施主様のお話

HOME > 建築家との家づくり > ASJ Works Close-up > ガレージハウス型アパートをデュアルライフの拠点に

SHARE

ASJ Works Close-up

ガレージハウス型アパートをデュアルライフの拠点に

埼玉県熊谷市

ガレージハウスONCO

設計 土橋弥生/空間都市建築研究所
施工 ASJ十文字スタジオ[株式会社高橋建業]

 I様ご夫妻の住まいは神奈川県の辻堂。そして、ご主人の勤め先は熊谷。平日は勤め先である精密板金業を営むご実家の一室をご主人の生活拠点とし、週末は辻堂で夫婦のんびりと暮らす。そんなデュアルライフを送るI様ご夫妻が希望されたのは、アパートとして貸し出すことのできる収益物件。ご主人にとっての熊谷での拠点であると同時に、賃料という収益を生み出す建物だった。
「でも、ただの賃貸アパートでなく、付加価値のあるものが建てたかったんです。そこで、ほぼ一人一台くらいの車社会である地域柄、ガレージハウスの需要も高いのではないかと考えました。もともと僕も車好きで、大切な車を安全に保管できて、時にはメンテナンスができるスペースがあればいいなと思っていたので」
 そして、ASJのイベントにご夫妻で参加されたことがきっかけで、集合住宅の設計経験も豊富な建築家である土橋弥生さんと意気投合し、プロジェクトがスタートした。

①建物の外壁には住戸ごとの区切りをつけず、窓をランダムに配して、ひとつの建物であることを強調。

 まずは土橋さんのアドバイスをもとに、勤め先から車で約10分の場所に条件に合う土地を購入。その土地に、6軒の部屋を擁する建物と、入居者が自由に使える洗車スペースを配置する設計となった。
「外観からは6軒の部屋が並んでいるようには見えず、ひとつの大きな建物に見えるようなデザインにしよう、という遊び心のある提案が土橋さんからありました。私たちも賛成して、1階にはガレージのシャッターが6つ並んでいるものの、建物の各戸(部屋)を区切る壁を感じさせないランダムに窓が並ぶデザインとなりました」と、グラフィックデザインを仕事とする奥様が満足気に話してくださった。

③各部屋には広々としたロフトが。ベッドルームやDENとして使っても。
④白の部屋はクリーンで爽やかな雰囲気。天窓からの光が室内を明るく照らしてくれる。

⑤天井が高く、広々としたワンルーム+ロフト。奥のドアの向こうにはトイレとパウダールーム、バスルームがある。

「建物の付加価値としては、ガレージハウスという特性以外にも、外観のデザインも大切な要素でした。土橋さんは、僕たちの様々なわがままを汲み取ろうとしてくれて、ディスカッションを繰り返しながら実現してくださいました」と、ご主人。
 そのディスカッションのなかから、6軒の部屋は2軒ごとに白、グレー、黒と3色のテーマカラーを設定され、壁紙や床材、シーリングファンの色などが決定された。部屋ごとに微妙に異なる、シンプルかつスタイリッシュな内装のアクセントとなっているのが、ステンレス製のタオル掛けやキッチンカウンター。こちらは、土橋さんがデザインし、I様の勤め先で制作されたものだそう。さらには全体の雰囲気からディテールに至るまで、奥様が作成したイメージ資料のアイデアが活かされた部分もあるとのこと。このように、このガレージハウスは建築家と建主が共にアイデアを出し合い、つくりあげたものだと言えるだろう。
 現在、ご主人は完成したアパートの一室で平日を過ごしている。
「西側の窓と東側のロフトの窓を開けると、心地よく風が抜けるので、ほんと快適です。こちらに引っ越してからは毎朝鳥の声で目を覚まし、ガレージのシャッターを開けて空気を入れ替えてから、ストレッチをして出かけています。以前より健康的な生活を送っているかも(笑)」
 ガレージハウスは車やバイク、自転車が好きな人にはもちろんのこと、サーフィンや釣りなど、多くの道具を要する趣味をもつ人や、絵画や陶芸などの作品づくりを行なう人にとっても打ってつけだ。車庫、倉庫、アトリエ、仕事場など、さまざまに活用できるガレージは、日々の暮らしにさらなる快適さと楽しさをプラスしてくれることだろう。

(取材/吉田桂)

洗面ボウルは部屋のテーマカラーごとにデザインが異なる。

⑨ガレージと部屋が直結しているので、雨の日でも荷物の出し入れがラク。
⑩ガレージ脇のランドリースペース。愛車を眺めたり読書をしたりと気ままに過ごせる。
⑪I様が暮らす一室のキッチン。必要な機能がコンパクトに収まっている。
⑫スリットのような窓から光が漏れる様子が幻想的。

■ガレージハウスONCO

所在地

埼玉県熊谷市千代

主要用途

ガレージ付き賃貸集合住宅

設計

土橋弥生/空間都市建築研究所

担当 須藤数馬

施工

ASJ十文字スタジオ[株式会社高橋建業]

担当 小野瀬文晴

構造・構法・規模

木造在来工法

地上2階  

軒高6,847mm  最高の高さ6,931.5mm

敷地面積 421.00㎡

建築面積 167.70㎡(建蔽率39.83% 許容60%)

延床面積 308.94㎡(容積率73.38% 許容200%)

 ロフト 36.96㎡

 1階 141.24㎡

 2階 167.70㎡

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板t=0.35㎜ タテハゼ葺き

   アスファルトル-フィング22kg、構造用合板t=12㎜

外壁 弾性アクリルリシン吹付け、防火サイディングt=14

   湿防水シート、構造用合板t=9㎜、一部フカシ木組下地105㎜

開口部 電動アルミシャッタ-、アルミサッシ、テラスドア

外構 アスファルト舗装、一部防草シート、砕石t=60

主な内部仕上げ

ガレージ

 床 土間コンクリートt=150/目地切り

 壁 内壁:構造合板t=9mm素地

   界壁:クロス貼り、PB t=12.5 2重貼、遮音シートt=0.5

 天井 PB t=9.5mm、クロス貼り

玄関+階段室

 床  木組下地、合板下地t=24mm、MSクリアプレーン、タモ集成材

 壁  内壁:PB t=12.5mm、クロス貼り

 天井 PB t=9.5mm、クロス貼り

キッチン+リビング、ダイニング

 床 木組下地、合板下地t¬=24mm、

   無垢フローリング(メープル・チェリー・タモ)t=15mm

 壁 内壁:PB t=12.5mm、クロス貼り 

   界壁:クロス貼り、PB t=12.5 2重貼、遮音シート t=0.5

   一部耐水PB t=12.5mm、ステンレス貼り

 天井 PB t=9.5mm、クロス貼り

ロフト

 床 構造用合板t=24mm素地

 壁 内壁:PB t=12.5mm、クロス貼り

 天井 PB t=9.5mm、クロス貼り

トイレ+洗面所

 床 MSクリアプレーン(東リ)

 壁 耐水PB t=12.5mm、VP

 天井 バスパネルMR-3(フクビ)

浴室

 床 ハーフユニット1216(日比野化学工業)

 壁 バスパネルMR-3(フクビ)

 天井  バスパネルMR-3(フクビ)

工程

設計期間 2015年10月〜2016年7月

工事期間 2016年7月〜2017年2月

撮影

長谷川潤(②③⑤⑦⑧⑨⑩⑪)

西川公朗(表紙 ①④⑥⑫)

配置図 縮尺1/400
クリックで拡大
ロフト 縮尺1/300
クリックで拡大
2階平面 縮尺1/300
クリックで拡大
1階平面 縮尺1/300
クリックで拡大

土橋弥生

[横浜市中区]

1971年青森県生まれ/1992年神奈川大学外国語学部スペイン語学科卒業後、アパレルメーカー本社営業を経て企画室に勤務/いくつかの事務所を経て1999年株式会社空間都市建築研究所共同設立

 湘南地区にご自宅のあるオーナーご夫妻。奥様は海のそばのご自宅アトリエでグラフィックデザインの仕事を。ご主人は平日は出身の熊谷で仕事されるというデュアルライフをおくっており、この集合住宅の1室はその平日の拠点としての意味合いも持っています。ビルトインガレージつきの賃貸集合住宅がかなう敷地を探すことからこの計画ははじまりました。
 1階をガレージ、2階を居住スペースとしています。
 1階は車やバイクの趣味はもちろん、SOHO、作業場、倉庫として個性的に使えるようにとのことから、水場を設け、構造用合板現しの壁面、配線ダクトでカスタマイズがそれぞれできるようにしています。ほぼ車社会の地域柄思い切ってエントランスはガレージの電動シャッターのみとしました。
 2階の居住スペースはロフト付きのワンルーム、東側を水周りとロフトとし、連続してランダムに横スリット窓を配しました。1階のシャッターのみのファザードとあいまって、シンプルで個性的な外観に一役買っています。
 精密板金の会社役員であるI様に相談し、手すりや、キッチンカウンター、タオルバー、各室サインなど、細部にわたってご手配いただきました。十文字スタジオの高橋社長には建物の趣旨に配慮して3種の無垢の床材をご提案いただきました。全体的に収支計画からローコストであることは必須でありましたが、そのステンレスと精密なカットに負けないような素材や質感は意識しています。
 6世帯が横並びで2階が居住スペースの木造アパートの計画なので、音の問題を解消すること、暑さ寒さにきびしい敷地で快適に暮らせること、埼玉県北部ののどかな景色の中で自然を感じながら、モダンでクリエイティブな気持ちで暮らせる環境をつくること、収益案件であることゆえのコスト調整に配慮しました。

 

ASJ十文字スタジオ

[株式会社高橋建業]

工事監督:小野瀬文晴
 日本一暑い町、熊谷で7月下旬に工事は始まりました。
 ご存じの通り建築は基礎工事から始まります。さらに現地は、キレイに開発された分譲地の為、日を遮る物は全くありません。ギラギラした強い日差しの中での基礎工事は、流れ出る汗で溶けて無くなってしまいそうな日々が続きました。
 さて、基礎が完成すると大工さんの登場となります。弊社は本社が秋田県横手市にあり、私は東京営業所に配属されております。自社の大工さんで施工するのが会社の方針なので現場の近くに宿舎を準備し、秋田県から大工さんたちに集合してもらい、9月下旬に上棟となりました。ちなみに私の住まいは横浜で現場までは車で2時間半の道のりです。
 基礎の時はあまり感じなかったのですが、建ち上がると、デカイ。木造2階建て+ロフト、建築面積167.7㎡、片流れ屋根は上棟するとド迫力です。
 季節は秋から徐々に寒くなって行き、車のタイヤが全員スタッドレスになった頃、外部足場が外れました。
 うーんカッコイイ。
 シャープな外観と開口部、一階がN-10の黒で二階がN-95白の配色もさすがです。
 その後、内装仕上工事へと進み、冬も終わりかな、という頃、建物は完成しました。内装もスタイリッシュでスマートな空間となっています。特に、ご支給品のステンレス製キッチンは「いいね!」です。
 建主様の思いと空間都市建築研究所様の設計による素敵な建物になりました。
 このプロジェクトに参加できたことを感謝いたします、ありがとうございました。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

会員登録(無料)すると、
会報誌「A-Style Monthly」を毎月お届けいたします。

関連記事

RELATED POSTS

ASJ会員登録のメリット

BENEFITS

設計プランの第1歩

会報誌をプレゼント

イベント・セミナーへのご招待