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建築家のお話

手料理を作りつつ考えることが設計のヒントになる。

2016年5月26日 :建築家のOff Time


ヒノ デザイン アソシエイツ 日野桂子さん[43歳]

コンロのない事務所でもスタッフと手料理を食べる。
それが信頼関係を生み、家族のような関係をつくる。

取材/塚本尚紀 撮影/江本秀幸

サバの燻製のサラダ、ポロネギ(リーキ)とアンチョビのグラタン、牡蠣ピラフ、それにサツマイモのコロッケ。これがこの日のメニュー。

スタッフを招いたこの日のメニュー。左上から時計回りにサバの燻製のサラダ、サツマイモのコロッケ、ポロネギとアンチョビのグラタン、牡蠣ピラフ。彩りも鮮やかだ。

「焼き魚をサラダに入れると意外にもおいしいんですよ。ある時、料理屋さんでいただいて、よしっ、作ってみようって。パンをクルトンみたいに揚げて乗せてもいいですね」
 
料理の話になると止まらない、日野桂子さん。
2人のスタッフとともに「ヒノ デザイン アソシエイツ」を切り盛りする建築家だ。
 
手作り料理で友人を招くホームパーティーがオフタイムのお気に入りの時間、と話す日野さん。
けれどもぱったりと、そんなことをやらなくなった時期がある。それは8年前、事務所の代表であり、ご主人の日野弘史さんをガンで亡くしてからだ。
 
「2人で事務所を運営していた頃は、毎晩、何を作ろうかと楽しみで、遅くなってもきちんと料理していました。でも一緒に食べる人がいなくなってからは……」
 
事務所を引き継いでいく大変さに追われていた、と日野さん。そしてもちろん、大切な人を失った痛手は大きく、心にゆとりがもてるようになるには長い時間が必要だった。
 
「でも、気持ちに余裕がでてくると、設計の仕事以外に自分が打ち込めるものはないかと、考えるようになって。ああそうだ、私はご飯をつくることが好きだったんじゃないって」
 
最新型のオーブンを買い、来る日も来る日もケーキを焼き、おいしくできる分量の”研究”に没頭した。
その頃から、事務所でもスタッフと一緒に食事をするようになった。事務所にはコンロもないが、電気グリル鍋をフル活用し、ナポリタンや鍋なども作る。

[3]右の4品を仕上げながら、突然のひらめきで、レンコン、鶏肉、シソを手早く合わせ、作り置きの醤油だれを使って照り焼き風の一品もこしらえてしまった。
[4]使用する食器類は色、デザインともにシンプルなものが多い。岐阜の陶芸家・安藤雅信氏、北海道で活躍する北川智浩氏、NYのイザベルラムなど現代作家の作品がお気に入り。
[5]日野さんの料理には、大小3種類を揃えたSTAUB(ストウブ)の鍋が大活躍。この日の牡蠣ピラフにも使用。写真のオーバル鍋ではサムゲタンなどをよく作るという。

「南部煎餅を入れる”せんべい汁”はお気に入り。おいしいんですよ。食事の時ま私と一緒にいるのは嫌じゃないかなと思ったんですが、スタッフの評判も上々で。腕が鳴ります(笑)」
 
この日はそのスタッフの岩田敏孝さん、遠藤光さんを日野さんがご自宅に招待。
2年前に引っ越したこのマンションを訪ねるのは二人とも初めてといい、少し落ち着かないようすだが、日野さんと交わす何気ない会話に強い信頼感のようなものが伺えるのは、いつも同じ食卓を囲んでいるからかもしれない。
 
このキッチンはマンションでは標準的なタイプ。使い勝手は悪く無いんですが、調味料入れがもっとあったほうが助かるとか、生ごみ入れはこの辺だと便利だなとか。いろいろ考えつつ料理をしていることが、住宅の設計を行う時にもヒントになっていますね」
 
友人とのパーティーも復活し、正月には建築家仲間を招くこともあるという。また、たまに休みのとれる週末は大好きな日本酒やワインに合う惣菜を作り、ゆっくりと酔いしれるのが、何よりの寛ぎの時、と日野さんは目を細める。
 
さて、料理がテーブルに並んだ。自ら取り分ける日野さん。昼食を抜いてきたという2人の、もう待ちきれない、というようすに、家族の姿を見ているような気がした。

一つの食卓を囲み、スタッフといろいろな話をする。家族のような時間を共有することが、生活の場を作る設計の仕事にも大いに生かされているのだろう。

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