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ASJ Works Close-up

素材と形が個性を生むリズミカルな空間

静岡県浜松市

◯△□

設計 川本敦史+川本まゆみ/エムエースタイル建築計画
施工 ASJ豊橋スタジオ[株式会社荒川工務店]

白い四角い箱のような家には、それぞれの空間の形状を模したハコ型、アーチ型、イエ型の窓が設置されている。①

 ミカン畑に囲まれるようにして建つ、四角い家。白いガルバリウムの壁には、積み木や型はめのような、子どもの玩具を彷彿とさせるフォルムの窓が設けられている。
 建主のNさんは、ASJ豊橋スタジオが主催するイベントで、エムエースタイル建築計画を知り、家づくりにおける素材へのこだわりや今までの作品のテイストを気に入って、その場で依頼することに決めたのだという。
 「実は、ハウスメーカーのモデルハウスを見に行ったりもしたんです。でも、モデルハウスは素敵でも、実際に建てられた家を見ると、驚くほどギャップがあって……。デザインも予算も理想に合うような家を建てるには建築家にお願いしたほうがいいかなと思ったんです。それで、そろそろ依頼先を探そうかってときに、イベントでエムエースタイル建築計画の川本さんに出会えたんです」と奥様。
 そして出来上がった家は、とてもユニークなデザイン。一階はキッチンやバスルームなどの水廻り、二階は居住スペースにあてられた細長い二つの棟が東西に建ち、そこに直角に交差するように、三つの部屋が設けられている。それらは、それぞれアーチ型、イエ型、ハコ型をしており、そのフォルムこそが、この家のプロジェクト名が「◯△□(マルサンカクシカク)」である所以なのだ。この、三つの部屋が異なる高さに設定されているため、空間構成はさらに面白くなっている。

家の中心に位置するダイニングルームからは、家族がどこにいても気配が感じられる。テーブルや他の部屋への入り口にもアーチ型が採用されている。②

2階の廊下兼勉強部屋の窓から下を覗くと、キッチンやダイニングにいる家族との会話も可能。③
光が降り注ぐダイニングは、家の中にいながらにして屋外で過ごしているような開放感を感じられる。壁面には外壁や屋根と同じ素材を用いている。④
イエ型(△)のリビングルーム。奥様こだわりのヘリンボーン張りのナラ材の床が、抜けのある空間をグッと引き締める。右手の窓からは1階のダイニングが見える。⑤
アーチ型(◯)の廊下兼勉強部屋。壁はレッドシダーを一枚一枚組み上げた下見板張りを採用。窓際は、まだ小さい子どもたちの読書スペースになっているそう。⑥
リビングから2 階へとつながる通路は、気持ちのよい風が通り抜ける。⑦
2 階の各個室は入り口側の両サイドに収納を用意。コンパクトで理に適った空間だ。⑧
リビングにあるイエ型の扉を開けると、ご主人の読書ルーム。愛蔵書がギッシリ。⑨
和室の一角はプレイスペース。今日は“お菓子屋さんごっこ”をしているそう。⑩
ハコ型(□)の和室。天井と壁の仕上げには吸音や吸湿などの性能をもつ木毛セメント板を使用。斬新な素材使いで、くつろぎ感のあるモダンな部屋が生まれた。⑪

 玄関を入ってすぐに土間があり、土間とつながるように、吹き抜けのダイニングがある。そして、ダイニングを囲むように、キッチン、プレイルーム、バスルーム、ハコ型の和室があり、ダイニング脇の階段を九段ほど上がると、天井が高く、空間に広がりのあるイエ型のリビング。そこから階段を五段上がると、子どもたちの勉強スペースを兼ねた、アーチ型の廊下へと繋がる。階段を上がるたびに、ガルバリウム↓アンティーク風のラワン材↓下見板張りのレッドシダーと、壁の仕上げがガラリと変わるのも楽しい。
 アーチ型の廊下が繋ぐ、二階の三つの居室には、ドアを開けてすぐに収納スペースが設けられ、朝起きたら、家族は皆、それぞれそこで仕度をしてから階下に降りられるようになっている。
 「部屋は狭くて、寝るだけの場所なんですが、それがかえって良いと思っています。家族は各自の部屋にこもったりしないで、一緒に過ごせるほうがいいなと。この家では、ダイニングから、和室、中二階のリビング、二階の勉強スペースなどがすべて見渡せるんです。だから、家族が今どこで何をしているのかが、すぐに分かるんですよ」と奥様は笑う。
 この家が魅力的な理由は、空間構成の面白さの他に、奥様のディスプレイセンスがある。玄関の土間や和室のコーナーなど、そこここにヨーロッパのアンティーク調の家具や雑貨がさりげなく飾られ、内装の素材とともに、こなれた雰囲気を演出している。特に目を引くのがダイニングの照明。大きな鳥かごに、色とりどりの小鳥たちが集い、ダイニングチェアにくつろぐと、さえずりが聞こえてくるかのよう。
 「家のなかにいても、子どもたちに自然を感じてほしくて。だから天窓は、とても気に入っています。昼間は飛行機雲を見つけたり、夜は星空を眺めたりしているんですよ」と奥様。
 ◯、△、□の窓からはミカン畑が見える。五月には白い花を咲かせ、十一月には収穫の時期を迎えるそうだ。四季を通じてのミカンの樹の移り変わりまでもが家の一部となった、楽しみ満載の心踊る家である。
(取材/吉田桂)

玄関の土間にもリラックススペースがある。夜は星空を眺める特等席になるとか。⑫
裏庭に面したプレイルーム。天井高を抑え、この上のリビングの天井を高く設定。⑬
和室の壁に貼られたマルタン・マルジェラのドアステッカー。奥様のセンスが光る。⑭
1階より低く設定された洗面所とバスルーム。収納の扉はすべて異なる木材を使用。⑮
左手に腰掛けるスペースを用意している。家族一緒のバスタイムに便利な設計だ。⑯
暗くなると家の中の明かりが外へと漏れ、◯△□の窓のかたちが
ハッキリと浮かび上がる。見ていて楽しくなるようなデザイン。⑰

■○△□

所在地

静岡県浜松市

主要用途

専用住宅

家族構成

夫婦+子供2人

設計

川本敦史+川本まゆみ/株式会社エムエースタイル建築計画
担当 川本敦史

施工

ASJ豊橋スタジオ[株式会社荒川工務店]
担当 中谷正武

構造・構法・規模

木造在来工法
地上 2階 
軒高 5,800mm 最高の高さ 6,272mm
敷地面積 1054.65m2
建築面積  76.19m2(建蔽率39.30% 許容 60%)
延床面積  121.79m2(容積率47.02% 許容200%)
 1階 67.14m2
 2階 54.65m2

主な外部仕上げ

屋根 FRP防水,アスファルトシングルt=3
外壁 GL鋼板平葺き(縦)t=0.35 ,アスファルトシングルt=3
開口部 木製建具 , アルミサッシ
外構 コンクリート金鏝押え

主な内部仕上げ

ドマ
 床 コンクリート金鏝押えt=90の上撥水剤
 壁 GL鋼板平葺き(縦)t=0.35、アスファルトシングルt=3
 天井 天窓(強化合せガラス10+5)
ショクタク
 床 コンクリート金鏝押えt=120の上撥水剤、ホワイトオールドオークt=15
 壁 GL鋼板平葺き(縦)t=0.35 ,アスファルトシングルt=3
 天井 天窓(強化合せガラス10+5) 、PBt=9.5寒冷紗パテ扱きの上DP
ダイドコロ
 床 ラワン合板t=3の上WW
 壁 PBt=12.5の上ビニルクロス、アイカセラールt=3
 天井 PBt=9.5の上ビニルクロス
ナンド・ロウカ1・トイレ1
 床 ラワン合板t=3の上WW
 壁 PBt=12.5の上ビニルクロス
 天井 PBt=9.5の上ビニルクロス
センメン
 床 コンクリート金鏝押えt=120の上撥水材
 壁 FRP防水サンダー処理の上DP
 天井 ケイカル板5+5寒冷紗パテシゴキの上DP
フロ
 床 コンクリート金鏝押え(勾配)の上撥水材
 壁 FRP防水サンダー処理の上DP
 天井 ケイカル板5+5寒冷紗パテシゴキの上DP
ワシツ
 床 長尺塩ビシートt=2.5 , 縁無畳t=30
 壁 木毛セメント板t=15
 天井 木毛セメント板t=15
イマ
 床 ワイルドバレルオーク・ヘンリーボーンt=18
 壁 GL鋼板平葺き(縦)t=0.35 、ラワン合板t=5.5ラフパテシゴキの上クリア
 天井 ラワン合板t=5.5ラフパテシゴキの上クリア
ヘヤ1・ヘヤ2・ヘヤ3・モノオキ・ロウカ2
 床 ラワン合板t=5.5の上WW
 壁 PBt=12.5の上ビニルクロス
 天井 PBt=9.5の上ビニルクロス
ベンキョウ
 床 ウールカーペットt=9
 壁 レッドシダー15*90下見板素地
 天井 レッドシダー15*90下見板素地
トイレ2
 床 ラワン合板t=5.5の上WW
 壁 レッドシダー15*90下見板素地 , PBt=12.5の上ビニルクロス
 天井 レッドシダー15*90下見板素地

工程

設計期間 2011年 9月~2012年10月
工事期間 2012年10月~2013年 5月

撮影

土居麻紀子(表紙 ②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯)
中村絵(①⑰)

断面図
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2階平面
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1階平面 縮尺1/200
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川本敦史

[静岡県牧之原市]

1977年静岡県生まれ/2004年エムエースタイル建築計画 共同設立/2006年株式会社エムエースタイル建築計画として法人化

川本まゆみ

1975年静岡県生まれ/2004年エムエースタイル建築計画 共同設立/2006年株式会社エムエースタイル建築計画として法人化

○△□
 
 計画地は、見渡す限りみかん畑が広がる場所である。
 長閑な地域柄を考えると、伸びやかな平面計画を思考するが、農地法や接道等の法的規制で建築可能な敷地は、西側に母屋、南側には2階建ての脇屋が建ち迫った、わずかに残る場所のみであった。
 そこで、この場所性と施主が望むさまざまな素材や色を用いた多元的な場を兼ね合わせて、複数のレイヤーを持つような住まいを思考することで対応できないかと考えた。
 まず、東西に対して南北に細長い2つの棟屋で敷地を挟む。そこに横断するかたちで高さを変えながら、アーチ型=○・イエ型=△・ハコ型=□の構造体を差し込むことで、東側の開かれたさまざまな開口は、広がるみかん畑に表情を覗かせ、抜けをつくり出す。
 さらに、さまざまな高さが生む領域は、○△□の構造体と距離感を図り合う領域をつくって光や風が抜ける状態となって、ガルバニウム鋼板やアスファルトシングルなどの屋根や外壁の素材をそのまま連続させることで、外のような領域を持つ場の中で、開放的で豊かな関係性を築く。
 そして、○△□の内部空間は、日々繰り広げられる生活シーンや住み手の心理に沿って、さまざまなテクスチャーで変化をつけることで空間の切り替えとなり、生活の場の切り替えをも意識させて、空間操作が意識的な体験の場をつくり出す。
 このように、○△□といった多元的な場の構成は、住み手の身体のリズムが横断しあうインタラクティブな関係を創出できる豊かな住まいである。

ASJ豊橋スタジオ

[株式会社荒川工務店]

スタジオマネージャー:荒川豊
 N様との出会いは2010年9月、当スタジオの第2回イベントにご来場いただきました。イベントに参加されていた川本先生と意気投合され、ご入会後そのままプランニングへと進むことになりました。
 新居は今まで住んでいた場所を離れ、みかん農家を営むご実家の土地への建築をご希望されました。しかし、当初想定していた土地には法令上の問題があり建築には不適格。その後、計画地が決まるまでにおよそ1年の期間を必要としました。計画全体で2年以上という異例の長期に渡る建築計画でしたが、その間も「お客様」「建築家」「スタジオ」三者相互の信頼関係により無事建物をお引き渡すことができました。当スタジオにお任せ下さったN様、そして川本先生のご尽力に改めて御礼申し上げます。
 プランニングの当初はご夫婦・お子様連れで3人仲良くスタジオへお越しいただいておりましたが、竣工時にはお子様が1人増えて4人家族に。みかん畑の中に立つこの住宅にはお子様たちにとって楽しいスペースが満載。毎日賑やかな声で笑顔の絶えない住まいになっていることと思います。
 今回、N様邸の住まいづくりに携わることができたことは、弊社にとってこの上ない喜びとなりました。これからも建築家との住まいづくりの素晴らしさを地域の皆様に認知していただけるよう、精進してまいります。

この記事は、ASJの会員向け会報誌「A-Style Monthly」に掲載されたものです。

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