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ASJ Works Close-up

プライベートな中庭で家族がゆるやかにつながる家

高知県安芸郡

中庭を囲む家

設計 佐渡基宏建築アトリエ
施工 ASJ土佐南国スタジオ[株式会社公文建設]

「子どもが生まれたら新居を建てたいと、海が見えて津波の心配がない土地を探していたんです」と語るKさん夫妻。ようやく見つけた理想の土地は、奥様の実家からも程近いのどかな田園地帯。太平洋の海原を望む高台に建つのは、親世帯2人、子世帯3人が暮らす二世帯住宅だ。
 設計担当の建築家・佐渡基宏さんとの出会いは、お子さんが生まれたばかりだった約3年前。Kさん夫妻は、ASJのイベントで佐渡さんが手掛けた「中庭を囲むコの字型の家」を見て、心惹かれた。「中庭のある二世帯住宅を建てられたらいいね」と二人の意見が一致し、迷わず依頼を決めたという。

①防腐処理した杉板を使用したナチュラルな外観。徐々に退色し、落ち着きのあるグレーへと変化する。中庭を中心として右に子世帯、左に親世帯を配置。

※佐渡さんに依頼するきっかけとなった「中庭を囲むコの字型の家」

 一口に二世帯住宅といっても、個室以外の住居機能を共有する「完全同居型」、プライバシーを守りながら玄関やバスルームなど一部を共有する「部分同居型」、共有部分がほとんどない「完全独立型」など様々なタイプがある。それぞれの世帯が快適に暮らすには、互いの暮らしを尊重し、しっかりとプライバシーを確保することが重要だ。佐渡さんは、両世帯の生活サイクルを丁寧にヒアリングすることからプランづくりをスタート。子世帯のKさん夫妻は共働きで出勤時間が早いこと、お子さんが小さく親世帯とは生活時間帯が異なることなどを考慮して完全独立型のプランを提案した。足音や排水などの生活音の気がかりは、共有の中庭を中心に親世帯と子世帯を左右に振り分けることで解消。玄関位置もあえて距離を取り、互いに気兼ねなく出入りできるようにした。
 独立性の高い住居で、ゆるやかに家族をつなぐ役割を果たす中庭は、近隣からの視線を気にせずにくつろげるスペース。中庭越しに伝わる家族の気配が二世帯で暮らす安心感をもたらし、程よい距離感の自然なコミュニケーションを生んでいる。
 打ち合わせ開始当時は赤ちゃんだったお子さんも今ではやんちゃ盛りで、奥様は子どもがノビノビと遊べる中庭の真価を日々実感しているという。「キッチンからでも中庭にいる子どもの気配が感じられますし、両親と子どもが楽しそうに話す声が聞こえることも。家族全員で子どもを見守っている、そんな心強さを感じています」。
 それぞれの生活を大切にしながらふとした瞬間に家族とのつながりを感じられるのが二世帯住宅の魅力。中庭の存在が穏やかで楽しい家族の時間を育んでくれているようだ。

③リビングの照明はダウンライトのみ。床高を上げた和室はベンチ代わりにもなる。
④フラットなキッチンは手入れがしやすく、開放的。中庭越しに親世帯が見える。

実感の伴うアドバイスで使いやすいキッチンを実現

 
 子世帯のLDKは、中庭に面した開口からさわやかな風と光が差し込む開放的な空間。佐渡さんは、設計に際して要望のあった「いつでも友達を呼べるLDK」を意識し、オープンな空間づくりを心がけた。キッチンは配膳がしやすく夫婦が同時にキッチンに立てるアイランド型を採用。平日はご主人が料理を担当することが多いため、高身長のご主人にも使いやすくカウンターを高めに設定している。
 リビングからのフォーカルポイントとなるタイル貼りのキッチン壁は、奥様からのリクエストに応えたもの。「こんなキッチンにしたい」と渡された雑誌の切り抜きを参考にモザイクタイルをあしらい、シンプルな空間にアクセントをつけた。注目は一見、白に見えるタイルの目地。「先生が白い目地は汚れが目立つから色味があるものがいいと選んでくれたのですが、手入れが楽で助かっています」
 間仕切りのないLDKは開放感に溢れる一方、雑然としがちなのがデメリット。物が多いキッチンは所有物に合わせた造作収納を充実させることですっきりと見せた。電子レンジや炊飯器などの家電はリビングから見えないパントリーに、食器類はカウンターの引き出しに集約。生活感を隠すだけでなく、家事動線がスムーズになり、家事負担の軽減にも繋がっている。
「佐渡先生自身が料理をされる方なので、使い勝手のいい機器や動線などを具体的なアドバイスしてもらえたのが良かったですね。例えば、先生推薦のドイツ製洗浄機GAGGENAU(ガゲナウ)は音が静かで容量も多い。洗浄機の背面に引き出し式の収納があるので洗う・しまう動作にも無駄がありません。拭き掃除がしやすい埋め込み式換気扇も先生がおすすめしてくれたものです」
 実体験に基づく提案や細やかな心配りは、建築家と建てる住まいの醍醐味。一つ一つはささやかだが、暮らしの満足度を高める大切な要素となっている。
「暮らしは快適そのもので、とても満足しています」とご主人。今後は中庭に植えたグラウンドカバーを成長させ、お子さんが裸足で走り回れるようにするのが目標。家族や友人が集う中庭での暮らしを思う存分楽しんでいきたいと考えている。

(取材/白柳里佳)
⑤存在感のあるカラフルなタイルでトイレに明るい表情を添えた。
⑥中庭につながる洗面所とバスルーム。泥んこになったら玄関を通らず風呂へ直行。
⑦両方向から入れるアイランド型キッチン。通路が広く、複数人が同時にキッチンに立てる。

⑧キッチンから見渡せるリビングの一角にワークデスクを設置。

■中庭を囲む家

所在地

高知県安芸郡

主要用途

二世帯専用住宅

家族構成

両親+夫婦+子供1人

設計

佐渡基宏建築アトリエ

担当 佐渡基宏・香山安武

構造 倉敷構造設計室

担当 木村誠二

施工

ASJ土佐南国スタジオ[株式会社公文建設]

担当 公文伸也、濱渦康典

設備 有限会社南熱料設備 担当 南洋一

電気 有限会社田中電機 担当 田中良光

構造・構法・規模

木造

地上2階

軒高 5,900mm  最高の高さ 6,435mm

敷地面積 743.06㎡

建築面積 186.76㎡(建蔽率25.14% 許容ナシ)

延床面積 242.39㎡(容積率32.62% 許容ナシ)

 1階   177.33㎡

 2階   65.06㎡

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板 竪ハゼ葺

外壁 杉板突付貼りの上目板張り 防腐処理材塗装

開口部 アルミサッシ、木製建具

外構 玉砂利敷き、コンクリート金ゴテ押え、

玉砂利洗い出し

主な内部仕上げ

LDK2

 床 フローリング(オーク)

 壁 クイックアンドイージー ローラ塗装、タイル貼り

 天井 板貼、クロス貼り

主寝室

 床 フローリング(オーク)

 壁 クイックアンドイージー ローラ塗装

 天井 クロス貼り

洗面2

 床 フラットコイヤータイル

 壁 クイックアンドイージー ローラ塗装

 天井 クロス貼り

洋室2、3

 床 カラーフロア

 壁 クロス貼り

 天井 クロス貼り

工程

設計期間 2015年1月〜2016年 3月

工事期間 2016年6月〜2016年12月

撮影

白谷賢(表紙 ③④⑤⑥⑦⑧)

後藤健治(①②※)

断面図A 縮尺1/300
クリックで拡大
断面図C 縮尺1/300
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2階平面
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1階平面 縮尺1/500
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佐渡基宏

[岡山県倉敷市]

1966年岡山県生まれ/1989年近畿大学工学部建築学科卒業後、近畿大学工学部建築学科古谷誠章研究室研究生/1990年内藤廣建築設計事務所入所/1992年古市徹雄都市建築研究所入所/1998年佐渡基宏建築アトリエ設立

 敷地は、高知県大野大地に位置し、地殻変動によってできた海岸段丘には、南面に段々畑が広がり太平洋も望むことができ、北面は民家が点在しています。依頼を受けはじめて敷地を見に行った時、地平線まで見える海、広い空、のどかな田園風景――こんな台地に計画できるのだと興奮しながら周辺を歩き回っていると遠方を歩いている子供を抱いた女性が絵画のように現れたのは、偶然通りかかったクライアントの奥様だったのですが、3年近く前になる今でも鮮明に覚えています。そんな感動の中で、この土地には、年月と共に経年変化し徐々に風景に溶け込む建物が相応しいだろうと思えました。
 外壁は、より自然に近い形にしたかったので、高知の杉板を防腐処理しただけのものを目板張りにして、建物の高さもできるだけ抑え、この台地に強く根付く大木の根をモチーフにしました。
 建主のKさんは、ご両親、ご夫婦、お子様の5人家族。二世帯住宅で中庭が欲しいとの要望でした。各部屋に囲まれた中庭は、程よい距離感で人々と繋がり、海風から守られた中庭は、程よい自然と繋がります。囲われた中庭が見える窓、広大な海が見える窓、Kさんたちは無意識に見入ることとなるでしょう。Kさんたちの笑い声が絶え間なく中庭を通して聞こえてきそうです。
 竣工式の餅投げに参加させていただきました。上棟時には何度かあったのですが、完成後の餅投げは初めてで忘れられない思い出となりました。Kさんはじめ土佐南国スタジオの皆さん、ありがとうございました。

 

ASJ土佐南国スタジオ

[株式会社公文建設]

スタジオマネージャー:公文伸也
 お子様が生まれ“そろそろ家を考えようか…”というタイミングでイベントに来場・入会されたK様。2回目のイベント来場で佐渡さんと出会い、その作風と柔らかなお人柄にひかれ、佐渡さんとの家づくりをスタートされました。
 ご両親との二世帯住宅を希望とのことで、当初はK様にもなんとなく家のイメージがあったようです。佐渡さんから出てきたプランを初めて見た時は、全くの予想外なプランに正直驚いたご様子でした。ですが、実際に現地で日の当たり方や風の吹く方向、周りのロケーションを見て考え出した佐渡さんの思いやそのコンセプトを聞いてからは、そこにK様の思いも加えていきながら、家づくりはゆっくりと進んでいきました。
 工事期間が梅雨から夏を挟んだこともあり、期間中は何度も台風や嵐に見舞われ、みんなでひやひやしましたが、現場監督をはじめ職人皆さんの協力のおかげで何とか無事工事も終わり、木と光、自然のぬくもりがいっぱいの素敵な家が完成しました。
 実際に住まわれてみてどうですか? とお伺いしました。お母様からは「初めて図面を見た時は、どんな家になるのか想像もつかなかった(笑)」と。「でも、住んでみると“なるほど! さすが!”と思うところが沢山あって、とても気に入っています」とのこと。親御様世帯のスペース、息子様世帯のスペース、どこにいても中庭で遊ぶ子供の姿が見られる、中庭を通して家族がつながる、今まではなかった、まさに“中庭を囲む”家族の姿ができたそうです。その中庭では度々家族やお友達も集まり賑わっているとか。「夏には庭から夏祭りの花火が見えるし、またここから見上げる冬の星空も素晴らしい」とお父様。今度はぜひその冬の星空を見せてもらいに伺いたいと思っています。
 家づくりのお手伝いをさせていただけたことに感謝し、また、これからのK様ご家族の暮らしがさらに豊かなものになっていきますよう、我々一同心から願っております。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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