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建築家のお話

流行に左右されない古い車の魅力そういう建築を自分もつくりたい

2017年11月30日 :建築家のOff Time


矢作昌生建築設計事務所 矢作昌生さん[50歳]

機能と形が結びついていた昔の車10年後、20年後に本当の価値が分かる

取材/湯浅玲子 撮影/屋比久光史

小学生時代にスーパーカーブームを体験して以来の車好きという矢作さん。大学1年で初めて買った車はフォルクスワーゲンの黄色いビートルだった。以来、ヨーロッパ車を中心に好きな車を時間をかけて手に入れてきた。現在、個人的に所有しているのは4台。入手した順に、マツダのユーノス・ロードスター(1995年製)、トヨタのセリカGT-FOUR(89年製)、サーブ93(99年製)、ポルシェ911カレラ(87年製)。
 矢作さんは一度も新車に乗ったことがない。手に入れてきた車はすべて中古車だ。ユーノス・ロードスターは購入した時点ですでに2代目、3代目が発売されていたが、あえて初代を中古で購入した。「人馬一体というか、とにかくドライビングが楽しい国産車らしからぬ車。中でも初代がいちばんコンセプトに忠実な気がします」。

あえてウイングのないタイプを選んだお気に入りのポルシェ。流線型の流れるようなラインが美しい。

取材時にはマフラーの取り替えのため修理工場に行っていたセリカは、今や日本国内ではパーツが手に入らず、アメリカから部品を取り寄せて修理している。「欧米は車の文化がまったく違います。とりわけヨーロッパは、古い車に手を入れながら大切に乗り続けていく。長く乗れば乗るほど税金が安くなるし、古い車でも必要なパーツがすぐに手に入ります」。
ファミリーカーとしても活躍するサーブは、北欧らしい内装と独特のエンジン音で、飛行機のコクピットにいるような気分になる。憧れ続けたポルシェは空冷エンジンにこだわり、テールの美しいラインを壊さないためにウイングのないタイプを選んだ。4台の車は製造から20~30年経っているが、いずれも現役で走っている。

シンプルな構造のポルシェのエンジンルーム。駆動輪の上にエンジンが乗るので安定性が高い。
サーブはもともと飛行機のメーカー。ウッドパネルを採用した落ち着いた内装も魅力のひとつ。

矢作さんに古い車の魅力を語ってもらうと「建築と同じです」という答えが返ってきた。「流行に影響されず、機能と形がちゃんと結びついている。自分もそういう建築をつくりたいと考えています」。10年後、20年後に本当の価値が分かると言う。
また、昔の車は構造がシンプルでメンテナンスに手がかからない。電子部品だらけで個人ではメンテナンスできなくなった現代の車と対照的だ。「メンテナンスできないものは本当の意味でエコじゃない」と矢作さん。

シンプルな外装の自宅前に勢揃いしたポルシェ(中央)、サーブ(右)、ロードスター(左奥)。
実車を手に入れる前に購入したミニカーたち。奥の分厚い本はポルシェの整備マニュアル。

古い車に通じる建築の考え方を反映させたのが、今年5月に完成した自宅兼事務所。例えば外壁は、無塗装でも数十年腐らないアフゼリアという木材を使い、痛んだところだけ取り替えられるようスノコ貼りにしている。環境に優しい素材や工法を取り入れ、単純でメンテナンスが簡単。さらに時を経て味わいが出る工夫もあちこちにある。
「古いものに手を加えていくことで、街並になり、文化になり、歴史になります。これからも古い車を大切にしながら、できる限り乗り続けたいと思っています」

事務所上階にある自宅のリビング。吹き抜けの天井と、メンテナンスが楽な自然素材を多用した空間が心地いい。

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