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ASJ Works Close-up

木の温もりと開放的な空間家族が集まる陽だまりのリビング

福岡県筑後市

筑後の家

設計 新田崇博/class
施工 ASJ久留米スタジオ[大石建設株式会社]

穏やかな陽ざしが降り注ぐリビングの縁台でくつろぐ仲良しのYさん一家。

①中庭を囲むようにして玄関からリビングまでがひと続きになっている。

 ぶどう畑が広がるのどかな田園地帯にあるY邸。緩やかに閉じられた外観の建物を一歩入ると、中庭を中心に開放的な空間が広がっている。玄関から子ども部屋、ダイニング、リビングまで、すべてがつながった構造。実際、木製の建具を収納してしまうと、家全体がまるで大きなテラスのようだ。
 Yさん夫妻がASJのイベントを初めて訪れたのは2011年夏。家づくりに興味はあったが、まだ先のことと考えており、子連れで行けるからと気軽な気持ちで出かけたという。そこで出会ったのが建築家の新田崇博さん。同世代で話しやすく、木の温もりが感じられる作品に親近感を抱いた。翌週には新田さんが設計した家を見学に行く。実は、この時見学した家の印象が強く、Y邸のモデルとなっている。
 とはいえ、すぐに家づくりがスタートしたわけではなく、その後は別な家を見学に行ったり、一緒にバーベキューをするなどして交流を深めていった。Yさん一家は実家住まい。増築を重ねた暗い家に不便を感じていたものの、建て替えには今ひとつ踏み切れないでいた。そんなYさんたちの背中を押したのが、建築家やスタジオ担当者の「そろそろ建てましょうか」という一言。交流を深めてきたからこそのタイミングだったと言えるだろう。

②交通量を考慮して前面道路から一定の距離をとったアプローチ。
③陽がよく入る窓辺がワンちゃんの特等席。

④自然と人が集まって来るリビング。その先に畳敷きの和室があり、来客時などにも対応できる。

設計にあたってYさん夫妻から出された条件は平屋で明るい家。ご主人は書斎コーナーを、奥様はステンレスキッチンを希望したが、基本的に設計は新田さんにお任せだった。一方、新田さんは20ページにおよぶヒアリングヒートを準備し、好きな食べ物や色、さらには生活には一見関係ないような質問項目でYさん一家のライフスタイルを確認していく。「価値観を共有するのはもちろん、家づくりを自分たちの生活を見直す機会にしてほしいとの思いからです」と新田さん。
 こうした交流とライフスタイルの確認で、基本的な方向性は早くから一致していた。新田さんが苦心したのは前面道路との関係。それほど広くない道路だが平日は交通量が多く、アプローチを深めに取っている。また天井から軒裏、さらに床を、すべて統一方向の杉板でまとめていて、これが家全体の統一感に大きな役割を果たしている。天井の高さも部屋によって違いがあり、リビングが最も高い。開放的で居心地のいいリビングを演出するためだ。
 一家のお気に入りは暖かい陽ざしが降り注ぐリビング。大人も子どもも愛犬も、いつのまにかリビングに集まってきて、陽ざしが移動すると人も犬も移動する。気候のいい時期には窓も全開にして陽気を思う存分楽しむそうだ。
 これだけ開放的だと冷暖房の効率も気になるところ。新田さんからは「寒いのは覚悟してください」と言われたが、意外に快適に暮らしている。理由のひとつはリビングの窓に採用されたペアガラス。そして、もうひとつの理由が窓の内側に設けられた障子だ。両面を和紙で覆った太鼓張りで、見た目以上に断熱性が高い。寒い時期や夜はこの障子を閉めている。障子を閉めると部屋の印象が大きく変わり、差し込む光も一段と柔らかくなる。
 子ども部屋はいずれ分割できるように考えられているが、現在はひと続きの空間。「もし分割するとしても、お互いが感じられる緩やかな空間でいいかな」とYさん。みんなが好きなところで好きなことをする。でも、いつも何となくつながっている。Y邸はそんな自由で温かい暮らしを可能にしている。

(取材/湯浅玲子)
⑤将来は分割できるように設計された子ども部屋。
⑥玄関前の土間は駐車場として利用できるほか、バーベキューなども楽しめるスペース。
⑦いつも子どもたちの笑顔と歓声でにぎやかなオープンキッチン前のダイニング。
⑧キッチンのタイルは奥様の要望で。カラータイルがアクセントに。
⑨リビング・ダイニングの障子を閉めると部屋の雰囲気が一変。落ち着いた和の空間が出現する。
⑩家のどこにいても誰かの気配がわかる開放的な空間。

■筑後の家

所在地

福岡県筑後市

主要用途

専用住宅

家族構成

祖母+夫婦+子供3人

設計

新田崇博/class

施工

ASJ久留米スタジオ[大石建設株式会社]

構造・構法・規模

木造
地上1 階  
軒高 3,984 mm  最高の高さ 4,135 mm
敷地面積 549.84㎡
建築面積 218.10㎡(建蔽率39.67% 許容50%)
延床面積 174.83㎡(容積率31.80% 許容60%)
 1階  174.83㎡

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板t0.4 竪ハゼ葺き
外壁 ジョイントV塗ウレタン塗装、ラスモルタル下地
   一部サイディングt14 VP
開口部 住宅用アルミサッシ
  一部木製建具

主な内部仕上げ

居間 食堂 子供部屋
 床 ナラ三層フローリングt12 蜜ロウワックス
 壁 珪藻土塗 PB12.5下地
 天井 杉板t12 相シャクリ貼 OS
主寝室 書斎 母の部屋 台所
 床 ナラ三層フローリングt12蜜ロウワックス
 壁 クロス貼り PB12.5下地
 天井 杉板t12 相シャクリ貼 OS
洗面脱衣室 トイレ
 床 ナラ三層フローリングt12蜜ロウワックス
 壁 クロス貼り PB12.5下地
 天井 クロス貼り PB9.5下地
和室
 床 縁無しスタイロ畳t55
 壁 珪藻土塗 PB12.5下地
 天井 杉板t12 相シャクリ貼 OS

工事費 約5000万円

工程

設計期間 2013年7月~2015年3月
工事期間 2015年3月~2015年10月

撮影

志賀智(表紙 ③④⑤⑦⑧⑨)
石井紀久(①②⑥⑩)

1階平面 縮尺1/200
クリックで拡大

新田崇博

[佐賀県鳥栖市]

1980年佐賀県生まれ/2004年崇城大学工学部建築学科卒業後、西山英夫建築環境研究所に勤務/2011年class共同主宰/2016年株式会社classに法人化

 初めてYさん夫妻とお会いしたのは2011年、独立してまだ間もない時でした。それから交流を続け、価値観や想いを共有しながら丁寧に設計を進めていき2015年の秋、実に4年間という時間をかけて完成しました。振り返ってみるとあっという間で、もうこの家に通わないかと思うと寂しくなったのを思い出します。
 敷地はまわりにぶどう畑があるとてものどかな場所でしたが、十字路に面し国道の裏道として使われている様で、交通量は多く、走る車はスピードを出している印象でした。まず考えたのは、交通量の多い道路からのアプローチや駐車スペースを少しでも離して安全を確保することでした。
 間取りは不特定多数の視線から家族を守るために中庭を中心として考えながら、のどかな近隣との関係を保つために完全に閉じた中庭とはせず、H型の平面や土間に設けた格子によって緩やかに必要な部分だけを閉じるように作っていきました。
 ぶどう畑の水平に広がる棚に呼応するように、家中杉板の天井や深い軒がひと続きにつながり、自然との距離を縮めてくれています。季節が良い時にはフルオープンする木製建具を開け放って、まるで家全体が大きな庇となり自然と一体になって家族が四季を感じながら、自然と共に生活ができる家となりました。
 既製品をほとんど使わない、自然素材を多用した全て手作りのこの家を、手間を惜しまず丁寧に作ってくれた職人さんたちや、長い時間親身に付き合っていただいたスタジオの皆さんと共につくりあげることで、経年変化を感じられるとても居心地の良い空間になったと感じています。何よりも完成した家で三姉妹が走り回って、この家を目一杯楽しんでいる姿をみると、この家と共に進んでいく家族の幸せを、私の方が少し分けていただいたプロジェクトになったように感じています。

ASJ久留米スタジオ

[大石建設株式会社]

スタジオマネージャー:半田幸司
 Y様ご夫婦とclassの新田先生が最初に出会われたのは、2011年8月の「第8回建築家展」でした。Y様ご夫婦は、新田先生が設計されたご実家に興味を抱き、翌週には早速見学に行かれました。「将来こういう家に住みたい」と目を輝かせていたのを覚えています。
 数年が経ち、「自宅の建て替えをしたいのでclassに設計を頼みたい」と連絡をいただきました。ご自宅を訪ね、現地の確認とヒアリングを行いました。
 1stプランは予算重視で提案しましたが、家族5人(後に3番目のお子様が生まれ、6人家族に)には狭すぎるとのことで、ご希望の広さで2ndプランを提案することに。2ndプランではY様ご夫婦の希望したプランとなり、概算見積り後2014年7月に設計契約を締結。実施設計ではコストダウンを考慮しながら、図面・模型に加え、事前にご家族で話し合ったことをスマホ画像でご説明いただきました。時にはヒートアップし、意見が衝突することもありましたが、そのことでより良いプランになり、とても有意義な打ち合わせができました。
 その後、見積りを行い2015年2月に工事請負契約を締結。解体から竣工引渡しまで建主・設計・施工が協力し合いながら現場は進んでいきました。上棟の日には今では珍しい餅投げを行い、近所の方々にたくさん集まっていただき、ご家族にとって大変思い出深い上棟式になりました。
 Y邸は、中庭を中心にとても開放的な空間が作り出されており、Y様ご夫婦のこだわりが詰まったイメージ通りのプランになったのではないかと思います。竣工引渡しから1年が経過し、ますますご自宅での生活を楽しまれているY様と、今後も末永くお付き合いができればと思います。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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