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ASJ Works Close-up

「なかったらいいな」をかなえた住まい

徳島県鳴門市

鳴門の家

設計 堀部直子/堀部建築事務所
施工 ASJ光と水の街スタジオ[西野建設株式会社]

庇が深いアプローチは雨の日のクルマの乗り降りを考えてのこと。子供達の格好の遊び場にもなっている。

「ご近所の方には、壁の向こうはどうなっているのかと不思議がられているようです」とはYさん。①

土地を有効に使う設計

 Yさんの家づくりは、まず、ハウスメーカーとの間で始められた。着工寸前でのASJへの方向転換は、たまたま訪れた、ASJ光と水の街スタジオ主催の「建築家展」がきっかけだったという。
 「建築家の方達の話を聞くうちに、それまでの型にはまった家づくりにはない、面白さを感じました」。 Yさんは、即日、ASJに入会し、会員サイトで建築家を検索。そこで、のちに設計を依頼する堀部直子氏の作品と出会う。
 「カーテンを吊す必要がないほどプライバシーが守られた作品を見て、この方なら、妻の不安を一気に解消してもらえるのではないかと思いました」。
 その後、運よく、ASJ光と水の街スタジオ主催で、堀部氏が参加するイベントが開催されることになり、これに参加。会場で相談をするうちに、堀部氏を建築予定地に案内することになった。
 「敷地が広く、有効に使わないともったいないですね」――。Yさんは、そんな堀部氏の言葉に驚き、提案された設計図を見て、カルチャーショックを受けたという。 「ハウスメーカーさんの提案は、すべて二階建てでした。ところが、堀部さんのプランは平屋建て。おおっ! と感動しました」。
 建築家と家を建てることに、無限の可能性を感じたYさんは、その直後、堀部さんとの家づくりを決定している

「中庭の樹は枯れにくいものをと堀部さんに頼んで、ナツツバキを選んでいただきました」とは奥様。②

基礎を路面より高くしているぶん床下が広く、そこはYさん親子の秘密基地になっている。③
ランドリーコーナーと洗面所の延長線上には「ファミリークローゼット」。クローゼットには家族の衣類を一ヵ所にまとめることができる。④
取材した日はあいにくの雨。中庭で遊ぶ子供達の姿が見られなくて残念。⑤
和室では家族4人が枕を並べ、星空を眺めながら眠りにつく。⑥

「不得手」に悩まない間取り

 「私は、ガーデニングが苦手なんです。枯らしてしまうのです。アロエまで。(笑) そんな自分の性格から、家事や子育てまで、堀部さんには何でもお話しすることができました。植栽の少ない外構は、私の負担を減らすためでもあるんですよ(笑)」。
 自分の苦手なものを、面白おかしく、赤裸々に語ってくださる奥様。Y氏邸には、外構以外にも、奥様が自分の不得手に悩まないように、堀部氏が提案した場所がある。
 「洗濯を洗ったり干したりするのは好きなのですが、乾いたものを取り入れて、畳んで、仕舞うといったことは苦手なのです。できれば要領よくすませたいと思っていました」。
 そんな奥様の「家事の面倒が少なくなったいいな」という要望は、ランドリースペース、物干し場、クローゼットを一列に並べた構造がかなえている。
 とくにクローゼットは、家族全員のタンスなどを一ヵ所に集めた「ファミリークローゼット」。「洗濯物を各部屋のタンスへ運んでいたときに比べると、ずいぶんラクになりました」と、奥様は大満足。
 ついでながら「ファミリークローゼット」は、堀部氏が、動線を短縮することで、家事の負担を少しでも軽減できればと、提案を続けているスペースである。
 「堀部さんのような女性の建築家の方にお願いしたのは、私にとってグッドチョイスだったと思っています。何でも言いやすいし、また、言わなくても家事の動線や収納のことなどを提案してくださり、とても頼りになる存在でした」。

中庭からの光と風が通るLDK は居心地がよく、家族がしぜんに集まってくる。⑦

星空を眺めながら眠る幸せ

中庭に面する和室は、現在、家族の寝室になっている。
 「たまたま畳の上で横になったところ、お星さまやお月さまが見えて、それからはここに寝ようということになりました。いまでは、毎日、キャンプ気分を味わいながら眠りについています。堀部さんは、来客用にと設計してくださったので、こんな使い方をしていると聞かれたら、きっと驚かれるでしょうね(笑)」。
 そんな奥様の言葉を受けて、Yさんも頷きながら…。
 「夜遅く夕食を食べるときも、ダイニングからは、和室で眠る子供達の姿を眺めることができます。幸せそうな寝顔を見ていると、その日の仕事の疲れも薄らぎますね」。
 それは、セキュリティやプライバシーがしっかり守られているY氏邸ならではの至福のとき。欲しい設備や部屋を実現する家づくりもいいけれど、不安や不得手を解消する「なかったらいいな」をかなえることの大切さを、Yさん夫妻の家づくりが教えてくれている。
(取材/香川泰子)

ドアも外壁と同じカーブ状に。玄関横には収納スペースもある。⑧
子供部屋と子供部屋の間は勉強スペースになっている。⑨
キッチンの背面にある収納スペースには食器や食品のほか冷蔵庫やゴミ箱まで収めることができる。⑩
階段の反対側はスロープになっている。⑪
夏には水遊びを楽しむ子供達の姿が見られることだろう。⑫
光のカーブも美しい夜の表情。⑬

■鳴門の家

所在地

徳島県鳴門市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供2人

設計

堀部直子/堀部建築事務所

施工

ASJ光と水の街スタジオ[西野建設株式会社]

構造・構法・規模

 

木造
地上1階 
軒高 4,020mm 最高の高さ 4,555mm
敷地面積 295.93m2
建築面積 124.28m2 (建蔽率42.0% 許容60%)
延床面積 105.46m2 (容積率35.6% 許容160%)

主な外部仕上げ

屋根 ガルバリウム鋼板 タテハゼ葺き
外壁 防火サイディングの上、リシン吹付
開口部 アルミサッシュ
外構 砕石敷

主な内部仕上げ

玄関
 床 コンクリート金ゴテ押え
 壁・天井 クロス貼り
LDK
 床 カバフローリング
 壁・天井 クロス貼り
個室1・2・3
 床 カバフローリング
 壁・天井 クロス貼り
ファミリークローゼット
 床 長尺塩ビシート
 壁・天井 クロス貼り

工程

設計期間 2011年8月~2012年 5月
工事期間 2012年5月~2012年11月

撮影

水野真澄(表紙 ①②③④⑤⑥⑦⑧⑨)
市川かおり(⑩⑪⑫⑬)

A-A'断面図
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1階平面 縮尺1/200
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南立面図
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西立面図
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堀部直子

[大阪府高槻市/東京都江戸川区]

1972年大阪府生まれ/1995年近畿大学理工学部建築学科卒業後、坂本昭・設計工房CASAに勤務/1996年岡崎善久建築設計事務所入所/1998年K.ASSOCIATES/Architects入所(~1999年)/2003年堀部直子建築設計事務所設立/2012年株式会社堀部建築事務所として法人化

鳴門の家
 
 周囲にはまだ畑も多い住宅地での中庭のある平屋建ての住宅です。
 Yさんのご要望は「防犯性」や「プライバシーを確保しつつ明るく風通しの良い家にしたい」、「元気なお子様たちがグルグル走り回れるようにしたい」、「キッチンからお子様の様子が見えるようにしたい」などの他、大雨時に道路が冠水する恐れのある地域であるため、それに耐えうる家にしたいとのことでした。
 そこで、建物の真ん中に大きな中庭を設け、周囲の視線を気にせず光や風を充分に採り込むことができるようにし、またその周りを回遊できるプランとしました。中庭に面した窓を開け放すとLDKから個室までを一直線に繋ぐことができ、気候の良い日には室内の延長として中庭空間を使うことができます。
 タタミスペースは来客時には扉を閉めて個室にすることもできますが、日常はリビングの延長として、またリビングから個室へ抜ける通路としても使える場所に配置しました。
 床の高さは冠水時にも対応できるよう、基礎を通常より高く設定しています。
 アプローチは毎日の出入りが億劫にならないよう、ゆったりとした階段とスロープで二方向から登れるようにし、外部空間にも行き止まりなく、お子様達がグルグル走り回れるスペースを確保しました。
 外観からは想像できませんが、一歩中へ入ると玄関から明るいリビングへ続き、中庭を通して家族が繋がる、心地良い住宅となりました。

ASJ光と水の街スタジオ

[西野建設株式会社]

スタジオマネージャー:石塚賢司
 Y様との出会いは、2011年5月の「建築家展」でした。そこでご入会されたY様は、次の8月の「建築家展」にもご家族で来られました。
 その会場で初めて会った堀部先生と意気投合し、すぐに計画はスタートしました。後に伺ってみると、Y様は会場に来られる前に、すでに堀部先生の事務所のウェブサイトをチェック済で、中庭のある家をとても気に入られていたそうでした。
 お打合せは、ご主人のお仕事が終わってからの、平日の夜が中心でしたが、いつもお子様お二人は一緒で、仲良くキッズコーナーで遊んだり、たまに打合せをのぞきに来たり、ときに打合せに入ったり……と、家族全員で家を作り上げている感じが伝わってきて、打合せもとても楽しかったです。
 プランニングは、堀部先生からのファーストプレゼンが、Y様ご家族のご要望をほぼカンペキに満たしていたため、細かい変更はありましたが、とてもスムーズに進みました。唯一、大きく変わったことは、ご主人の隠れ家(秘密の部屋)です。最初のヒアリングの段階から、ご主人がこだわっていた隠れ家……当初は和室の上のロフトにあったのですが、打合せが進むにつれ、だんだんと追いやられ、最終的には床下に埋め込まれました。しかしながら、ご主人はそれでも大満足。今でもご主人とお子様しか入ることのできない秘密スペースとなっています。
 お引渡しの際も、とても喜んでくださり、本当に感動したことを覚えております。最初から最後まで、とても和やかに進んだY様邸のご計画は、私がこの仕事をしていて良かったなと思える時間を、逆にプレゼントしていただけたようにも感じています。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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