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ASJ Works Close-up

自然とつながるウッドテラスから風が吹き抜ける開放的な住まい

高知県高岡郡

小芝の家

設計 山本乃夫/乃亜建築設計事務所
施工 ASJ高知スタジオ[株式会社響建設]

防腐処理をしたスギ材のウッドテラスで家族とくつろぐ。軒を長くしたことで日差しの強い夏も快適。

 小気味いいキツツキの音が響く高知県の山間。豊かな自然と調和する木造の平屋に、Yさん夫妻とお母様の3人が暮らす。間際に山が迫る南北に長い敷地は、元々ご主人の実家の建っていた場所で、以前はお母様が単身で昔ながらの民家に暮らしていた。
「私たちは高知市内のマンション住まいで、週末に実家を訪れる生活でした。当初は建て替えのプランはなかったのですが、母のことを考えると段差が多く老朽化した実家に不安があって。私自身、人生の後半を生まれ育った土地で暮らしたいと感じ始めていたこともあり、建て替えを決めました」

①完成間際まで悩み、最終的にニュアンスのあるワサビ色を選んだサイディング壁。周囲の自然ともマッチしている。

②大きな開口で視覚的な広がりを生む。室内とウッドテラスの床高を揃えて一体感を高めた。

 奥様は住宅見学が趣味で、ASJのイベントにも度々訪れていた。建て替えが具体的になったとき、高知スタジオの嶋川マネージャーに予算や住まいのイメージを伝えて紹介されたのが高知県に拠点を置く建築家・山本乃夫さんだった。しかし、山本さんに漠然と「モダンな店舗を設計する建築家」のイメージを抱いていた奥様は、個人宅の依頼を躊躇する思いもあった。だが、過去に手がけてきた和風住宅や平屋の施工例を見せてもらったことで「これなら相談してみてもいいかな」と考えるようになった。
 設計に際してYさん夫妻が第一に希望したのは、室内にこもる湿気を解消すること。建物の東側に石垣の斜面が迫る立地のため、長年、結露やカビに悩まされてきたからだ。特に夏場の湿気は懸案だったが、山本さんと高知スタジオの嶋川さんが敷地見学に訪れたのは、折しも梅雨明けの蒸し暑い日。晴れていても窓ガラスが曇るような湿度の高さと不快感を実体験することになった。
 この日、Yさん夫妻は敷地のマイナス面を揃って口にしたが、山本さんと嶋川さんは「山や川が身近にあって素敵なところ」と感じたという。特に山本さんは緑豊かなロケーションが気に入り、契約前にもかかわらず「ぜひ図面を引かせてください」と進んでプランの提案を申し出た。こうしてYさん夫妻の住まいづくりがスタートした。

③ゆったりとくつろげる幅広のウッドテラス。テラス奥に薪置き場を設けた。

④清潔感あふれるキッチン。オープンなアイランド型を選択。
⑤リビングの一角にある物干し場。天候を気にせず洗濯物が干せるよう配慮。

綿密な打ち合わせで希望を叶える

「段差をなくし、バリアフリーに」「できるだけ自然素材を使いたい」「室内と一体感のあるウッドテラスがほしい」など、Yさん夫妻の要望を受けて提案したのは、視界の開けた南西側に第二のリビングとなるウッドテラスを設け、石垣の迫る東側に採光と湿気対策のための高窓を設置するプラン。方向性が決まってからも時に4時間を超える打ち合わせを重ね、思い描く理想へと近づけていった。
 軒を長く取ったウッドテラスは「テラスで昼寝がしたい」と言うご主人の要望を取り入れてのこと。軒を長くすることで採光は少なくなるが、暮らす人の心地良さと生活スタイルを優先させた。
 調湿性の高い珪藻土壁や節なしのナラ材フローリングなど、自然素材をふんだんに取り入れたリビングは、奥様のこだわりが詰まったスペース。特に気に入っているのが、スギ材の天井にベイマツの現し梁。天井全体を白く塗装する案もあったが、「素材のぬくもりを感じたい」と無塗装を選択し、自然な表情を引き出した。扉付きの収納やテレビボードなどの造作家具も室内をすっきりと見せ、統一感を生むポイントだ。
「取り壊しや土地の整備も含めると竣工まで2年。山本さんは我を通す方ではなく、希望に粘り強く付き合ってくれました。私たちにはわからない構造的なことを詳しく説明してくれたのは、建築家に頼んで良かったと思えることでしたね」
 アウトドア好きの夫妻にとって、家にいながら自然を感じられる住まいは理想郷。住まいが快適になったことで以前は気づかなかった野鳥の鳴き声や木々の美しさを味わう余裕も生まれた。
「家づくりにはしんどいこともあったけど、やはり楽しかった。もう一度建てたいなと思うくらいですよ」と笑うYさん。自身を育んでくれた思い出の地で、新しい日々を送る喜びを感じている。

(取材/白柳里佳)
⑥珪藻土の壁で白を基調にした開放的なリビング。天井のスギは塗装せず、素材感を生かした。
⑦モダンな趣の玄関まわり。
⑨寝室。床材はリビングと同じナラフローリング。壁はクロス貼りにしてコストダウンをはかった。
⑧寝室のウォークインクローゼット(WIC)。その上をロフトにし、通風と採光のための高窓を設置。
⑩住まいの北側からの眺め。豊かな緑に囲まれている。

■小芝の家

所在地

高知県高岡郡

主要用途

専用住宅

家族構成

母+夫婦

設計

山本乃夫/乃亜建築設計事務所

施工

ASJ高知スタジオ[株式会社響建設]

構造・構法・規模

木造在来工法

地上1階  

軒高 3,800mm  最高の高さ 4,450mm

敷地面積 326.50㎡

建築面積 107.65㎡

延床面積 93.29㎡

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板 横葺き

外壁 弾性リシン吹付け、一部スパンドレル張り

開口部 アルミサッシ、一部木製建具

外構 土間コンクリート、砕石敷き

主な内部仕上げ

玄関

 床 磁器質タイル張り

 壁 珪藻土塗り

 天井 珪藻土塗り

リビング・ダイニング

 床 ナラフローリング

 壁 珪藻土塗り

 天井 スギ板張り

寝室

 床 ナラフローリング

 壁 クロス貼り

 天井 クロス貼り

ロフト

 床 シナ合板 OF塗装

 壁 クロス貼り

 天井 クロス貼り

工事費

2700万

工程

設計期間 2015年7月〜2016年10月

工事期間 2016年11月〜2017年4月

撮影

白谷賢(表紙 ①③④⑤⑥⑦⑧⑨)

断面図A 縮尺1/200
クリックで拡大
断面図B 縮尺1/200
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1階平面 縮尺1/200
クリックで拡大

山本乃夫

[高知県高知市]

1978年高知県生まれ/2001年九州共立大学工学部建築学科卒業後、依光建築設計事務所に勤務/2004年株式会社彩都建設入社/2010年乃亜建築設計事務所共同主宰

 農村景観と伝統的な歴史が残る津野町。山と川に囲まれた自然豊かなこの場所で、建て替え計画がスタートしました。敷地にはじめて立ったとき、周辺環境の素晴らしさを感じるとともに、既に存在する豊かな空間や時間を新しい家に受け継ぐことができればと考えました。
「慣れ親しんだ暮らしを大切にしながら、より一層家族がつながり、豊かな自然と共生する空間」その要となったのがリビングでした。窓からの景色を際立たすために、部屋に特別な変化は付けず、緩やかに外へつながるテラスを設けました。伸びやかで存在感のある軒がテラスと庭を包み込み、日差しと雨を庇いながら外をより近いものにします。こうしてテラスは壁のないリビングとなり、内と外の一体感を素直にもたらすことができました。おおらかな屋根は、山の表情ともあいまって、町並みと地域の人が馴染めるようになっています。
 山郷の歴史が今でも物語るように、斜面には石垣が築かれています。夏の湿度が高いこの場所では、採光や通風を十分に確保することが望ましく、石垣に面したハイサイドライトによって光と風をやわらかく取り込み、斜面に沿って広がる緑を身近に感じる景色をつくりました。
 
―― じっくりと心をこめて創り上げる ――
 このモットーを実現するべく、Yさんと過ごした足掛け2年という月日の中で、新たな暮らしへの思いやその価値を共有することができました。思い出に浸りながら引き渡しを迎え、これまでご一緒できたことに感謝の気持ちです。レジャーや畑仕事を楽しむYさんにとって、この場所は週末ごとに人が集まる故郷になろうとしています。これから先もこの空間が手助けするように、素材の表情を少しずつ変えながら、家族とともに豊かな時を刻んでいくことを心から願っています。

ASJ高知スタジオ

[株式会社響建設]

スタジオマネージャー:嶋川忍
 Y様ご夫妻との出会いは、2015年6月の“第35回建築家展”でした。建て替え希望とのことで、翌月には山本先生と現地へ訪問させていただきました。
 自然に囲まれた閑静な場所。風の音や水の音。ロケーション最高! 素敵な場所! 私の感想はそんな感じでしたが、実際に住まれているY様ご夫妻は「とにかく湿度が高く、梅雨時期は一週間でカビができるし、コケもできるんです…」な、なるほど。プラン以上に湿度対策を重視していかなくてはいけないと感じたのを思い出します。山本先生ともすぐに意気投合され、一緒に家づくりが始まりました。
 Y様ご夫妻のご希望は「湿気対策必須!」「平屋で薪ストーブのある家がいい」。とにかく、住みやすいお家にされるには、湿度調整、風通し、屋内洗濯干しなど建築場所に合ったプランが必要でした。山本先生も何度も現地へ足を運び、梅雨時期の湿度を肌で感じたりしながらプランを進めていただきました。
 ご夫妻と一緒に、お母様とワンちゃんが一緒に住まれていて、お母様がもっと高齢になっても過ごしやすい家、ワンちゃんが過ごしやすい場所など、お母様とワンちゃんのことも大事に大事になさってるご夫妻で、家族にとって過ごしやすいお家になるように山本先生と一緒にたくさん話をしてきました。夕方から打ち合わせが始まり、皆で話し込んでしまい、気づいたら22時近かった…なんて日もありました(笑)
 そして、出会いから約2年後の2017年4月、Y様ご夫妻の家が完成しました。ご家族皆さまのことをすごく考えられた愛情のこもった、そして、迫力のあるお家だと思います。アウトドア好きの気さくなご夫妻なので、広縁周りでバーベキューをしたり、笑い声が絶えないお家にきっとなるんだろうなと思います。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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