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ASJ Works Close-up

独自のスケール感を大切にした大開口部のある平屋の家

鹿児島県霧島市

House-O【les ailles croisées】

設計 七川淳/bound-design
施工 ASJ鹿屋スタジオ[上谷田建設株式会社]

庭にある砂場で遊ぶOさん一家。子どもたちはとにかく元気がよく、広い庭を走り回っている。いずれここにプールを造るのが夢。

①広い敷地を活かした平屋建ては、居室がほぼ一列に並んでいる。手前の空間はガレージとして活用。

  豊かな自然に恵まれた鹿児島県霧島市。のどかな田園地帯の一角、小高い敷地の上に建つO邸は広々とした一軒家。子どもたちが自由に遊び回れる庭に、大きな開口部とテラスを備えた南向きの平屋だ。
 家づくりを考え始めたOさん夫妻が最初に取り組んだのが土地探し。周囲の視線が気にならず、ある程度の広さが確保できることが条件だった。目を付けたのが現在の土地だが、当初は樹木におおわれ土地の形状も正確にわからない状態。加えて隣接して川が流れており、敷地までの斜面は市の所有という特殊な条件だった。平行してハウスメーカーの見学会に足を運んでいたが、どこでも同じようなことを言われたという。「普通のハウスメーカーでは、この土地に家は建てられません」。

②ご主人がどうしても実現したかった大きな開口部。リビング・ダイニングからの眺めもいい。
③窓の前にはテラスを設置。柔らかい色合いと、両端にさりげなく設置された照明がおしゃれ。

 2013年、Oさん夫妻は初めてASJのイベントに参加。ここで建築家の七川淳さんに出会う。奥様は初めて建築家と話したというが、「いくつかの選択肢から選ぶメーカーの『自由設計』と、すべて自由に設計できる建築家の違いを初めて知りました」と語る。また大きな窓のある家にあこがれていたご主人は「七川さんが以前に設計した大開口部の家の写真にピンときた」という。こうして七川さんとの家づくりがスタートした。
 ただし紆余曲折があり、最終的に11のプランを提案し、設計だけで1年半もの月日を要した。最も大きな理由は土地の大きさの変更。最初に購入できた土地は南北に長い敷地の半分で、南面した建物が建てにくかった。おおよそ設計が完成した後に、車の進入路として土地の追加を所有者と交渉したところ、敷地全体を売ってくれることになった。敷地は倍増するがゼロから設計し直すことになる。七川さんは作業の負担を承知の上で「とことんやりましょう」と応えたという。「敷地が増えると南向きの建物が建てやすくなり、より良いプランが実現できると思いました」と七川さん。

④芝生の生い茂る庭の一角では、奥様が家庭菜園で野菜を育てている。
⑤開放感のあるリビングからの眺め。吹き抜ける風も気持ちいい。

⑥ダイニングテーブルやシャンデリアの位置も細かく計算されている。

 建築家が向いていたのは土地の問題だけではない。この家にいると普通の住宅とは少し違ったスケール感に気づく。ご主人がどうしても実現したかった大きな開口部、高い天井、計算されたカウンターやテーブルの高さ、さらにはスイッチ類も少し低い位置に付いている。
 実はOさん一家は仕事の関係でフランスで暮らした経験があり、このときの生活が家づくりにも大きく影響している。例えば低いスイッチの位置は子どもたちにも使いやすく、実際にフランスで体験して取り入れたものだ。

⑦リビングの一角にあるパソコンデスクは、アップルストアの仕様を意識して特注。
⑧ご主人の要望で設置したワインセラー。壁には吸湿性のある木毛セメント板を使用。

 さらにキッチンには程よいサイズのシンクが二つ並んでいる。こちらもフランスの住宅の形式を奥様が気に入って特注した。料理研究家の事務所で働いた経験のある奥様はキッチンへのこだわりが強く、自分の動線に合わせてキッチンの位置を指定。天板は知る人ぞ知る地元のメーカー、鎌石ステンレスでオーダーし、ミーレの食洗機などを入れている。
 細かい注文はオーダーメイドに対応できる建築家でなければ実現が難しい。けれども通常の日本の住宅とは感覚の違うO邸は七川さんにとっても挑戦だった。「自分の感覚とは違うので、材料や収め方を勉強しながらつくりました。楽しく修行させてもらった感じです」。
 Oさん夫妻は譲れない部分にこだわる一方で、七川さんを信頼してその他は任せたという。子ども部屋の壁の集積材は七川さんのアイデア。集積材はピンを刺しても気にならないので、子どもたちは自由にポスターなどを貼っている。今は砂場がある庭には、いずれプールを造りたいという夢がある。理想の家への道のりは、これからも続いていく。

(取材/湯浅玲子)
⑨奥様のこだわりがつまったキッチン。シンクの形状だけでなく収納も考えられている。
⑩壁に集積材を貼った子ども部屋。3人の部屋はそれぞれ色使いや雰囲気などが違う。

■House-O【les ailles croisées】

所在地

鹿児島県霧島市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供3人

設計

七川淳/bound-design

施工

ASJ鹿屋スタジオ[上谷田建設株式会社]

構造・構法・規模

木造在来工法

地上1階

軒高 4,310mm  最高の高さ 5,000mm

敷地面積 1,249.40㎡

建築面積 192.68㎡(建蔽率15.43% 許容70%)

延床面積 159.79㎡(容積率11.87% 許容240%)

主な外部仕上げ

屋根 カラーガルバリウム鋼板 t=0.40 タテハゼ葺き

外壁 カラーガルバリウム鋼板 t=0.40 タテハゼ葺き

   窯業系サイディングボードの上 超弾性光触媒断熱塗料 吹付け

   焼杉 羽目板張りの上 オイル塗装

開口部 アルミサッシ

外構 磁気質タイル貼り

   コンクリート同時金ゴテ仕上げ

主な内部仕上げ

リビングダイニング

 床 無垢フローリング オイル仕上げ

 壁 漆喰塗り

 天井 板張り仕上げ

キッチン

 床 セラミックタイル貼り

 壁 漆喰塗り

 天井 クロス貼り

子供室

 床 無垢フローリング オイル仕上げ

 壁 クロス貼り(一部 OSBボード オイル仕上げ)

 天井 クロス貼り

和室

 床 畳敷き

 壁 クロス貼り

 天井 クロス貼り

工事費

3000〜3500万

工程

設計期間 2013年7月〜2015年3月

工事期間 2015年4月〜2015年9月

撮影

志賀智(表紙 ④⑤⑥⑦⑧⑨⑩)

針金洋介(①②③)

1階平面 縮尺1/200
クリックで拡大

七川淳

[宮崎県宮崎市]

1979年鹿児島県生まれ/2002年熊本大学工学部環境システム工学科建築系卒業/2004年熊本大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了後、住宅メーカー、設計事務所に勤務/2011年bound_design七川淳建築設計事務所設立/2017年株式会社bound-designに法人化

「3回建ててやっと理想の住まいが完成する」。今では笑い話のように出てくるこのキーワード。2階建ての計画から始まり、平屋建ての計画へ、そして敷地の変更による計画の見直しと方向転換……と、紆余曲折ありましたが、この住まいではこれが実現できたのではないかと思います。
 建物と車庫を一体的に、また広大な敷地を最大限に活かせるように、建物全体を南側に向け、東西方向に約30mの平面計画としています。黒と白を基調とした配色で、あたたかく風通しの良い家づくりを目指しました。リビングには庭と一体に繋がる、大きめの開口を設けています。二つの異なったボリュームが、ある一定の角度を持って交差し、単調な風景のアクセントとなるようデザインした外観は、この地域に特有のリズムが生まれるきっかけになればと思います。
「初めまして」から約2年、たくさんの夢や理想が詰まった住まいが、ようやくカタチとなり、完成し、お引渡しすることができました。住まい始めて1年と数ヶ月、徐々にではありますが住まい手の色がついてきているように感じられます。これからじっくりと時間をかけ、たくさんの色をつけ、楽しみながら住まっていただければ嬉しく思います。
 時が経つのが待ち遠しく、訪れるのが楽しみな、そんな作品のひとつです。

ASJ鹿屋スタジオ

[上谷田建設株式会社]

スタジオマネージャー:上谷田浩幸
 O様ご夫婦は、2013年6月に開催しました「第6回未来をのぞく住宅展」にお見えになり入会されました。イベントに参加されていました七川先生と会話が弾み、プラン作成の依頼をいただきました。後日、O様と七川先生と一緒に現地確認したときは草木が茂っていたため全体の敷地形状がわからない状況で、古井戸もありました。また、敷地には2m以上の高低差がありました。
 初回は七川先生から、敷地形状を活かした2階建てのプラン3案の提案がありました。そのうちのひとつをO様が気に入られ、設計契約に向けて数回の打ち合わせと概算見積を提示。概算見積金額も概ね予算範囲内だったので次回設計契約をしようかという打ち合わせの最後にO様から「平屋のプランも見てみたい」というご希望があり、新たに平屋のプランをご提案することに。
 その後、数回のプラン提案をする中で、今度は「建築予定地の裏の土地も購入してほしいと不動産会社から打診されていて購入しようと思っている」とのお話がありました。建築予定地が広くなるため、既に提案していたプランでも十分でしたが、敷地をより有効に活用するためのプランを新たにご提案することになりました。
 そして、広くなった敷地での平屋プランで、設計契約を結ぶことに。実施設計ではコストを考慮しながら打ち合わせを重ねていきました。ご主人様が県外に長期出張されていたので、Webを利用して打ち合わせをすることもありました。
 その後、見積を行い2015年3月に工事契約を締結。土地の造成が始まり、4月の地鎮祭の時に敷地全体の形状がわかりました。上棟の日の餅投げには、近所の方やO様のご子息のお友達など、たくさん集まっていただき非常に盛り上がっていました。思い出深い上棟式になったと思います。O様ご家族と、こだわりが詰まったこの家と、今後も末永くお付き合いができればと思います。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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