% 許容200%)

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板
外壁 ガルバリウム鋼板
開口部 アルミサッシ
外構 植栽、自然石、コンクリート

主な内部仕上げ

LDK
 床 ヒノキ無垢フローリング t=15mm
 壁 クロス貼り
 天井 ヒノキ無垢板張り
和室
 床 ヘリなし畳
 壁 京壁
 天井 ヒノキ無垢板張り
寝室
 床 ヒノキ無垢フローリング t=15mm
 壁 クロス貼り
 天井 クロス貼り
洗面脱衣室
 床 クッションフロア
 壁 クロス貼り
 天井 クロス貼り
工事費 約3100万円

工程

設計期間 2013年10月〜2014年8月
工事期間 2014年9月〜2015年4月

撮影

土居麻紀子(表紙 ①②③⑦⑧⑨)
伊藤秀樹(④⑤⑥)

断面図 縮尺1/300
クリックで拡大
1階平面 縮尺1/300
クリックで拡大
配置図縮尺1/300
クリックで拡大

上島拡和

[栃木県那須塩原市]

1967年長野県生まれ/1991年横浜国立大学工学部建設学科建築学コース卒業/2002年イオ・コンダクト有限会社一級建築士事務所設立

 依頼者のM様との出逢いは、3.11震災の後に開催されたASJのイベントでした。背の高いダンディーな雰囲気のご主人と、よく笑う優しそうな小柄な奥様で、品のある素敵なご夫婦…そう最初に感じたことを今でも覚えています。
「これを眺めて毎日暮らしていたんだ」と、M様から1枚の写真を見せていただきました。震災で家は全壊しましたが、敷地に残った立派な日本庭園、その写真でした。綺麗な花も咲いていて、愛情込めて手入れされていたこと、そして何より、ここで仲良く楽しく暮らしていらっしゃった様子が、感じ取れたことを覚えています。ここに新たに素敵な家をデザインしてあげたい、そして、喜んでもらいたい。強くそう思い、設計がスタートしました。
 敷地は、道路から一段高い位置にあり、周囲からよく見える立地。立派な門扉も庭のある南東側に残されており、それも活かしたい要望もあったため、道路に面した北側及び西側は、家からすると〈裏〉にあたるのですが、周囲からは逆に目立つ面になるため、どの方向からも美しく見えるよう留意してデザインすることが要求されるプロジェクトでした。
 今回、デザイン上、テーマにしたのは、「背筋がピンとした凛々しさ」、「品がある中にもある力強さ」。それは、出逢ったとき、M様に感じたイメージ、そのものだったりもします。
 【RIN~凛】、凛々しくも温かい、そんな家が完成しました。
これからお二人が、この家で、今まで以上に、楽しみながら暮らしてもらえることを願っています。

ASJ郡山スタジオ

[株式会社オオバ工務店]

クライアントパートーナー:荒木知恵子
 M様の自宅は、東日本大震災で全壊の被害に遭いました。
 ご夫婦は第25回の「未来をのぞく住宅展」に来場され入会。そこで上島先生との出会いがありました。その半年後にイベントにいらっしゃったM様から、敷地を見てほしい、“庭を残して”二人で住む家をつくりたい、地震に強い“コンクリート造りの家”にしたいという要望を伺いました。
 現地調査と併せてM様ご夫婦の生活スタイルや趣味などを伺い、他メーカーには真似できないプランをご提案することをお伝えし、庭を活かした家づくりのプロジェクトがはじまりました。
 その後、基本プランでイメージと要望にもお応えでき、契約となりました。女性の監督と腕利きの大工と各職人によって、無事2015年4月に完成引き渡しが完了しました。
 LDKから眺める庭は、四季折々に咲く花と植栽とのコントラストが演出され感動します。
「凛とした佇まいの家」はM様ご家族に最良の家と思います。今後安心して暮らしていただけるよう、アフターフォローをしてまいります。末永いお付き合いをよろしくお願いいたします。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

会員登録(無料)すると、
会報誌「A-Style Monthly」を毎月お届けいたします。

関連記事

RELATED POSTS

ASJ会員登録のメリット

BENEFITS

設計プランの第1歩

会報誌をプレゼント

イベント・セミナーへのご招待